構造改革論一辺倒の池田信夫がブラック会社の蔓延に処するためにミンス党の「借り手保護」政策を批判しているが、たまには傾聴に値することを述べている。
「ブラック会社」はなぜ生まれるのか - 池田信夫
但し、なぜ生まれるのかの経路に関しては条件が一つ抜けている。それはマクロ経済政策による経済パイの拡張策がないと思うが・・・。ま、鼻から無理だわな、池田は金融政策無効論者だから・・・。自説補強のための論議が得意な奴だから・・・・。
【日曜経済講座】編集委員・田村秀男 デフレの国庫破壊
産経の田村秀男の日銀への提案。マスコミの中での田村の提言は凡百のマスコミ評論先生方、中途半端なインテリ評論家先生方、政治家先生方の中でも、筆者がみる限りマクロ経済では群を抜いているわ。言い分が明確だしな。
掲載されているグラフをみれば、以前から筆者の認識している「デフレ」状況は、90年代から続いているということの主張とかなり重なる。消費者物価を生鮮食品を除くコアCPIではなく、エネルギーも除くそれで見れば、90年代は一貫して、デフレである。デフレでも景気後退と景気拡大は、重なるが、景気後退はさらに厳しく、景気拡大は、好況と呼べるほどのものではないものになっているのが「現実」。話変わって、デフレ圧力の解消のために、個々の企業が価格を高くすればいいじゃないかとかいうインテリの方に一言言いたい。
各企業は、価格競争に参入している。「競争」によって同業他者との競争にを乗り切るためにあえて価格を下げているのである。各企業はあえてその競争に参入しているのであって、「競争」回避できない「圧力」があるのである。デフレであれ、インフレ期であれ価格競争は非常に激しいが、デフレ期の価格競争は、さらにデフレ圧力を呼び込む。その結果、利潤を削り、諸企業の体力が弱くなる、賃金が減少する、雇用は維持できないばかりか、リストラにまで発展する。新規求人を控えるなど雇用に大きな影響を与える。しかもインフレ期待が醸成される機運があれば、財サービスは売れるだろうとの予測から、企業家も強気の運営方針を打ち出せるものが多くなるだろうが、デフレ期待、デフレ予想のもとでは、強気の運営方針を打ち出すより、防衛方針、コスト削減に向かう予想が勝つ。
家計の所得が減る、購買力が落ち、デフレ期待、消費を控える現象がさらに蔓延する。思うように売れないので企業体力、収益が減少、落ちる。
沈滞した景気を反映して、政府の税収が落ちる。国債依存が高まる。そこで一般家計は、将来増税があると予想する。そこで将来に備えてか、消費より貯蓄へと向かう。貯蓄は、株価などが上昇していなければ、リスク資産より、堅実な資産に向かう。金融機関が、増えた預金を資金需要が萎えた企業などへの貸付より、安全資産である国債を購入する。リスクのある融資より安全資産へ移行する。金融の投資仲介機能が脆弱化する。さらに民間設備投資が減ることにもなる。
円高予想があるときに海外の株、などのリスク資産より、国内への資産購入に走るのは合理的な判断である。
よって、海外より国内が好まれることになる、潤沢な資金は、国内を循環し余った資金は、ストック、残高へと回るだけのことになる。金融仲介機関によって、民間社会投資へと向かい難くなるのである。このような負の循環基調は、社会全体の「貯蓄」>「投資」傾向を促すことになり、さらに経済のパイがちいさくなり、経済は活況を呈さなくなる。消費行動だけでなく、資金需要は後ろ向きになり、投資控えと向かうことになる。その結果、さらに経済のパイは縮小する。
円高傾向からか、あるいは人件費安さからか、リーマンショック後の政権交代によって、製造業派遣の禁止という規制強化策(景気後退期にこの政策は、ぐれつである。一層の失業者が増える可能性さえ残す。雇い止めされたもの達は、不況期他業種への就業は難しい)が実施される懸念が広がったからか、輸出産業は、海外へ目を向けるのは当然の合理的判断である。上記のような、総所得の縮小から消費不足、投資不足から内需は減速する予想があるから、工場の海外移転は、体力のある企業から、また、中枢企業から移転していく傾向は強まる。中枢企業は、裾野の多い企業である。分品産業も海外移転が始まるだろう。となれば、さらに総所得の縮小が始まり、消費の減少、設備投資の減少、雇用の縮小へと悲観的な経済社会感が広がる傾向は強くなる。
新興国は、80年代、90年代より比較的中産階層が大きくなっていることを背景に、製造業種は現地生産、現地販売へと転換し、不況期に叫ばれる産業空洞化論が語られるようになるのである。これは工場に勤める者たちが、削減されることにつながる。雇用が少なくなれば、社会全体の消費が落ち込むと予想される。その予想をもとにさらに、現地生産、現地販売を加速するだろう。内需が減速する。中央政府、地方政府の税収が減る。医療、年金、失業保険、公的教育費用などの社会維持機能や社会保障も税金にかなり依存している。中央政府、地方政府の不況による税収減、公的保険料の減収は、社会維持機能が果たせなくなる危険さえもはらみ、社会保障にも大きく支障をきたすことになる。
何よりも、経済の縮小を避けるべき公的な政策が、何よりも必要な時なのである。それには、日本銀行と政府が「非常」時の協力と大胆な緩和政策が必要なのである。
菅経済財政相、「デフレ」公式に宣言
11月20日9時47分配信 読売新聞
菅経済財政相は20日午前、閣議後の記者会見で、日本経済の現状について「デフレ状況という認識だ」と述べ、商品やサービスの価格が下がり続ける「デフレ」に陥っていることを公式に表明した。
同日午後に発表される11月の月例経済報告でも、3年3か月ぶりにデフレ懸念が表明される見通しだ。
菅経済財政相は、日本銀行が同日開く金融政策決定会合にも政府代表が出席し、「政府の(デフレ)認識をぜひ伝えたい」と述べた。
と言われてもねぇ。やっていることが、デフレ加速ですから・・・・。
政府は19日午前の衆参議院運営委員会合同代表者会議で、12月2日に任期を満了する日銀政策委員会の水野温氏審議委員(50)の後任に神戸大経済経営研究所所長・教授の宮尾龍蔵氏(45)を充てる人事案を提示した。与党などの賛成多数で国会の同意を得る見通しで、宮尾氏が所長・教授を辞職する2010年3月下旬に任命する予定。任期は5年。(同意人事案の一覧など2面に) 日銀審議委員の定員は6人で、1人は空席が続いている。水野氏の退任後、宮尾氏が来春就任するまで約4カ月空くため、欠員は一時的に2人に増える可能性がある。平野博文官房長官は代表者会議で審議委員の空席のポストについて「引き続き人選をしている」と説明した。 宮尾氏は金融政策などマクロ経済学が専門。著書に「マクロ金融政策の時系列分析―政策効果の理論と実証」などがある。日銀総裁人事を巡る混乱を受けた昨年4月には「福田康夫首相、民主党双方に重い責任がある」と指摘していた。 政府はこのほか国家公安委員会委員に連合前会長の高木剛氏(66)を充てる人事案も提示した。 (11/19 14:50)日経新聞
宮尾龍蔵のマクロ金融政策の見方 アマゾンの書籍内容から引用。「日本の景気変動メカニズムをデータから精緻に検証。量的緩和やゼロ金利など、総需要サイドの金融政策によって経済が好転したというわけではなく、経済の供給サイドや構造問題に本質的要因があることを、時系列手法を駆使して浮き彫りにする。」 駄目だこりゃ。総裁の白川も強力なバックアップを得たなぁ。日本経済の新たな沈没へ出発だ!!(皮肉)こりゃあ駄目だの理由はとりあえずメモ:「デフレ:問題の概観」(スウェーデン国立銀行)で。
中小企業向け融資や住宅ローン返済猶予を金融機関に促す中小企業者等金融円滑化臨時措置法案は19日の衆院本会議に緊急上程され、20日未明、与党3党などの賛成多数で可決、参院に送付された。自民、公明、みんなの党は採決時に退席し、19日の衆院財務金融委員会での採決に続き、与党側の強行採決となった。与党は20日以降も各委員会で残る法案の採決を急ぐ方針で、与野党の攻防が一段と激しくなりそうだ。毎日新聞
金融円滑法案は、強行採決までしてする需要法案じゃないだろう。同法案で、中小企業は一時的に助かるかもしれないが、それより「恒常性」を期待できる実質金利低下に関連する事業再生策が必要。それが迂遠ではあっても、経済全般を活況化させることにつながる。そしてデフレの脱却にはつながる。亀井静香も期待倒れというか、マクロ経済音痴だよなぁ。
ローンや融資に共通に関係するのは「金利」である。金利操作をすることによって経済全体を操作するのは日本では日銀。であれば、政府側は、なんでまた、日銀に担当させないのかねぇ。06年の量的金融緩和解除、07年の日銀による強硬な金利引き上げによって景況感がかなり悪化した中小企業。リーマンショック後もかなり悪化したのだが、日銀のCP、社債購入、中堅企業も含めたと別支援オペなどの実施、政府側の緊急融資策、エコ減税、助成金などの緊急時には正当な支援によって、急激な景気減速が国内的には回避された。他国の財政刺激策も貿易産業にはプラスサムを与え、国内的な景気回復を支えたのも事実である。
金利の絡む問題は、日銀が窮乏期にある地方債の購入から健康保険、年金の基金への通貨供給など、考えられる緩和策として経済全般を俯瞰して介入しなければ、デフレ基調の早期解除は非常に難しい。そんなことは、90年代後半から教訓として政府側には与野党ともにあるはず。・・・・・。?!デフレ認識から、デフレ脱却策へ転換するのは、宮尾龍蔵などの述べている「構造」転換だけでは、効率的に転換できない。
それに、宮尾の金融政策の評価の時系列分析は、おそらく90年代を対象にしているはずで、名目の経済成長が4%程あった80年代の金融政策は対象にしていないはずである。80年代の金融政策は評価の高いのである。80年代と90年代とでは構造的違いはある。80年代より90年代の方が、護送船団方式の解体による金融の規制緩和、官省庁の統廃合、など規制緩和は90年代の方が進んでいる。そこから考えれば成長率が4%程あったのは、通貨に対する行政として金融政策は、非常にうまくやっていたし「質」の高い金融政策だったということが言える。日本銀行の政策は、90年代にさまざまな形で劣化したのである。
いささか乱暴な議論であるが、マクロ経済学者が書く記事より短くて分かりやすい。そして、端的な指摘があるところが、田村の技量である。これは、学者には望みがたい技量で、新聞記者としての長所でもある。橋本政権からの経済のあらすじが図を使って掲載される。掲載されている図から、橋本政権時から名目経済は、ほとんど成長していない、ことが分かる。田村はこの原因を、長期に渡る日本のデフレに求めているが、凡百の経済学者や原因を探るのにあまりに臆病である学者と比較して、ありきたり過ぎるほどの正当な眺め方である。
伝説のリフレ派の田村の意見。御説ごもっともです。
「まず、デフレを止めよう~若年失業と財政再建の問題解決に向けて」
勝間和代の提言。大いに賛成。勝間って自己啓発本、(ミクロの経済に強い)出してるだけだと思っていたが、マクロ的経済学ではごく当たり前のことをここでは述べている。停滞期、不況期では、経済主体がミクロ的に正当な行為をとることが、マクロ経済全体で見れば、経済全般の活況を削減することになる「合成の誤謬」が起きる。そのようなミクロとマクロの腑分けをすると、勝間はミクロ経済の世界の人だと思っていた。
このマクロの記事にいちゃもんつけている連中(ここでは明示しないが、かなりいるみたいだな、戦闘的反リフレ派が)がいるが、ほとんど説得力なし。連中は、頭冷やして、「マンキューの経済学入門」や、クルーグマンの「恐慌の罠」、その他リフレ派の著作は結構あるぞ。それらでも読んでみたらどうだ?どこにもゼロ金利下の金融政策無効論は書いてないぞ。構造改革がだめだ、なんてどこにも書いてないし、供給力を上げることにも反対だなどとはどこにも書いてないぞ。ただ読みようによっては、そのように思えるだけである。
FRB「来年もゼロ金利」 デフレの脅威
米国はアイゼンハワー政権以来となるデフレの脅威に直面しており、米連邦準備制度理事会(FRB)は来年も事実上のゼロ金利政策継続を強いられそうだ。
米スーパーマーケット・チェーン最大手クローガーの幹部らは、5~7月(第2四半期)の利益が7%減少したのはデフレが原因だと指摘している。食品やガソリン、電子機器の値下がりでコストコ・ホールセールの8月の売上高は横ばいになった。持続的な物価下落は企業収益を減少させ、企業経営者は人件費や人員の削減を余儀なくされるという負の連鎖を招きかねず、消費需要の衰えで賃下げや解雇を激化させる恐れがある。
こうした悪循環が日本の「失われた10年」と呼ばれる1990年代の景気低迷につながった。その60年前にはこれより大きな悪循環が米国で大恐慌を発生させる一因となった。債券投資家が消費者物価の低下を予想していることが1年物の債券とインフレ連動債の利回り格差に示されている。
コロンビア大学教授でノーベル経済学賞受賞者のジョゼフ・スティグリッツ氏(66)は9月22日のインタビューで、「デフレは間違いなく目下の脅威だ」と述べ「デフレの脅威と鈍い景気回復が重なり、FRBは長期にわたり現状維持を余儀なくされるだろう」と予想した。
米労働省によると、消費者物価指数(CPI)は前年同月比で6カ月連続低下しており、デフレの兆しが見られる。これは1954年9月から55年8月までの12カ月間以来の長期にわたる物価下落だ。食品とエネルギーを除いたコア指数はこれまでのところ、上昇ペースの鈍化を意味するディスインフレの状況にある。8月のコア指数は前年同月比1.4%上昇。昨年9月は2.5%上昇だった。
地区連銀総裁の中では、サンフランシスコ連銀のイエレン総裁とセントルイス連銀のブラード総裁、ダラス連銀のフィッシャー総裁、シカゴ連銀のエバンス総裁の4人がここ数週間に物価下落の可能性で懸念を表明している。エバンス総裁は9月9日にニューヨークで講演し、「ディスインフレの強風が吹き荒れている」と述べている。
(ブルームバーグ Michael McKee)産経新聞
まあ、反リフレ派には、こういった記事を書く「危機感」も持ち合わせていないのだろう。余りにも奴らの記事は、世界の循環的な景気、経済に対応した政策をみていない。ことあるごとにグローバルがどうのいう割には、見落としがある。ま、彼らは毎度のことで、でたらめ経済学をまっとうであると主張するだけで、データの読み方も政策にあることもみれないのだからな・・・・。
10月27日(ブルームバーグ):ヘッジファンド運用者のデービッド・アインホーン氏は米リーマン・ブラザーズ・ホールディングスが砂上の楼閣にすぎないと見抜いた。
破たん前のリーマン株を空売りしていた同氏は今、ひとたび金利が上昇し始めたら「日本が政府のデフォルト(債務不履行)かハイパーインフレ的な為替相場の死の循環を免れる道があるとは思えない」と話す。リーマンはともかく、日本の国がつぶれるというのは怖い話だ。
アインホーン氏が率いるグリーンライト・キャピタルは大幅な金利上昇に備えるオプションを購入している。同氏は根拠なき低金利を支えにしてきた債券相場の暴落という現象を見込んでいる。
日本のデフォルトというのはありそうもない話ではある。日本は20年間、そのような予想を裏切ってきた。増税によって15兆ドル(約1400兆円)の個人金融資産を吸い上げることもできるし、最悪の場合は国有資産を売却することも可能だ。日本政府は危機管理のエキスパートなのだ。
しかし、2010年に債券利回りが急上昇するという見方にはより根拠がある。今後1年の間に、日本の市場金利は恐らく大幅に上昇するだろう。
日本銀行は政策金利を引き上げないだろう。問題は債務だ。日本の公的債務の水準は既に国内総生産(GDP)の2倍に近く、先進国中で最悪。だからこそ、ハイ・フリークエンシー・エコノミクスのカール・ワインバーグ氏をはじめとするエコノミストらは日本国債の格付けをジャンク級(投機的格付け)に引き下げない格付け会社の「犯罪的な怠慢」を責める。対GDP比の債務比率が200%を突破すれば、このような議論は勢いを増すだろう。
驚異的
日本がこれまで債券市場をうまくコントロールしてきたのは驚異的だ。圧力釜状態の債券市場を抑え込んできたのは、世界がリセッションにある中で中国が達成した8.9%成長と同じくらいの偉業だ。
日本国債の9割以上は国内で保有されている。円資産から資金が逃避するリスクはない。しかし、国債は銀行や保険会社、年金基金、公的機関、それに個人と、誰にとっても中核資産だ。国債利回りが上昇すると、民間企業の資金コストも上昇して企業は打撃を受けるし、債券を買い持ちにしている銀行の体力は弱まる。
日本の大手生命保険会社は回復の勢いが弱いとの予測を理由に国債を買うと言っているが、実のところ買い支えることにより利回り急上昇を防ごうとしているのだ。成長の弱さが国債利回り上昇を抑えるという議論もあるが、景気が悪ければ税収減と失業増で国債増発は必至で、こうした見方はあまり説得力を持たない。
不思議
日本の10年国債の利回りがわずか1.38%なのが不思議だ。事実上のゼロ金利と債務が膨大かつ膨らみつつあるという状況が同じ米国の10年国債利回りは3.50%。円は世界的な準備通貨ではないし、人口構成の動向も財政見通しにマイナスだ。格付けも最上級の「トリプルA」ではない。なのに、日本の方が米国よりも長期金利が2ポイント以上低い。
出生率低下と債務増大は、海外投資家が日本に投資しない理由だ。アインホーン氏は今月20日、ニューヨークで開催された「バリュー・インベスティング・コングレス」で、債務が増え高齢化が進む「日本は既に引き返せない地点にいる」と述べた。
それは言い過ぎだとしても、好きなだけ債務を増やせる日本政府の能力は、来年試される。今までうまくいっていた戦略の前に、前代未聞の状況に陥っている財政の現実が立ちふさがるかもしれない。日本がリーマンにならないことを望みたい。(ウィリアム・ペセック)
(ウィリアム・ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)
そんなに不思議なことだろうか?おいらにはそれがよく分からん。長期国債の名目金利は、引き受け手が米国の場合、貿易収支が恒常的に赤字であるため、他国の貿易収支が黒字国が資本収支として赤字になるように民間あるいは政府が買っている。国債以上が海外にある。長期金利も高めに設定しなければ、需要側が納得せず為替レート変動によるリスクも負わなければならず、海外市場で裁けないだろう。
一方、日本の国債は民間がほぼ吸収している。需要側に為替レート変動不安がなく不安定ではないのである。これは、長期のデフレの影響で、金融資産について民間銀行、生命保険などの機関投資家、年金基金などの運用機関にとって国内での上昇傾向の強い確実な金融投資対象が少なすぎることが原因である。
平均株価はゼロ金利でも長期で見たとき、マネーサプライの増加が非常に少ないからそれほどの上昇はしなかった。海外で輸出産業が、特に自動車関連が海外の成長率に依存し、外需が拡大したためのデフレ下での景気拡大によるデフレ解消と平均株価の上昇があったぐらいである。
よって、日本の国債市場では長期金利は需要側がしっかりしていて、供給が多くても流通利回りが低く、名目の金利も低く設定され長期金利の上昇もほとんどありえなかったと考えられるのではないか、と思う。
為替レートの変動は、貿易量と資本の金利差、そして、国内の流通通貨量と流通速度によってきまる。おおざっぱにいって、貿易の純輸出が増えれば、外国が円を購入することと等しく円高。
資本の金利差は、実質で見るか、名目で見るかによって変わるが、期待実質金利=名目金利-物価上率だから、デフレであれば実質金利は上昇し、インフレであれあれば期待実質金利は下落する。短期的な投機筋、金融商品の売り買いで運用益を上げようとするものとっては、名目が重視されるのかもしれないが・・・。長期的な直接投資によって収益を上げようとするときは期待実質金利によって情勢が変わるのだろう。ともあれ長期ではインフレ率、あるいはデフレ率によって金利差が生じるので、デフレ国では、長期的にはその通貨は上昇するだろう。よって、円高要因となる。だが、年度ごとの経常収支、つまり貿易収支は資本収支と等しいので、純輸出が増えれば、資本収支は赤字となり、資本は流出する。長期的に見れば、これが原因でのレートの変動は、少ないのかもしれない。
最後の通貨の流通量は、長期でみれば為替レートに大きく影響する。単純なことで、経済規模に比較して流通量が多い国の通貨は安くなる。流通量が多ければその通貨の価値が、相対的に低くなるのだから当然のことである。通貨の流通量を絞るのが金融の引き締め、それを多くするのが緩和であるから、為替レートは、中央銀行が掌握する能力があるということである。よって、相対的に緩和に熱心な国とそうではない国との為替レートの変動は、緩和姿勢が明確であれば長期ではその国の通貨の価値は下がるのである。
米国は、国内消化より海外に債務を負っている。債務の価格は、名目価格であるが、レートの上下によって変化する。ここに例をあげれば、米国の海外債務が、1ドル=100円のレートによる100ドルであったとしよう。1ドル=90円のドル安円高となったとすると米国の海外債務は、円に換算すると安くなることになる。よって海外債務を減らすには、通貨価値が下がったほうが返済償還しやすくなるのである。米国政府にとってドル安は、海外債務の価値を下げることになり、好都合である。
ドルは基軸通貨であるが、その基軸通貨の発行権益は米国が握っている。つまり基軸通貨発行権益を一国が握っていることになる。ここから米国が国債を発行しまくって、対外債務を増やし、ドル圏を広げれば、米国の支配が強まるというドル帝国の構想や、米国の覇権主義の謀略説である。なるほどこの説には一定の評価が与えられる。かつてのネオ・コンサーバティズムにはこの種の政治的覇権主義がみられた。しかしながら、これは少なくとも経済学的には実現できない。年間の対外債務額は、純輸出額に等しい。米国は、いまだに債権国ではなく、輸入の方が輸出より大きい国である。だから、米国はドル安の方が、都合がよいのである。輸出と輸入の貿易収支は、貯蓄と投資と財政収支(税収ー支出)の差額に等しい。米国が、貯蓄つまり所得のうち消費を差し引いた額が投資に比べて大きく、財政収支が黒字になれば、貿易収支は黒字へ傾き、それに等しく輸出から輸入を差し引いた額が大きくなる。現状では、米国への資本の流入が、財政赤字が大きく作用してるからだろうか、起きているのである。
日本国政府がどれだけ借金しても絶対に日本は倒産しないと言うことのサルでも分かる説明
基本的には大まかに賛成の記事なんだけど、かなり荒っぽいなぁとはおおざっぱな筆者でも思う。財政の破綻問題で、よく引き合いに出されるのが、ドーマの定理である。筆者のようなものでも知っているのだから、マクロの経済の「常識」なのかもしれないが、長期の国債の名目金利が、名目の経済成長率を上回り続けると破綻の危機があるという定理である。ただし、いつ破綻するかは、この条件下では分からない。
名目金利は、国債の金利で、国債の残高に対する名目の利子率である。政府の税収は税率が一定ならば名目経済成長率分増えることになる。この増加分を補填していけばいいということになる。毎年の名目成長率がプラスであり続ければ、財政破綻は長期で見ればそれほど不安視しなくてもいいということである。
しかし、地方債も合わせて1000兆円もある国債、地方債償還を考えたとき、税収だけで返却していくというのもかなり妙な話である。国債償還は、現役世代へ若い者たちへの付けの繰り延べである。それだけではなく、税収とは違った方法で徴収がされる年金や健康保険も若い者たちの負担が増えることになる。
バブル崩壊後の90年代からほとんど経済成長はない。平均して1%ぐらいのことである。これはOECD諸国の中でも最低の水準である。これでは、所得の増加も望めず、家計か企業のどちらかへの再分配方法しか行財政議論の俎上に上がらず、国債地方債の償還もままならないこと、年金や健康保険の負担率も高くなるのは当然のことである。一般に欧州は高負担、高福祉であるといわれ、米国は低負担、低福祉であるといわれるが、そこには隠された前提がある。90年代以降の経済成長率、つまり国民所得の伸び率がほとんどない国と3%程の成長率がある国とを比較して年金などを含めた負担と福祉の議論をしているに過ぎないと考えるべきである。