2009/7/28 米国株式市場では、大恐慌以降最も急激な上げ相場が見られた後であるにもかかわらず、バリュエーション(株価評価)で見た割安感が強まっている。2年前に信用市場が機能不全に陥って以降初めて、アナリストが米企業の利益見通しの上方修正に転じたためだ。
2009/7/28 今週の米経済指標は、貿易や政府の景気対策が住宅価格低下のほか在庫投資や個人消費、設備投資の減少の悪影響を和らげ、過去50年間で最悪のリセッション(景気後退)が4~6月期に緩和した様子を示す可能性が高い。 二つの記事は、ブルームバーグからの引用。米国の経済は、堅調に推移している模様。それを受けて、日経平均も1万を上回る勢いだが、但し、小売業、サービス業などの「内需」関連株はそれほどでもないといわれている。デフレの圧力が浸透しつつあるのだろう。また株価には現れにくい中小の企業では、倒産が相次いでいる。これでは、就業者の多くが勤めている「内需」関連産業と中小企業の停滞によって、雇用環境は改善するにはかなり時間が常識的に考えても必要である。さらに産業間格差、それに伴い所得格差が広がる傾向を維持していくであろう。 米国株「26%の上昇余地」 業績予想 「改善」が「悪化」逆転
JPモルガン・チェースの集計によると、S&P500種株価指数を構成する主要500社の業績予想について、大手金融機関が6月に行った修正は、引き上げが896件、引き下げが886件だった。引き上げが引き下げを上回るのは、1兆5000億ドル(約142兆円)超のサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)関連の金融損失が第二次大戦後初の世界同時リセッション(景気後退)を引き起こす前の2007年4月以来だ。
◆相次ぐ好決算
14日発表のゴールドマン・サックス・グループの4~6月期決算が過去最高益となるなど、予想外の好決算が続いたのを受け、アナリストは10年の企業業績予想の上方修正に動いており、S&P500種企業の来年の1株利益見通しは74.55ドルと、5月時点の予想(72.54ドル)から引き上げられた。
S&P500種の株価収益率(PER)は現在、13.13倍(10年予想利益ベース、以下同じ)。これは、PERが過去50年間の平均(16.54倍)に戻るためには、S&P500種がさらに26%上昇する必要があることを意味している。
インベスコ・エイム(運用資産3480億ドル)のシニア市場ストラテジスト、フリッツ・マイヤー氏は「認識が著しく変化している。すべては経済指標の改善に起因する」と指摘。「リセッション(景気後退)期に特有の心理が働き、期待が必要以上に押し下げられてしまった。こうした状態は、今後の企業利益の上方修正や株式相場の上昇につながる」との見通しを示した。
昨年9月の米リーマン・ブラザーズ・ホールディングスの破綻(はたん)を受け、ドル建て翌日物ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)は一時、過去最高の6.88%に上昇。米経済は過去50年間で最悪のリセッションに陥り、昨年のS&P500種の年間騰落率はマイナス38%と、1937年以来最大の下げを記録した。こうしたことを背景にアナリストらは記録的なペースで企業利益見通しを下方修正した。
JPモルガンのデータによると、昨年10月にアナリストらが実施した4716件の利益見通し修正は、5件中4件が引き下げだった。
◆悲観見通しが一変
昨年10月から今年6月にかけての企業利益見通しの変化は、JPモルガンが00年に集計を開始して以降最も大きかった。2番目に大きい変化は、株価が2倍になった5年間の強気相場の起点である02年10月に見られた。
S&P500種は前週末比4.1%高の979.26で先週の取引を終了。12年ぶりの安値を記録した3月9日以降の上昇率は45%となりPERは13.13倍に押し上げられた。ブルームバーグが集計したデータによると、PERが1959年以降の平均水準に戻るには、S&P500種は1233.6まで上昇する必要がある。(Lynn Thomasso、Michael Tsang)リセッション急激な緩和 4~6月期 GDP・新築住宅販売に明るさ
ブルームバーグがまとめたエコノミスト調査によると、商務省が31日発表する4~6月期のGDP(国内総生産)速報値は前期比年率1.5%減と、1~3月期の同5.5%減に比べ小幅な減少にとどまるとみられている。
商務省が29日発表する6月の耐久財新規受注は前月比0.6%減と、3カ月ぶりの減少になる見通し。
商務省が27日発表する6月の新築住宅販売件数は前月比2.9%増の年率35万2000件の見込み。今年1月には過去最低の32万9000件まで落ち込んでいた。
製造業や住宅建設業が安定するなか、世界的な需要回復への取り組みも輸出の増加につながっており、在庫の縮小を受けて7~9月期の米GDPはプラス成長に転じるとみられている。一方、失業率の上昇が続くとみられているほか、住宅価格はさらに低下する公算が大きいことから、米国のGDPの7割を占める個人消費は、比較的緩やかな回復にとどまる可能性がある。
ナロフ・エコノミック・アドバイザーズのチーフエコノミスト、ジョエル・ナロフ氏は「リセッションの度合いは急激に和らいでおり、景気が底入れし始めている」と指摘。「7~9月期の成長率は若干のプラスになるとみている」との見通しを示した。同氏はブルームバーグ・マーケッツ誌がまとめた2008年予測家ランキングで首位だった。
4~6月期のGDPが減少なら、4四半期連続のマイナスで、四半期ごとの集計が始まった1947年以降で最長の記録となる。
先週の米国市場は、景気底入れの兆しを受け、株式相場が上昇、債券相場は下落した。ダウ工業株平均は1月以来半年ぶりに9000ドル台を回復。前週末に比べ4%上昇の9093.24ドルで取引を終えた。10年物国債相場は週間ベースで2週連続の下落となり、利回りは3.66%に上昇した。
ブルームバーグが7月第1週に実施したエコノミスト調査によると、今年7~12月期の米GDPは平均1.5%のプラス成長となる見込み。
6月に25年ぶりの高水準となる9.5%に達した失業率は、来年1~3月までに10%を超えるとみられている。(Bob Willis)