亀井については馬力があって、づけづけとものをいい私欲より公を重視するとても好きなタイプの政治家だが、債務者の支払い猶予を銀行に押し付けるのは、かなり経済を沈滞へと引きずり込むようになるのでは危惧する。亀井静香金融担当相は27日のテレビ朝日番組で、中小企業向け融資の返済猶予制度について「(金利の支払いも)できることなら免除した方がいい。実効性のある方法を考える」と述べ、借入金の元本に加え、金利の支払い猶予も検討していることを明らかにした。
銀行が返済猶予を嫌気して中小企業への貸し渋りが起きるとの懸念に対しては「空理空論だ」と批判。「弱った銀行には税金で資本注入している。借り手の中小零細企業もちょっと待ってもらえれば立ち直れる」として、制度の必要性を強調した。
閣内などから慎重論が相次いでいることに対しては「私は揺らがない。鳩山総理が私を更迭すればいい。できっこない。選挙の前から合意している」と述べ、猶予制度の導入に強い意欲を示した。 (共同)
中小企業の現状は、亀井の危惧するとおりの経済状態である。あえいでいる中堅以下の企業がひしめいているのが現状だろうと思う。中小企業の債務はが増えたのは、もともと長期的に物価が下がり続けるデフレ経済にあった日本では、リーマンショック以降の不況が、、総需要の不足として襲来した不況である。サブプライム関連証券の価格下落による金融機関の損傷は、欧米に比較すればそれほどひどくはなかった。それは循環的な不況であって、二十一世紀型の不況とか、規制緩和がなされていない、あるいは、官製の不況という不況の種類ではない。そうでなければ、スーパーなどの小売業の苦境が、説明できないことになる。
中小の企業が苦しいのは、消費者の買い控え、大企業の中小企業に対する注文が減ったからである。つまり経済のパイが縮小する中、実質的金利が上昇してしまう卸売り物価、消費者物価の下落が不況によって引き起こされている需要の不足にある。不況種類で言えば、金融危機によって引き起こされた不況ではなく、実体経済が引き起こした不況の種類である。
とすれば、亀井の債務企業に対する債務支払猶予は、実際の需要が不足、額の低下が背景にあるのだから、その実効性の乏しいものになってしまう。亀井の案をより実行のあるものにするには、中央銀行の大きな協力が必要である。中小企業のローン債務を証券として中央銀行が大胆に引き受けること、さらに公平性を帰するためにも、長期公債の大量な引き受けが必要である。
ところが、この中央銀行の金融によるファイナンス政策を採用するという意思は、内閣の連中の発言には報道されている限りでは、まったく見られない。
安倍、福田、麻生政権と続いた自民党内閣でも、不況下での金融政策へシフトする意思がまったく要職(安倍は中川秀直の成長戦略として金融政策に理解は示していたが、中川を閣内に置くことはしなかった、その点で組閣の間違いをしたのである)にある連中に省みられることなく終焉したが、それと同じ課題を鳩山内閣は抱えていることに彼らはまったく気づいていないのだろう。
金融政策の効果の発現は、かなり時間がかかることは、マクロの経済学では常識である、民主党が政権を磐石にしたいのならば、早急に果断な金融緩和の策が必要である。政治家連中≒マスコミのマクロ経済論≒庶民の考えるマクロ経済論が認識しているほど金融政策の不手際の影響は小さくはない。経済を停滞に落ち込ませる非常に大きな要因である。
[ベルリン 4日 ロイター]
早過ぎる刺激措置の撤回、回復頓挫の恐れ=IMF専務理
国際通貨基金(IMF)のストラスカーン専務理事は4日、世界経済は深い落ち込みから浮上しつつあるものの、今後の回復の歩みは遅く、早過ぎる景気刺激措置の巻き戻しは回復を頓挫させる恐れがあるとの認識を示した。
また、失業の増加に対する懸念を示した。将来的な成長を減速させる可能性があるとしたほか、失業増によってもたらされる社会的な影響が「一段と気掛かり」との見方を示した。
専務理事は講演用原稿で「早過ぎる景気刺激策の巻き戻しは、成長や失業に著しい影響を与える可能性があり、回復を頓挫させる危険をはらんでいる」とし、「したがって、成長が根付き失業が減少し始めることが明確に示されるまでは出口戦略を実施すべきではない」と述べた。
政策担当者が出口戦略の策定を行うのに現在は適切な時期とする一方で、実施時期の決定には「慎重過ぎるぐらい慎重になる」よう求めた。
また報酬慣行規制などの銀行システムの問題に対する取り組みについて、金融市場の改善が気の緩みを招いているとの懸念を示した。
「金融業界における報酬制度改革の推進に向け断固行動しなければならない。金融セクターが危機から回復するにつれて、『これまでどおり』という考え方が(改革の)大きな前進を阻害するかもしれないと懸念している」とし、この問題は週末の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で協議されるだろうと述べた。
準備通貨としてのドルの役割については、危機の最中にドルの価値が上昇したことで無類の安全資産としての地位が示されたと述べたほか、ドルの代替となる通貨については、今後数カ月ではなく数十年間かけて決定される問題との見方を示した。
ロイターの記事からだけどが、巷のエコノミストが抜かしているのとは違って、更なる緩和策ではない緩和の解除を示す「出口戦略」の拙速を指摘する適切な発言である。
物価上昇率を見るのは当然なのだが、失業率や求人倍率などの雇用情勢を眺めない、また実質と名目の成長率を見ない金融政策など有害でさえある。
週末の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の日銀の対応と民主党の金融政策に対する姿勢には注目すべきである。
若田部昌澄(早稲田大学教授)の民主党の政策の見方
若田部はマクロ経済学者としてとても参考になる見解を持って、かつそれを時期にかなった啓発している学者である。経済学素人の大衆に啓発してくれるその姿勢と経済の見方が基本を抑えているから難しいマクロ経済も良く分かる。
東京都議選での自由民主党の歴史的大敗を受けて、麻生首相は8月30日の衆議院選挙を決めた。すぐ後の民主党の報道で伝えられる政権公約を観ているのだが、参考にはなるだろう。マニフェストでは不十分で読める。
政策ベースの経済的効果やマスメディアやその報道にあまりにも踊らされる「財源」不足論は、有効な金融緩和手順をとらず騒いでいのみで耳をまともに傾ける価値は無い。このような財源不足論などとはべつに、適当にシナリオ別に眺めてみるのも面白い。
民主党が今回の衆議院選で過半数以上を獲得、安定政権となったとする。保育など、教育産業の斜陽化に歯止めがかかる。このことは間違いないだろう。自民党のエコ減税は、家電と自動車産業の底割化を防いだのは、間違いない。それと同じく、民主党が圧倒的多数を占めることによって、つまり安定政権として運営する条件がそろったとすると、有権者の多くは長期の視点を政策内容にあわせて行動するよう傾向を持つ。
民主党の案は、自民党の返済なしの奨学金給付とちがって、一律の子供手当て、未就児手当て(これは自民党、民主党に限らず、今頃これが政策の前面に出るとは、遅すぎる観がある)小学生、中学生を持つ家庭に給付される。いうまでも無く子供を持つ家庭にとってはとりあえずの可処分所得の増加が見込めることとなり、ありがたい政策である。ここで、積み立て型の学資保険や学習支援事業などにとっては、追い風となる政策となるなるだろう。但し、長期のかつ安定的政権であることが条件である。なぜなら、長期的な移動は、教育関連の総資金の数パーセントが動いただけでも斜陽化を防ぐ効果を持つだろうからである。
しかし、民主党が獲得議員数を多くをとらず、過半数に達しないようであれば、このシナリオはかなり難しいものになるかも知れない。自民党の政策のいいところ、民主の政策のいいところ取りが始まればいいのだろうが、そのようには「政治」は機能しないだろう思う。
個人的には、返済不要の奨学金制度の額と給付対象を段階に分けて、高校段階からするのが望ましい。というのも、質的労働として高い価値を持つ、あるいは、しっかりと働いたものには多くの報酬が得られるという社会は、活力のあるそれとなるだろうから、奨学金制度を拡充するほうが望ましいのだと思う。但し、不健全な言い方であろうが、それに乗り遅れた人々には再度の挑戦に挑める制度が必要であるこというまでも無いことである。積極、果断に挑戦するものたちに大きな金銭的な評価だけではなく、社会的評価を与えるべきである。
2009/7/28 米国株式市場では、大恐慌以降最も急激な上げ相場が見られた後であるにもかかわらず、バリュエーション(株価評価)で見た割安感が強まっている。2年前に信用市場が機能不全に陥って以降初めて、アナリストが米企業の利益見通しの上方修正に転じたためだ。
2009/7/28 今週の米経済指標は、貿易や政府の景気対策が住宅価格低下のほか在庫投資や個人消費、設備投資の減少の悪影響を和らげ、過去50年間で最悪のリセッション(景気後退)が4~6月期に緩和した様子を示す可能性が高い。 二つの記事は、ブルームバーグからの引用。米国の経済は、堅調に推移している模様。それを受けて、日経平均も1万を上回る勢いだが、但し、小売業、サービス業などの「内需」関連株はそれほどでもないといわれている。デフレの圧力が浸透しつつあるのだろう。また株価には現れにくい中小の企業では、倒産が相次いでいる。これでは、就業者の多くが勤めている「内需」関連産業と中小企業の停滞によって、雇用環境は改善するにはかなり時間が常識的に考えても必要である。さらに産業間格差、それに伴い所得格差が広がる傾向を維持していくであろう。 米国株「26%の上昇余地」 業績予想 「改善」が「悪化」逆転
JPモルガン・チェースの集計によると、S&P500種株価指数を構成する主要500社の業績予想について、大手金融機関が6月に行った修正は、引き上げが896件、引き下げが886件だった。引き上げが引き下げを上回るのは、1兆5000億ドル(約142兆円)超のサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)関連の金融損失が第二次大戦後初の世界同時リセッション(景気後退)を引き起こす前の2007年4月以来だ。
◆相次ぐ好決算
14日発表のゴールドマン・サックス・グループの4~6月期決算が過去最高益となるなど、予想外の好決算が続いたのを受け、アナリストは10年の企業業績予想の上方修正に動いており、S&P500種企業の来年の1株利益見通しは74.55ドルと、5月時点の予想(72.54ドル)から引き上げられた。
S&P500種の株価収益率(PER)は現在、13.13倍(10年予想利益ベース、以下同じ)。これは、PERが過去50年間の平均(16.54倍)に戻るためには、S&P500種がさらに26%上昇する必要があることを意味している。
インベスコ・エイム(運用資産3480億ドル)のシニア市場ストラテジスト、フリッツ・マイヤー氏は「認識が著しく変化している。すべては経済指標の改善に起因する」と指摘。「リセッション(景気後退)期に特有の心理が働き、期待が必要以上に押し下げられてしまった。こうした状態は、今後の企業利益の上方修正や株式相場の上昇につながる」との見通しを示した。
昨年9月の米リーマン・ブラザーズ・ホールディングスの破綻(はたん)を受け、ドル建て翌日物ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)は一時、過去最高の6.88%に上昇。米経済は過去50年間で最悪のリセッションに陥り、昨年のS&P500種の年間騰落率はマイナス38%と、1937年以来最大の下げを記録した。こうしたことを背景にアナリストらは記録的なペースで企業利益見通しを下方修正した。
JPモルガンのデータによると、昨年10月にアナリストらが実施した4716件の利益見通し修正は、5件中4件が引き下げだった。
◆悲観見通しが一変
昨年10月から今年6月にかけての企業利益見通しの変化は、JPモルガンが00年に集計を開始して以降最も大きかった。2番目に大きい変化は、株価が2倍になった5年間の強気相場の起点である02年10月に見られた。
S&P500種は前週末比4.1%高の979.26で先週の取引を終了。12年ぶりの安値を記録した3月9日以降の上昇率は45%となりPERは13.13倍に押し上げられた。ブルームバーグが集計したデータによると、PERが1959年以降の平均水準に戻るには、S&P500種は1233.6まで上昇する必要がある。(Lynn Thomasso、Michael Tsang)リセッション急激な緩和 4~6月期 GDP・新築住宅販売に明るさ
ブルームバーグがまとめたエコノミスト調査によると、商務省が31日発表する4~6月期のGDP(国内総生産)速報値は前期比年率1.5%減と、1~3月期の同5.5%減に比べ小幅な減少にとどまるとみられている。
商務省が29日発表する6月の耐久財新規受注は前月比0.6%減と、3カ月ぶりの減少になる見通し。
商務省が27日発表する6月の新築住宅販売件数は前月比2.9%増の年率35万2000件の見込み。今年1月には過去最低の32万9000件まで落ち込んでいた。
製造業や住宅建設業が安定するなか、世界的な需要回復への取り組みも輸出の増加につながっており、在庫の縮小を受けて7~9月期の米GDPはプラス成長に転じるとみられている。一方、失業率の上昇が続くとみられているほか、住宅価格はさらに低下する公算が大きいことから、米国のGDPの7割を占める個人消費は、比較的緩やかな回復にとどまる可能性がある。
ナロフ・エコノミック・アドバイザーズのチーフエコノミスト、ジョエル・ナロフ氏は「リセッションの度合いは急激に和らいでおり、景気が底入れし始めている」と指摘。「7~9月期の成長率は若干のプラスになるとみている」との見通しを示した。同氏はブルームバーグ・マーケッツ誌がまとめた2008年予測家ランキングで首位だった。
4~6月期のGDPが減少なら、4四半期連続のマイナスで、四半期ごとの集計が始まった1947年以降で最長の記録となる。
先週の米国市場は、景気底入れの兆しを受け、株式相場が上昇、債券相場は下落した。ダウ工業株平均は1月以来半年ぶりに9000ドル台を回復。前週末に比べ4%上昇の9093.24ドルで取引を終えた。10年物国債相場は週間ベースで2週連続の下落となり、利回りは3.66%に上昇した。
ブルームバーグが7月第1週に実施したエコノミスト調査によると、今年7~12月期の米GDPは平均1.5%のプラス成長となる見込み。
6月に25年ぶりの高水準となる9.5%に達した失業率は、来年1~3月までに10%を超えるとみられている。(Bob Willis)
FRB議長再任可否の検討開始 オバマ政権 【ニューヨーク=山本正実】9日付の米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、オバマ政権が、来年1月末で4年の任期を満了する米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長の再任を認めるかどうかの検討に入ったと報じた。 バーナンキ議長の再任には上院の承認が必要だが、民主党のドッド議員など米上院の有力議員が、バーナンキ議長の金融危機への対応を批判しており、再任は不透明との見方が出ていた。議長が交代する場合、後任の最有力候補としてサマーズ国家経済会議議長の名前が挙がっている。 (2009年7月10日 読売新聞)
どこの国でも中央銀行という金利の政策(特に不況期での通貨膨張策)と「政治的」「社会的」倫理がバッティングすることがままある。上院議員は金融危機を招いたのは、金融関係者の自業自得で、それに対して自動車ローンや住宅ローンの買取を実施たり、はたまた巨額の報酬を得ている金融会社の擁護をしてみたりという態度や政策について社会的道徳として憤りを持つ。これももっともなことである。
これに対して、中央銀行の為政者側は、金融システムの安定のためには、不良債権の買取によって、金融機関からの不良資産のバランスシートからのオフバランスをし、景気回復、主として株や住宅債務を繰り込んだローン担保証券の価格上昇まで待つべきだとす。金融機関への非難は、後回しにして、長期国債の買取などの大型の通貨供給策などによって、金融安定そのものだけでなく、マクロの経済政策を非常時の策として倫理を無視してまで先行しようとする。
それぞれが杞憂し、それぞれが「正義」視点から語られる。そしてそれが、混乱し、あるべき道からずれていく・・・・。それが日ごろの為政者達の姿であり、またそれを向かいいれる生活者の姿なのだろうかと思う。
通貨膨張が為政者の中で、排除されたとするなら、これは大問題だわ。
身近な生活でもこのような矛盾をひどく痛感する。社会生活上自分の主張が通ることは、様々な制約で困難であり、またほとんどあり得ない、と考えたほうがいい。これは誰でもが思うところであり、また賢明な人生訓として作用するものでもある。つまり人生訓からの政策を取るのは緊縮への道であり、マクロの経済が収縮するする政策を支持しやすい思考方法でもある。あるいは、これが合理的な判断だともいえるのであろう。
しかし、このような態度を金融政策の判断、あるいは、デフレとインフレが長期として金融政策の通貨供給量に依存するという単純な判断を「世の中、そんなに上手く行くわけが無い」という人生訓から眺めるのは愚かである。
好況期であれば、このような「人生訓」を下敷きにした考え方をもとに、倹約を薦めることは、大いなる経済的発展が期待できる。何故なら倹約して貯蓄した預金は、金融を媒介に企業や個人の資金需要に対して貸し付けられ、これらの債務者が様々なアイデアと実行力によって果断な挑戦を繰り返すからだ。そして、その果断な挑戦が、思惑通り達成されることも不況期に比較して大きい。つまりは、大多数の「倹約」 が少数の大胆な活動を支援することになる。そのような経済状況が、身近にあれば、金利も上昇し、さらに倹約家たちの貯蓄に利息が付き、倹約が金融機関を通して、好循環を描くことになる。
同じ倹約でも不況期と好況期のそれはまったく違った様相を呈する。デフレ期に突入する90年代半ばまでは、多くの人の倹約は、社会全体の貯蓄として金融機関預け入れられ、その多くが貸し付けられ、またそれが収益として金融機関も潤い、借りた方が先行投資をして失敗もありながらも、潤っていくという好循環が描き出された経済状態だった。倹約は、個人的美徳であると同時に社会的にも推奨される生活姿勢であったのである。
しかし、今回のような経済的な不況が起きたときに、経済学的に正当な方法として通貨の収縮策をとったとしたら、「大恐慌」以上の経済的混乱と悲劇を人々に齎してしまっただろう。
バーナンキは、大恐慌の研究家であり、金融政策の重要性を知悉している一人であることは、いまさら言い募る必要もないだろう。風見鶏で「反日」野郎で、クリントン大統領期の日本に対しての年次改革の首謀者、サマーズが、適任だとは思えないがねぇ。不況期に規制改革を勧めることの旗振り役だった連中の一派だ。現財務長官のガイトナーもルービン、サマーズ系の一派らしいからなぁ。
で、ここで中国が高い外貨準備を解消するため売るということをしたとしよう。中国保有の米国債を売ることはドル売り、元買い行動と同じことで、元のレートを上げることである。元のレートが上がり、ドルは下がる。中国の米国への輸出は減速する。そして、米国に対して中国は、資本収支の債権を民間と政府側の債権を持っている、貿易額とほぼ同額のそれを持っているのである。
そこで、そのドル建て債権は、ドルの下落によって大きな評価損をこうむるだろう。ちょうど外貨建て預金の減価と同じことが起きるのである。自分の債権の価値を自らが下げて、さらに大きな損失をこうむるなどという愚かな行いである。こんなことを知恵のある政府がするだろだろうか?!実を言えば、これと同じことを90年代に石原慎太郎が日本の外貨準備を取り崩し、ドルを売れと唱えていた。ルービンだったか米国の財務省が長官だったころだったと思う。この策は狂気である。ことの是非は、為替のレートに通じていない為政者は、あまりに愚かである、ということである。
さて話題を換えて、基軸通貨としてのドルの下落は何を米国に持ち込むのだろうか。輸出入は別にして考えると、米国債という債務の価値は外貨の上下の影響なく平行である。
さらに大量に発行され他国も使用するる通貨によって輸入できる通貨発行特権利益を得られる。
他国が外貨準備としてするため、米国は低金利の短期資金を得て、新興国で高金利資産で長期運用を行うことで、所得を得ることができる構造もできる。
超長期で、言えばドルによる流動性供給が増えて、ドルの価値が下落するとドル建て資産運用によってキャピタルゲインが得られることがある。純負債が、ドル下落によって減ることが考えられる。
このような観点から中国の元の基軸通貨戦略は実行されつつあるのであろう。しかし、中国はそのような債務過剰の成熟国家ではなく、経済成長を国内的政治的にもしていかなくてはならない「社会」を抱え込んでいる。
中国の経済状態は、国内的的にはかなり酷いと思っている。成長率で、9パーセントあったものが、6パーセントほど落ちたということは、これは不況である。が、全般で見れば、3パーセント成長率の減速は、不況と認識される。長い間、高い成長率を達成していた新興国での成長率の下落と成熟国家の低成長率のそれとは不況感が違う。中国国内では、階層や業種によっても不況感が違うのだろう。都市に流入ししていた農民達が「不況」によって失業している。また、共産党の土地を媒介にした諸政策に対しても農民の不満が鬱積しており、彼らによる暴動が地方で多発している。
「農民工が2億1千万人に達した。内訳は都市部が1億3千万人、農村部が8千万人である。農民工とは、戸籍は農村だが、農業に従事しない人達のことを指す。都市部において、第二次産業は57.6%、第三次産業では52%を占め、3K職種など底辺を支える農民工がいなければ、都市経済は動かなくなってしまう。だが、都市勤労者と農民工の収入は大きくかけ離れ、大きな格差を生じている。」
「労働の需要が供給を上回れば、賃金は上昇する。ここ数年、二桁の上昇が続いている。単に労働需給関係だけでなく、政治的、社会的認識にも大きな変化が生じた。都市と農村という二重構造社会のゆえに、日米欧などの外資系企業を除き、多くの農民工は社会保障を享受できず、賃金の未払いも多発していた。労働法令の保護も充分ではなく、都市住民からは蔑視の対象となっていた。」日中科学技術文化センターブログ
こうした社会情勢を抱え、かつ、共産党一党独裁の「政治」形態は、長持ちするのだろうか?経済成長は、階層や職種、農民と勤労者、富裕者と貧困を煮込んだまま行われる。これを強権的に中央集権的に差配している状態が続く、そして、賄賂と腐敗が共産党の幹部の血縁関係にあるものに会社を作らせその会社に税を投入するという縁故主義がはびこる。公務を忘れた賄賂と腐敗は、実権に結びつき金と財産と社会的尊敬とは切り離された地位が幅を効かせる。このような社会に人民は信任を与えるだろうか?
果たしてこれからどうなんだろうねぇ、これからの米国のドルと総需要は、どうなるのだろう?米国政府の信認は、どうなのよ?なお、テイラーのルールは知る限りではデータで斬る世界不況 エコノミストが挑む30問「」の「テイラールールによるFRB犯人説」がルールの適用をしていて詳しい。
米国債、次のシステミックリスク震源地にも
森 佳子記者
[東京 5日 ロイター] インフレ懸念と過剰発行からくる需給バランスの崩れで、米国債の利回りが上昇している。日米金利差が拡大したことで、日本からの外債投資が復活する兆しがあるが、市場では、次のシステミックリスクの引き金を引くのは政府部門(米国債)との見方が浮上している。
米オバマ政権は、米連邦準備理事会(FRB)をシステミック監督当局とし、民間発のシステミックリスクを制御するフレームワークの導入を検討中だ。
しかし、米政府債務が加速度的に膨張している現状では、「(民間ではなく)米政府こそ、システミックリスクを引き起こす最も深刻な震源であり、現在の金融危機より大きなダメージを経済に与えるだろう」と元米財務次官(現スタンフォード大学教授)のジョン・テイラー氏は警告した。
テイラー氏は5月26日付のファイナンシャル・タイムズ紙に寄せたコメンタリーで、米政府は民間部門への無責任な介入を控え、政府債務の膨張(米国債増発)を抑制するべきとの見解を明らかにした。
ガイトナー米財務長官は今週、中国を訪問した際、米国の巨額な財政赤字は一時的で、景気後退が収束すれば減少すると確約、中国が保有する巨額の米国債は「非常に安全」と念を押した。
他方、日本では、外貨準備が5月末で1兆0240億1200万ドルに達し、過去最高を記録した昨年12月以来の高水準となったほか、民間部門の外債投資は5月最終週に1兆円規模に拡大するなど、米国債とドルの減価リスクを強く懸念する中国とは対照的な行動パターンをとっている。
長期金利の指標となる米国債10年物の利回りは、4月下旬の2.9%台から急上昇し、現在3.72%付近。5月末には一時3.75%に達し、6週間で125ベーシスポイント上昇した。
欧州中銀、政策金利を据え置き 年1.0%に
【フランクフルト=赤川省吾】欧州中央銀行(ECB)は4日、ユーロ圏16カ国に適用する政策金利を据え置くことを決めた。最重要の市場調節金利は年 1.0%を維持する。トリシェ総裁は5月の記者会見で政策金利を1.0%未満に引き下げる公算があると言及したが、ECB内部で急激な金融緩和に対する警戒感が強まったと見られる。ドイツのメルケル首相もECBが量的緩和に踏み込むべきではないとけん制していた。(04日 20:54)日経新聞
ECBの金利据え置きは景気の悪化の対処のための当然の措置。問題は記事の後半のドイツの首相の発言。
ドイツのメルケルは、日本国内の新聞にとっては、「評価」が高いのかもしれない。それも多分にドイツの「政治」的な社会に対する対処の仕方に見られるようなEU信仰からくるものなのかもしれない。それほど、ドイツやフランスの経済的政策が優れたものには筆者には見えないが、政治の論理と経済の論理は、あまり上手くつながらないのが古今東西の常である方ないことなのかもしれない。
そこで、あえて言う。彼女は金融政策が。経済政策としては、財政の出動、大型予算の執行に比してコストも比較的かからない。金融政策の政策目標をしっかりすれば「景気」対策として重要であるということに関してあまりにも無知である。それは、フランスの大統領であるサルコジもしかりである。しっかり勉強しとけよ、ご両人。