ここのところ産経新聞の田村秀男の紹介が多くなっている。それだけ大胆な提言で、理にかなっているからついつい引用というか、記事を引っ張って来たくなる。【デフレの恐怖 処方箋はあるか】(5)編集委員・田村秀男
まあもっとも、政治家達が、こういった提言にのる可能性は、あまりにも低いのだろう。日銀に国債や地方債の買い取り、財政ファイナンスをさえることに逡巡しているから・・・・。
日銀に財政ファイナンスさせることと同時に、肥大化した行政ーー特別会計を含めてーーの3分の1ほど削ることを示せば、鳩山内閣の支持率もコアな処で浮上するだろうが・・・・・。
経済政策の原点に帰れ
6年あまり続いたこの連載も今回が最終回となった。連載が始まったときの経済も厳しかったが、いまはもっと厳しい。1―3月期の実質GDP(国内総生産)伸び率は、年率換算でマイナス15.2%だ。株価も少し戻ったとは言え、ようやく9000円台だ。インドやブラジルの株価は、リーマンショック前の水準に戻り、中国は既に上回っている。
日本はアジアと同様に米国発の金融危機の影響をさほど受けていなし、原油や穀物の高騰の影響もなくなったのに、なぜ、景気が戻らないのか 私は、答えは簡単だと思っている。
景気対策としての財政出動や金融緩和が十分でないからだ。昨年度に決まった1次から3次の経済対策は、真水で合計10兆9000億円、そして現在、国会審議中の経済危機対策が15兆4000億円でだ。合計26兆3000億円の経済対策は、GDPの5%だ。中国はGDPの15%の景気対策を打っているから、日本の経済対策の規模は、ずっと小さいのだ。
ただ、財政は曲がりなりにも動いているのに対して、全く動いていないのが金融政策だ。日銀はCPや外債、銀行保有株の買い取りなど派手な動きで金融緩和をアピールしているが、その実4月のマネタリーベースの前年比伸び率は、8.2%に過ぎない。2002年4月の伸び率は36.3%だった。小泉内閣の時代に景気が拡大したのは、構造改革が奏功したのではない。この金融緩和が成長の原因だったのだ。
02年と現在のどちらの景気が厳しいかは、明らかだろう。それなのに日銀はいまだにゼロ金利にさえしていない。そして、22日の金融政策決定会合で、日銀としての景気判断を上方修正したから、今後金融緩和が行われる可能性はますます低くなった。金融緩和はインフレを招くと主張をするエコノミストも存在するが、米国は4月に前年比123%もマネタリーベースを伸ばしているのに、消費者物価は前年比0.7%の下落だ。いまのような経済環境で、インフレを心配する必要性は皆無なのだ。
にもかかわらず、与謝野馨大臣は、「日銀にこれ以上の金融緩和を求めることは無理がある」と日銀の「金融引き締め」に理解を示し、民主党も金融緩和に否定的な議員が多い。だから、政権交代が行われたとしても、景気が急回復する可能性は低いのだ。
本当に景気拡大を目指すなら、いますぐ日銀法を改正して、総裁を交代させるべきだろう。最後に連載初回に書いたことを繰り返す。1933年、アメリカで3年半にわたる株価低迷から劇的な株価上昇が起こったのは、FRB(連邦準備制度理事会)議長の交替がきっかけだった。
森卓先生吠えているなぁ。TVに出ているエコノミストで、金融政策についてまともなことを言っているのは、森卓先生と宮崎哲弥ぐらいだ。他の政策についての森卓先生のコメントは、疑問なことがあって同意できないととこがろがあるのだが、金融政策についてはまったく同感である。ここで取り上げた森永卓郎先生の評論は、09年5月の時点の発言であるから、財務大臣が与謝野であるときの発言である。民主党の藤井財務大臣も昨今の発言を聞いている限りでは、金融政策にはまったく無知、無頓着であるからほぼ同じようなもので、期待は出来ない。
民主党不況は、どこやらの新聞紙のご意見、ご高説とは異なり、金融政策から起きる。 06年3月の量的金融緩和解除、07年の二回の金利引き上げ以降、 いったんは景気回復の気味という「観測」から、株価は上昇。07年の日本の株価は13000円台間で上昇したがそれ以降、だら下がり、リーマンショックによって9000円台にまで下落、金融緩和と財政出動を受けて平均株価は上昇、10300円が年初の高値となった。13000円台にまで復帰してこそ、民間経済の自律的回復といえる。政策が大きく経済全般を左右するということを、市場関係者は忘れてしまって、日経平均の上下を眺めているのだろう。
サブプライム、リーマンショックの発信元である米国の株価が、年初来の高値を昨日付けたのとは大違いの状況である。この違いは、日本と米国の緩和策の大きさに起因するのであって、「構造」に起因するのではないことが理解できる。
補足:中国経済の眺め方は、森卓先生とは違って、ドルペッグ制と資本移動を規制しているので、財政政策の効果があるのであって、それほどの金融政策は財政政策ほど効果を持たない。中国株が上昇しているのは、巨額の財政政策が起因しているのだろう、と思う。
この財政出動は、共産党という選挙が全くないとてつもなく大きな官僚機構=政治の実権を握り、党員であること、権力者であることによって賄賂、公共事業による開発を事前に知ることなど、企業家と官僚がごっちゃになっているので官僚=党員である利権を活用しながら富の蓄積ができる政治経済「構造」がある。政治=経済のいびつな腐敗構造があるのである。よって、中国の株価上昇と日本の株価上昇を、金融緩和不足として扱うことは難しいのではないかと思う。
[東京 11日 ロイター] 藤井裕久財務相は11日午前、テレビ朝日の番組に出演し、2009年度補正予算の見直しで捻出する3兆円程度の財源について、年末にかけて経済状況が悪化すれば第2次補正予算として景気・雇用対策に活用する考えを示した。2010年度当初予算における新規国債の発行額は、09年度補正後の44.1兆円程度よりも増やさないと明言。現在の為替市場については「円高ではなくドル安」とし、為替の急激な動きには「何らかの措置をとる」と強調した。
政府が現在、作業を進めている09年度補正予算の見直しでは、3兆円程度が執行停止や返納の対象になると見られている。藤井財務相は、こうして捻出した3兆円程度の財源の使途について「これからの経済の問題がある」とし、「本当に09年度(の経済)がものすごく悪くなれば、これを使わなければいけないと明言する」と、年末にかけて景気に二番底懸念が強まれば景気対策に活用すべきとの考えを示した。対策の内容に関しては「雇用対策や介護・医療などの福祉経済に(財源を)回す」と語った。
一方、09年度税収も景気低迷に伴って6兆円程度の下振れになるとの見方が出ている。歳入不足への財源対応に関しては「09年度補正だけではなく、根っ子の問題もある」とし、09年度当初予算など予算全般の見直しにも切り込むことが必要との認識を示した。ただ、具体的には「これからだ」と述べるにとどめた。
2010年度の国債発行については、09年度補正後の44.1兆円よりも「増やさない努力をし、実現できる可能性は十分にある」と指摘。「それくらいのことができなければ、G7(7カ国財務相・中央銀行総裁会議)で言ったことに反する」と強調した。
為替市場で円高基調が継続しているが、藤井財務相は「ドル安の結果として、円、ユーロが高くなっている」と現状はドル安との見解を示し、「世界協調のために米国が超低金利政策を行い、それでドルが下落している」と説明した。
これまでの藤井財務相の発言が円高の一因との見方に対しては「円については、一言も言ってない」とし、「通貨政策としての自国通貨安はいけない」とあらためて表明。為替の水準にはコメントしないとし、為替は安定が望ましく、急激な動きには「何らかの措置をとる」と語った。また、1万円前後で推移している最近の株価動向については「これくらいの動は大きな話ではない」と述べた。
テレビ朝日だから、田原総一郎や双日の○○のマクロ経済音痴に答えているのことだろうが、やつ等も含めて、もう少し長期の視点で眺めてもらいたいものである。まあ、TVやメディアに登場しがちの「評論家」程度の経済論は多くの場合軽蔑するべきマクロ経済論≠ミクロ経済だろうが・・・・。ミクロ経済は、筆者には非常に難しいので、TVや新聞などで活躍しているものの見方が正当なのだ、と思う。
それはさておき、実体経済での中小企業の景況感は最悪期を脱したとはいえ、水準のかなり低いところで留まっている。円高や株価の下落も、経済水準の思わしくないところで移動するのだろう、と思う。このような状態を放置すれば、さらに所得格差、都市と地方の格差は広がる。所得格差は、一般には意外に思われるだろうが、生産性の高い処の水準に収まるものだが、具体的には生産性の高い処とは日本では製造業である。その産業の平均賃金に、内需産業、つまりはサービス業、小売業、物流業の平均賃金に近づいていくことになる。それは、労働力の移動が自由であれば、その傾向は強くなる。大きく見れば、身の回りの忙しさ、現実を外れて大きな目で見れば、この労働の自由な移動がある経済社会では、特にこの傾向が大きいことが分かる、と思う。
生産性の高い≒業界平均賃金が高い労働箇所=将来有望である産業、職場へ転職したいと思う者たちが増えるだろう。それを企業家がみすみす放置することはしないだろう。内需産業は、できるだけ労働移動を阻止したいのなら当然、賃金の優遇を図るために、生産性が低いとされる内需産業でも、生産効率を上げ、賃金の上昇をもくろむこことなる。そうして全体の水準が向上する。このようなダイナミズムを通して外需産業と内需の産業の平均賃金、平均所得は向上していくのが本来の経済であり、「現実」である。このダイナミズムは、景気循環の傾向が後退しているときには、弛緩するのは当然である。そこで、所得格差を阻止し、また格差の固定化を拒否するという政策目標を持つならば、生産性の高い産業を支援する対策が、優先的になされなければならないことと経済の拡張策が取られなけれならないことになる。経済全般の拡張策と生産性の高い産業の支援は、繁栄だけではなく所得向上策でもあるのである。
「資本主義」であるから格差はあって当然なのだが、これが広がるのは下からの生産性の向上が長期デフレ、もしくはディスインフレによって経済全般の拡張=名目経済成長率の向上が金融緩和を主軸に図られなかったことが主な原因だ。いい加減にこの対策を取れよといいたい。
クルーグマンの流動性の罠と金融緩和の意義
数学が入っているのでちょっと読むのも厳しいが、ともあれ日銀の審議委員さんにはしっかりと読み込んでもらって、自分達の金融政策が不公平に傾いているということをしっかりと認識してもらいたいものだ。が、奴らは相当に強情であり、「自説」を曲げないことが日銀の独立に通じると考えている。このような考え方は、一般には信念があるとして受けがいいのだろうが、その「自説」がデフレやインフレが、長期的に通貨供給量とその増大に対しての期待にかかっていると思っていないのだから、経済学的な「自説」の範囲に収まっていないことになる。
もっと単純化すれば、中央銀行の役割にマクロ経済の過剰なインフレとデフレを長期の視野を持ってコントロールする責任があるということを放棄しているのである。須田がインフレターゲットについてなにやら御託を日経新聞の「経済教室」で述べていたが、インフレゼロから少し上までを日銀が想定しているインフレ情勢らしい。インフレゼロは、デフレと同じ状況であるにもかかわらずにである。
小宮の門下生であり優れた研究家である須田にしてこの始末である。インフレの中身が問題で、生鮮食品とエネルギー価格を除いたコア・コアCPIは、明らかにゼロ以下であるが、コアCPIは、少し高めに出る傾向がある。どのCPIを根拠におくかによって経済認識が変わってしまうわけである。
そこで、インフレであるかどうかは、名目GDPを物価調整をした実質GDPで割ることによって引き出されるGDPデフレターも眺めてみる必要ある。しかしこれもマイナスである。名目のGDPが実質のGDPより上に無いのである。これはデフレの状況である。
日銀は、実質のデフレを目標にしているのだわな。ホント大丈夫かよ、日銀さん。蛇足でいえば、かの白川総裁も米国の経済学者たちが90年代のデフレスパイラルに陥ろうかという危機のとき、日銀にあらゆる物を買えといっていたことを捉えて、米国がゼロ金利政策に突入、そして長期に渡る経済の停滞が米国では予測される中、ざまあみろとでも言いたげな発言をそこかしこでしているらしい。様々な発言や、06年3月の「量的金融緩和」の解除、07年の二度の政策金利の引き上げは奴が首謀者である。06年の解除後、中堅企業や中小企業の景況感はかなり悪化、そして矢継ぎ早の07年の政策金利の引き上げは、平均株価にも影響を及ぼしたという見方がある。そんな奴が総裁だからよ。総裁を選んだ連中にも相当な責任がある。総裁の人事案の提出権は、自民党にあった、そして、人事同意したのは民主党である。すなわち民主党も奴を選択することにのったのである。奴は歴代の日銀総裁のなかで一番の強情な奴だろう、と思う。その点、自民党も民主党も共同正犯であるな~。
奴の場知らずの出来損ない加減は、田中秀臣のブログで読める。(田中秀臣頑張って大衆にマクロ経済学的啓発をしていってほしい!)そのエントリーの中の奴の日銀での発言や岩田と若田部の発言もリンクされている。関心のある向きにはどうぞ・・・。こんな奴と長期停滞ーーーデフレと景気の循環を伴った停滞ーーーへの陥りをしたくは無いよな、誰でもが・・・・。
参考までに白川の量的金融緩和にいたしての議論と岩田紀久男と若田部昌澄の量的緩和の議論をコピーしとく・・・・。
白川のの議論
「第2に、金融システムの安定には、流動性供給と並んで公的資本の注入が不可欠なことは先ほど述べた通りです。しかし、こうした政策対応は、金融仲介機能を改善させるものですが、危機を引き起こした根本的な問題を解決するには不十分です。
この点は、第3の論点を提起しています。問題解決のためには、民間非銀行部門で積み上がった様々な過剰の解消が必要であることは論を待ちません。しかも、銀行部門への公的資本の注入や量的緩和などを通じた潤沢な流動性供給は、非銀行部門の過剰解消の必要性自体を帳消しにするものではないことも忘れてはいけません。こうした過剰の解消が完了し、経済が持続的成長軌道に復帰するには、ある程度の時間を要することを認識しなければなりません。どの程度の時間が必要かについては、バブル期に積み上がった過剰の大きさや、バブル崩壊後に発生する危機時において、信頼の喪失によって増幅される負の相乗作用の厳しさに依存しますが、いずれにせよ、その時間は短くないということを肝に銘じる必要があります。 岩田紀久男と若田部昌澄の議論 「リフレ政策ではなかった量的緩和 リフレ政策の中心は貨幣ストックを大幅に増加させることである。日本銀行は01年3月から06年3月までいわゆる「量的緩和」を実施した。しかしこの政策で日銀が目標としたのは貨幣ストックの増加ではなく、一定の日銀当座預金残高の維持であった。よく誤解されるのだが、当座預金残高の維持だけでは市中に回る貨幣ストックは増えない。増やすためには、銀行が国債不足に陥るほど大量に、日銀が国債を買い取る必要がある。銀行が国債不足に陥れば、銀行は民間非銀行部門から国債を買って不足を補おうとする。これによって初めて、貨幣が民間の非銀行部門に供給される。
しかし、当時の国債発行額に占める日銀の国債購入増の比率は、量的緩和開始当初の01年こそ67%と高かったものの、03年以降は18%、3%、10%にとどまった。そのため、貨幣ストックは5年間で11%しか増えなかった。要するに「量的緩和」はリフレ政策ではなかったのだ。」
日銀が10日発表した6月の国内企業物価指数(速報、2005年平均=100)は102.6となり、前年同月に比べ6.6%下落した。下落率は、1987年1月の6.1%を上回り、統計が確認できる60年以来、過去最大となった。前年水準を割り込むのは6カ月連続。原油など原材料が高騰した前年の反動が影響したほか、最終需要の低迷に伴う製品価格の下落も響いた。
生産や輸出の持ち直しなどから、政府は事実上の景気底打ち宣言をしているが、消費不振による需要減や企業の売上高の落ち込みで、日本経済に対するデフレ圧力が一段と強まっていることが示された。日銀は「最終製品の価格を上げるのは難しく、企業収益が圧迫される可能性がある」(調査統計局)と指摘している。
企業物価指数は対前月比でも0.3%の下落で、10カ月連続のマイナス。10カ月連続下落はIT(情報技術)バブルが崩壊した2001年3月から02年1月の11カ月に次ぐ。
品目別では、商品市況の影響で石油・石炭製品やスクラップ類などは上昇したが、自動車向けや建設用が低迷する鉄鋼、料金を値下げした都市ガスなどが下落。小売店の低価格戦略でメーカーが値引きを強いられる加工食品や、販売競争が激化するエアコンなどの電気機器も下落した。
下落した品目数は377品目で、06年以降では初めて下落品目の数が上昇品目の数を上回った。原油市況は一服しているが、今後原材料が高騰すれば、企業は国内の値下げ圧力との板挟みになるだけに、景気回復の足かせになる可能性もある。
輸入物価指数(円ベース)は101.2で前年同月比32.2%の下落。輸出物価指数(同)は90.9で12.8%下がった。
ひたひたと迫る「デフレ」への本格的落ち込み。企業物価が下落ということは、当然に、国内所得も下落し、それに依存して需要も下落すると予測されるから、消費者物価指数も下落圧力が働くことになる。となれば、所得の上昇は当然望めず、雇用特に新規の雇用はさらに悪化することが予測される。ただし、介護・医療の求人が多いそうだから、失業率の悪化も幾分和らげているのだろうか。
もともと、景気拡張期といわれた02年程からの景気拡大も米国の景気の好調さが引っ張ったものであって、国内ではデフレ圧力がじりじりと並行的に存在した。デフレの経済を示す指標として実質の経済成長率が名目の経済成長率を上回る時期ががほとんどであった。このデフレと外需による景気回復という不可思議な共存が存在した時期が02年からリーマンショックまでの日本経済全体の実態である。
短期のデフレという価格下落は需要と供給によって決まるが、先物市場がある原油、とうもろこし、大豆などの資源や穀物相場に過剰流動性が流入することによって投機主導で変動する可能性がある。
資源でも鉄鉱、石炭は先物相場は無く、実需給によって短期的には決まる。国内のサービス価格、モノの価格はそれぞれの各種の要因によって決定付けられる。大まかに言えば、前者は労働力の費用でそれほどの変動は短期ではおきにくい。後者は技術革新などによって付加価値が高まりながらも、価格が下落する傾向がある。いずれにしてもその様子は、需給でほぼ決まる。
しかしながら、長期では別の主人が登場する。大雑把に言って、国民所得は、通貨量が一定だとすれば、マネーサプライ×通貨の流通速度=モノ・サービスの価格×取引量で表される。通貨の供給か流通速度が上昇すればインフレになり消費者物価は決定される。供給量に対して通貨の供給が少なければ、または、通貨の流通速度が遅ければ、通貨の価値が上がり、デフレとなる。通貨供給が増えれば、または、流通速度が速ければ、インフレになる。よって、インフレとデフレは、通貨供給をコントロールできる経済主体の思惑しだいである。
この経済主体の思惑は、何処にあるのだろうねぇ?
異例の措置の出口は社債、CPオペが先という感じ=植田元日銀審議委員
[東京 3日 ロイター] 東京大学金融教育研究センターの植田和男教授(元日銀審議委員)は3日、都内で開かれた講演後の質疑応答で、9月末に期日を迎える日銀の「異例の措置」の出口戦略についての質問に答え「順番として敢えて言えば、落ち着いてきている社債市場、CPのオペからエグジットして、非常に大きな役割を果たしてきた、現在でもある程度機能を果たしていると思われる企業金融支援(特別オペ)が最後になるのかなという感じがしないでもない」と述べた。
同氏は「金融危機と日本経済」と題した講演のなかで、最近の鉱工業生産の動きについて「ピークを100とすると、60を割るくらいまで落ちたが、現在70くらいの回復が見えてきている」としたうえで、「それでも100よりものすごく下で、おそらく採算ライン、70後半から80くらいとみられる。この辺にこないと儲かるようにならない」と指摘した。
さらには「割と近い段階で、そういう姿が見えてこないと、2段階、3段階目の調整が待っているという微妙な局面にある」と警告したが「80に戻らないと決まったわけではない」とも付け加えた。
同氏はまた日本で「デフレの傾向が見え始めている」と懸念を示した。同氏は、直近の食料・エネルギーを除いたベースのCPIは前年比マイナス0.5%程度と、米国より2%ポイント以上低いと指摘。「米国では真性デフレにいくリスクは今のところまだ低い」とする一方、「日本は既にデフレであり、一段のデフレ率拡大に至る可能性もかなり高い」と警告した。
さらに「デフレ経済で財政からいろいろな刺激をしている中で、財政のサステイナビリティは非常に大きな問題となってくる」と指摘した。
(ロイターニュース 児玉 成夫記者)
経済の状態については、ほぼ同意。ただし、出口論は、CP買い付けの取り止めを先行させるべきではなく、長期国債の買い切りの額を大きくする策が先行すべきだと強く思う。そうしないと、大型の財政出動による国債の発行によって、金利が上昇する懸念がある。よって、市中金利の上昇を抑えるためにも長期国債の買い切り策によって、実質金利の低下を目的とすべき。
ところがこれが景気など経済の「期待」をつくり、それが経済学の中心にあるらしいのだからこれがまたマクロ経済学の覚束ないところでもある。
実体経済は、景気循環として底を打ったものの雇用不安や安心して生活できるという見通しは、国民所得の減少=勤労者の所得の減少による消費の手控え、企業の設備投資の回避が一般的な傾向としては見られる。刑期はまだら模様で回復する。だから、もちろん、設備投資に積極的な分野もある。(電池や太陽光発電機などの設備投資、非シリコン系の太陽光パネルの生産のための設備投資など)このようなまだらの景気回復期はいつ頃、またどれくらい意の率で回復するかは立て辛い状況にある。ひところより景気の悪化のテンポはゆるくなったとはいえ、今現在では「回復」もL字型の景気回復ほどしか想定できないからなぁ。
先高観広がる原油価格、石油株に収益上振れ余地も
[東京 27日 ロイター] 原油価格に先高観が広がっている。足元では供給過剰との見方が支配的だが、株式市場と同様に景気回復が期待材料となる一方、低金利を背景にしたファンド筋のマネー流入によって堅調な地合いを維持している状況だ。
これを背景に石油株は石油開発事業に追い風が吹く格好となり、収益に上振れ余地が出ているとみる関係者が増えている。
26日のニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)の原油先物相場は続伸し、標準油種のWTI先物当限は一時、年初来高値を付けた。米消費者信頼感指数の大幅改善を受け、需要回復への期待が高まったことが背景。市場関係者によると「アジアを除いて本格的に需要が回復したとは言えず、足元では供給過剰という見方がコンセンサスとなっている。しかし、先行きの世界景気に対する期待が大きく、米消費者信頼感指数の改善が先高観を強め、上昇に弾みを加える形となった」(商社系商品会社トレーダー)という。
サウジアラビアのアブドラ国王が、現時点で原油の適正価格は1バレル=75─80ドルとの見方を示したことも、先物価格を刺激する材料となった。
原油価格の先高観は、景気回復に伴う需要増加期待だけではなく、マネーに余剰感が出ていることも背景にある。株式市場など他の金融市場においても、商品投資顧問業者(CTA)のマネーの動きが活発化しているとの観測もあるが、原油先物市場においても、ファンド筋の資金還流が目立つという。
これについてSBIフューチャーズ・法人営業課の鈴木孝二氏は「景気回復期待を材料にするとしても、足元の需要は相場の動きが示すほど劇的に改善したわけではない。原油市場も他のマーケットでみられるような、金融相場の色彩を強めてきた様子。マネーが細らない間は上昇期待が保たれそうだ」と話す。
こうした中、石油会社の収益に上振れが期待されている。とりわけ注目されるのが、油価が利益に直結する石油開発ビジネスだ。現時点で各社が期初に立てた前提条件を上回って推移しており、さらなる原油価格上昇があれば、2010年3月期の業績見通しについて上方修正が見込めるようになる。
たとえば、国際石油開発帝石(1605.T: 株価, ニュース, レポート) では10年3月期予想の前提条件として、原油価格をブレント価格で1バレル=52.5ドルで設定しているが、足元の北海ブレント先物は61ドル台で推移。同社の藤井睦久副社長は13日の決算発表で「前期は乱高下した油価に修正を重ねたため、相場の動きに一喜一憂しない。年間を通じてブレント価格が50─55ドルで推移すると想定した」と述べたものの、このまま油価が高止まりもしくは一段と上昇すれば、通期の営業利益見通し3010億円(前年比54.6%減)は増額される可能性が生じる。
また、新日本石油(5001.T: 株価, ニュース, レポート)でも今期の原油価格を、ドバイ原油で1バレル=54.4ドルで設定しているものの、こちらも現時点では58ドル台で推移している。同社株はこのところ堅調となっており、27日は大引けはマイナスとなりながら、前日に続いて年初来高値を更新した。
原油価格の上昇により「国内元売り各社のマージンは、価格転嫁がスムーズに進むかどうか不透明な部分があるため、ガソリンなどの精製・販売については読み切れない」(準大手証券情報担当者)といった見方があるものの、前期に元売り各社が大幅赤字を余儀なくされる要因となった、在庫影響(原油価格の下落により、総平均法によるたな卸資産の評価が売上原価を押し上げる影響)が一巡する要因となる点も注目されている。
みずほインベスターズ証券・アナリストの河内宏文氏は「マージンについて不透明感がある一方、原油価格下落局面でみられた高値在庫の評価損計上というマイナス要因はなくなる。本格的な石油製品の需要回復については期待先行のイメージが強いが、油価上昇で開発事業の部分に上振れ余地があり、ひところに比べて石油株に追い風が吹いている状況だ」とコメントしていた。
(ロイター日本語ニュース 水野 文也)
先物系で原油高が見られるが、世界的な景気回復期待による原油需要の増加と世界的な金融緩和による過剰な流動性の流入が背景にはあるのだろうと思う。03年ごろまでのデフレ懸念から緩和策にのめりこんで行ったFRBが生み出した過剰流動性は、欧州に流れ込み、スペイン、アイルランド、など「周辺国」から、中東欧の債務国家へ流入した。資金流入によって、スペイン、アイルランドの周辺国、ルーマニア、ハンガリー、バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)などの中東欧の諸国は高度な経済成長を果たした。が、サブプライムショック、リーマンショックという金融危機を受けて、サブプライム関連証券の価格下落によって、資産評価の減損によって欧州に金融危機が深まる。世界同時不況の欧州からの融資資金、短期資金の引き上げが始まり、中東欧の通貨下落が起きる。サブプライムショックによって、金融危機に落ち込んだ欧州の融資資金が引き上げられ、通貨下落が起きる。これは輸入価格の急騰を招き、高インフレに見舞われる。消費の落ち込み、経済不安が蔓延する。
通貨の下落は、政府が発行する国債の信用低下に繋がる。国債価格の急落と流通利回りの高騰を招き、主要な格付け会社は、ルーマニア、ハンガリー、バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)の格付けを引き下げた。ルーマニアの国債は、08年10月にすでに、ジャンクボンド級に引き下げられたといわれている。国債の格付けの引き下げは、資本の逃避をさらに加速させることになる。これが、通貨の下落と金利の上昇に拍車をかけることになる。金利の上昇は、外貨建て債務の返済を困難にする。
この通貨危機は、97年のアジア通貨危機と同じパターンである。中東欧諸国は、低金利の外貨建て債務を負った。自国通貨より外貨の方が、「低金利」であったからである。ここで、外貨建て債権の引き上げは、債務者に高金利の自国通貨建て債務の変更を迫ることになる。自国では景気過熱で、高金利となっているはずだから、高金利の負担が出来ない債務者は、破綻へと至る可能性が非常に大きいことになる。債務の返済が出来ない事態が、生じれば債権者たる外資は、当然債権者の資産価値を保存する行動にでる。それが、融資の引き上げである。通貨はまた下落圧力を受ける。
欧州の短期資金の引き上げによる中東欧の通貨下落、暴落を引き起こし、ハンガリー、などではIMFへの資金要請を開始した。ハンガリーでは、先般、緊縮財政、増税派のバイナイ政権が成立した。これによって、不況下での逆噴射緊縮財政が開始されることとなった。不況下での逆噴射緊縮財政によって、さらに短期資金は流出圧力を受け、通貨下落の圧力が高まることになるだろう。通貨フォリントを筆頭に中東欧諸国の通貨は下落する。それらの諸通貨は、さらに下落するだろうことは、市場関係者では、すでに常識であるだろう、と考える。97年の通貨危機では、ファンドの通貨アタックが、かなり激しかったとされているが、今回は、この通貨アタックはあるのだろうか?
で、話がそれたが、これらの資本の移動は、グローバリズムによるものであり、また、欧州米国などの成熟した経済成長の継続、新興国の経済的成長が著しさから起きたともいえる。世界同時不況を緩和するために欧州、米国の中央銀行は緩和策を実施している。この世界同時緩和策によって生まれた過剰流動性の行き場として、原油市場、貴金属市場、東アジア、東南アジアの株市場に流れ込んでいると思われ、その「先物」的価格が上昇していること、だ。また、過剰流動性は、各国の株価の上昇に見られるように、金融緩和による超「低金利」による「金融相場」も伴って現れているようにも思える。
このような超低金利と世界の過剰流動性は、どのようなイタヅラをするか。景気の底は、打ったとされる5月末現在である。こうした時期には、今まで質への逃避として逃げ込んでいた欧米の格付けの高い長期国債購入の勢いが減速し、投機的、短期投資へと資本移動していくことになる。この流れが、流動性の引き上げとして、米国のあるいは、日本の長期国債金利(もっとも日本の国債引受は日本国内で消化)の上昇を招き、流動性の流入として原油、貴金属など特にアジア新興国の株価上昇(アジアの新興国の株価上昇は著しい)に寄与しているのだろうと思う。
この原油に代表される資源の「先物」高と米国の長期金利の上昇は、原油高は供給ショックとしてコストインフレ懸念を、それと同時に長期金利の上昇は、耐久諸費l財、住宅のローンの金利上昇、設備投資の金利の上昇を招く恐れがあり、この懸念から景気の底を打ったとされる景況観の腰を折ることにもなりかねない事態が「最悪」の場合想定される。このような懸念、というか不安というかそれらが今の現状の抱える景気の問題なのだろう。
なお、長期金利の上昇は、先進諸国での財政出動(日本の財政出動の仕方は、基金を介してのあり方であるから、その基金の官僚支配が疑問だが、それは別の別の政策で手当てするべき)によって大量の長期国債の発行が見込まれ供給過多による国債の価格下落予想が成立する。よって価格が下落すれば、実質の利回り、ここではl流通利回りとしての長期金利の上昇が見込まれる。このような財政の出動による長期金利の上昇もあるが、「不完全雇用」下ないしは景気後退期では、金利上昇は平時のそれに比して比較的金利は上昇しがたい。よって、この要素と過剰流動性の資本の移動によっても金利の上昇
があると考えるのが妥当だろうと思う。
縦軸に利子率、横軸に国民所得をとり、 IS曲線とLM曲線の交点を求めることになる。財市場のIS曲線は、利子率によって決まるので、IS曲線は右下がりの曲線となり、貨幣の需要をあらわすLM曲線は、利子率が上がると貨幣需要が減り、国民所得が増えればマネーも増えるので、右上がりの曲線になる。
縦軸が為替のレート)、横軸が国民所得とするマンデルフレミングモデルにすると、LM曲線、M/P=L(r、Y)は、レートの影響を受けないから垂直、IS曲線は、レートの影響を受け、純輸出の増減があるから、Y=C(Y-T) + I(r*) + G + NX(e) の財市場は右下がりの曲線になる。
財政出動は、どのような国民所得を持つかといえば、単純化すれば、開放経済の国際経済ではIS曲線の上昇によって、LMとISの交点が上昇するだけに終わる。すなわち、レートの上昇、日本で言えば、円高を招くことになる。
また国債の発行によって財政出動をすると、IS曲線は右に移動。LM曲線は左シフトによって、交点は利子率は相対的に高く、国民所得は減少することになる。
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