[東京 11日 ロイター] 藤井裕久財務相は11日午前、テレビ朝日の番組に出演し、2009年度補正予算の見直しで捻出する3兆円程度の財源について、年末にかけて経済状況が悪化すれば第2次補正予算として景気・雇用対策に活用する考えを示した。2010年度当初予算における新規国債の発行額は、09年度補正後の44.1兆円程度よりも増やさないと明言。現在の為替市場については「円高ではなくドル安」とし、為替の急激な動きには「何らかの措置をとる」と強調した。
政府が現在、作業を進めている09年度補正予算の見直しでは、3兆円程度が執行停止や返納の対象になると見られている。藤井財務相は、こうして捻出した3兆円程度の財源の使途について「これからの経済の問題がある」とし、「本当に09年度(の経済)がものすごく悪くなれば、これを使わなければいけないと明言する」と、年末にかけて景気に二番底懸念が強まれば景気対策に活用すべきとの考えを示した。対策の内容に関しては「雇用対策や介護・医療などの福祉経済に(財源を)回す」と語った。
一方、09年度税収も景気低迷に伴って6兆円程度の下振れになるとの見方が出ている。歳入不足への財源対応に関しては「09年度補正だけではなく、根っ子の問題もある」とし、09年度当初予算など予算全般の見直しにも切り込むことが必要との認識を示した。ただ、具体的には「これからだ」と述べるにとどめた。
2010年度の国債発行については、09年度補正後の44.1兆円よりも「増やさない努力をし、実現できる可能性は十分にある」と指摘。「それくらいのことができなければ、G7(7カ国財務相・中央銀行総裁会議)で言ったことに反する」と強調した。
為替市場で円高基調が継続しているが、藤井財務相は「ドル安の結果として、円、ユーロが高くなっている」と現状はドル安との見解を示し、「世界協調のために米国が超低金利政策を行い、それでドルが下落している」と説明した。
これまでの藤井財務相の発言が円高の一因との見方に対しては「円については、一言も言ってない」とし、「通貨政策としての自国通貨安はいけない」とあらためて表明。為替の水準にはコメントしないとし、為替は安定が望ましく、急激な動きには「何らかの措置をとる」と語った。また、1万円前後で推移している最近の株価動向については「これくらいの動は大きな話ではない」と述べた。
テレビ朝日だから、田原総一郎や双日の○○のマクロ経済音痴に答えているのことだろうが、やつ等も含めて、もう少し長期の視点で眺めてもらいたいものである。まあ、TVやメディアに登場しがちの「評論家」程度の経済論は多くの場合軽蔑するべきマクロ経済論≠ミクロ経済だろうが・・・・。ミクロ経済は、筆者には非常に難しいので、TVや新聞などで活躍しているものの見方が正当なのだ、と思う。
それはさておき、実体経済での中小企業の景況感は最悪期を脱したとはいえ、水準のかなり低いところで留まっている。円高や株価の下落も、経済水準の思わしくないところで移動するのだろう、と思う。このような状態を放置すれば、さらに所得格差、都市と地方の格差は広がる。所得格差は、一般には意外に思われるだろうが、生産性の高い処の水準に収まるものだが、具体的には生産性の高い処とは日本では製造業である。その産業の平均賃金に、内需産業、つまりはサービス業、小売業、物流業の平均賃金に近づいていくことになる。それは、労働力の移動が自由であれば、その傾向は強くなる。大きく見れば、身の回りの忙しさ、現実を外れて大きな目で見れば、この労働の自由な移動がある経済社会では、特にこの傾向が大きいことが分かる、と思う。
生産性の高い≒業界平均賃金が高い労働箇所=将来有望である産業、職場へ転職したいと思う者たちが増えるだろう。それを企業家がみすみす放置することはしないだろう。内需産業は、できるだけ労働移動を阻止したいのなら当然、賃金の優遇を図るために、生産性が低いとされる内需産業でも、生産効率を上げ、賃金の上昇をもくろむこことなる。そうして全体の水準が向上する。このようなダイナミズムを通して外需産業と内需の産業の平均賃金、平均所得は向上していくのが本来の経済であり、「現実」である。このダイナミズムは、景気循環の傾向が後退しているときには、弛緩するのは当然である。そこで、所得格差を阻止し、また格差の固定化を拒否するという政策目標を持つならば、生産性の高い産業を支援する対策が、優先的になされなければならないことと経済の拡張策が取られなけれならないことになる。経済全般の拡張策と生産性の高い産業の支援は、繁栄だけではなく所得向上策でもあるのである。
「資本主義」であるから格差はあって当然なのだが、これが広がるのは下からの生産性の向上が長期デフレ、もしくはディスインフレによって経済全般の拡張=名目経済成長率の向上が金融緩和を主軸に図られなかったことが主な原因だ。いい加減にこの対策を取れよといいたい。