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[東京 15日 ロイター] 福田慎一・東京大学大学院教授(専門:金融論、マクロ経済学、国際金融)は15日、ロイターとのインビューで、復興国債の財源として日銀による国債直接引き受けを行うことは、将来的なインフレを招き、その際には急激な引き締めという痛みが伴う可能性が高いと指摘した。

 また日銀が100兆円規模の国債をすでに保有している状況で、追加的に10兆円程度の国債を保有しても景気浮揚効果はすぐには期待できないとも述べた。一方で増税による財源確保は、経済への悪影響が予見可能であり、その対処も含めて政策として道筋が立てやすいとした。

 より重要な問題として、復興財源として10兆円単位の日銀引き受けは1000兆円規模の日本の公的債務から見れば小さな金額であり、復興財源よりはるかに大きい借金を背負っている中で、全体のバランスとして財政あるいは日銀の行動を考えるべきだとの考えを示した。

 日銀の役割として、デフレが10年以上続く中で、現在の日銀が掲げている望ましい物価水準は低すぎるとし、もう少しインフレ許容度を高めるべきと注文をつけた。 

  <日銀引き受けによる影響は予見不能> 

 福田教授は復興国債の財源として、増税でも日銀引き受けでも、どちらも痛みを伴うことは同じと指摘。ただどちらも当面はそれが見えにくいと説明。それでも将来の影響が予見可能な増税の方が対処方法も検討できることから、痛みを最小限に抑えることができるとした。 

 財源を増税に求める場合、当面は公債発行でまかなうため、経済への影響は出ないが、将来の増税の痛みが出てくる。ただし、「どういうマイナス効果がでるのかわかっているので、経済政策として道筋をつけて実行しやすい。増税のタイミングをどうするかは課題だが、経済学で言われているのは、一気に増税するのではなく、徐々に引き上げていくということ。それさえ気をつければコストは最小限にとどめることができる。政策としてはこちらが常道だ」とした。 

 一方で日銀の国債直接引き受けの場合にも、「現在は流動性のわなに陥っているために、資金供給してもすぐに日本経済に影響は出てこないため、当面痛みはわかりにくい」としながらも「流動性のわなが終わるときにインフレが生じる。そうなった場合には、大量の資金を放置できなくなり、急激に資金を吸収する必要がでてきて、その際に金利上昇のコストもかかってくる」と指摘した。 さらに日銀引き受けの場合には、「その影響も含めてよくわからないことが多く、採用には慎重になるべき」だと指摘。「この10年、日銀は海図なき航海を続けており、手探りで緩和を行ってきた経緯がある。うまくいったもの、うまくいかなかったものがあり、今となっては反省点もある」という状況の中で、日銀引き受けが必ずしてもインフレをもたらすとは言い切れないものの、不確実性が高く、場合によってはコストが大きい帰結をもたらすというのが過去の歴史からの教訓だと慎重な考えを示した。

  <復興財源よりも巨額の公的債務の方が問題> 

 福田教授はまた、深刻な日本の財政状況のもとで、復興財源だけが議論になっていること自体に疑問を呈した。「国・地方合わせて公的負債の残高は1000兆円を超えており、そのこと自体がより深刻な問題」と指摘。「それに比べて、10兆円単位の日銀引き受けがどの程度の問題になるのか。すでに日銀は100兆円規模の長期国債を保有している。復興財源よりはるかに大きい借金を背負っている中で、全体のバランスとして財政とか日銀の行動を考えるべき」と述べた。

 その上で、これ以上の財政拡大に懸念を示した。「中央銀行は目先の利益で行動してはいけないという大原則がある。政権が不安定化してくると、政府は目先の景気をよくする政策に傾きがちになる。そういう中で、中央銀の国債引き受けも行われハイパーインフレになった経緯がある」と指摘。「10年以上デフレが続いていて、なかなかデフレを脱却できないという中、ひとつの起爆剤を日銀に求める人もいるが、日銀が引き受けによりこれ以上の国債保有を増やすのは効果が限定的な割にはリスクが大きすぎる」と述べた。 

  <今回の円高に金融政策での対応は無理> 

 欧州での財政問題の広がりや米国景気への不安をきっかけに円高が進んでいるが、デフレが円高を招いているとの見方から金融緩和の必要性を主張する意見もある。しかし福田教授は、「為替変動にとって重要なのは金利差。日本は金利がゼロにはりつき、長期金利も低いので動かしづらい。相手国の金利が上下してそれにあわせて為替が動いているのが現状で、日本の政策でなかなか円安誘導はしにくい」として今回のように海外要因による円高に対し、金融政策での対応は無理があると指摘する。

 ベースマネーを増やして円安誘導に成功した事例として過去における量的緩和時代に円キャリートレードが誘発され円安誘導できた面があった。「円キャリートレードを再び起こせば円安誘導はある程度できるかもしれないが、それをしたことで当時どれだけ良いことがあったか。若干円安に振れたという意味ではよかったが、副作用もそれなりにあった」との見方を示した。 

  <日銀はもっとデフレファイター的スタンスを> 日本経済が10年以上デフレに悩まされている現状について、福田教授はマネーの循環に問題があると指摘。 

 「現在の金融市場ではマネーの回り方にかなり問題がある。1400兆円の個人金融資産の半分以上が銀行預金となり、かつては貸出から設備投資に回り経済が成長してく仕組みだったが、現在は、貸出に回らず国債の購入に回っている。国債購入でまかなったお金はさほど生産的ではない使われ方をするために成長に結びつきにくい」と説明。この悪循環を断ち切り生産性の高い分野にマネーを回す仕組み作りに力を入れるべきとした。

 ただ一方で、デフレに対する日銀の姿勢にも注文を付けた。望ましい物価水準として日銀が公表している「物価安定の理解」では消費者物価0─2%、中心は1%としているが、福田教授はこれは「先進国では最低水準。日銀は物価を許容する度合いをもう少し持っても良い」として、デフレファイター的なスタンスがやや足りないと指摘した。
  

(ロイターニュース 中川泉、木原麗花;編集 宮崎亜巳)

[東京 8日 ロイター] 岩田規久男・学習院大学教授はロイターとのインタビューで、復興国債は、その全額を日銀が政府から直接引き受けるか、ないしは、市場からの復興国債同額の長期国債を買い入れることで財源とすべきだと主張した。

 <増税での財源確保は逆効果、日銀引き受けなら確実な需要創出>   

 政府は増税を視野に復興国債の発行を検討しているもようだが、岩田教授は「増税での財源確保は需要を抑制し、復興には逆効果となる。一方、日銀買い入れは、財政支出増加とマネー増加という2つの経路を通じる需要創出効果があるので、経済効果は格段に大きい」とした。 

 同教授は、買い切りオペと直接引き受けの効果の違いについて、買い切りオペでは日銀に復興国債と同額の長期国債購入を義務付けられない点と指摘。

 「政府から直接引き受けるには、財政法の例外規定を適用できるので、復興国債を日銀に買いとらせることが可能になるが、市場から日銀がどの程度長期国債を買い入れるかは政府が指示できるものではなく、日銀の判断にゆだねられてしまうので、実効性は不透明」とした。

 市場からの買い入れの場合でも、復興国債全額を買い入れる場合であれば、直接引き受けと効果は同じだとした。

 <過去の引き受け事例が超インフレもたらしたとは言えず>

 日銀自身は、国債引き受けがハイパーインフレを招くと警戒姿勢を示している。白川方明日銀総裁は、昭和恐慌からの脱出をはかるため日本で最初に国債引き受けを採用した高橋是清を引き合いに「市場によるチェックを受けない国債引き受けという行為自体が最終的な予算膨張という帰結をもたらした」と指摘している(5月28日、日本金融学会での講演)。しかし岩田教授は1930年初頭の高橋財政時のデータから「インンフレ率は最大で6.5%となったが、最後の2年間は2%でしかない。平均的には穏やかなインフレといえる。しかも実質成長率は一番良いときで10%」と指摘。「世界各国が大不況で四苦八苦するなか、いち早く恐慌を脱出。マクロ政策としてこれほどの成功例はない」と評価している。

 その後インフレとなったのは、「1935年ごろに経済が巡航速度に入ったため、高橋は財政支出や軍需支出を減らすと主張し始めたために、36年のニ・ニ六事件で暗殺されてしまった。その後、軍部のいいなりに軍事支出を日銀引き受けでまかなうことになってしまった」ことが原因だと説明し、高橋是清の国債引き受け自体をインフレ要因とする理解はは誤りだと指摘する。 

 現在の局面での引き受け実施の場合について、「デフレを脱却してインフレ率が5─10%以上になっても日銀引き受けをやめないというのであれば、インフレ率が大幅に上がり、金利暴騰もありうる。しかし、「そこまで政府も日銀も良識がないはずがない」と指摘。

 実際に、米国がリーマンショック以降に巨額の国債を買い入れてもインフレになっていない事例を指摘。インフレ誘発を怖がり、その懸念を広めている日銀の主張に論理的な根拠は薄いとした。

 <デフレが円高をもたらす>

 需給ギャップを抱えてデフレに陥っている現在、何より重要なのはインフレ予想を高めることで、設備投資や消費を刺激、円安をもたらすことが可能となると指摘。

 「デフレというのはもっているだけで通貨の価値があがることだ。デフレで円の価値が上がれば、円に対する海外の需要は増える。予想インフレ率は、アメリカは2%ちょっとで、日本はマイナス。日米予想インフレ率差がなくなると、30円くらいの円安となり、1ドル=110円くらいになる。3月の大震災後の円急騰は日本の震災でデフレ予想が高まったためで、デフレで説明できる。デフレと円高は同じことの両面だ」と説明した。

 その上で、同教授は「デフレ脱却は金融政策ではできないというのが日銀理論。そういう中央銀行はいらない」と日銀の姿勢を批判。「スウェーデンはリーマン・ショック後、デフレになったが、マネタリーベースを4倍増やしている。それでインフレはやっと2─3%の間。日本はどれだけ増やしたか。リーマン・ショック前より最大で10%しか増やしていない」とさらなる対応を求めた。

 このインタビューは7日に行った。

 (ロイターニュース 中川泉;編集 佐々木美和)

ローレンス・H・サマーズ

 [ケンブリッジ(米マサチューセッツ州) 12日] 米国は2008─09年に政策を総動員することで金融の崩壊と恐慌を巧みに防いだが、国内経済はまだ失われた10年の渦中にある。

 2006年第1・四半期─2011年第1・四半期の5年間の平均経済成長率は1%に満たず、バブル崩壊後の日本と似たような状況にある。この間、就業率は63.1%から58.4%に低下。就業者は1000万人以上減った。景気の底打ち後も就業率はほとんど変わっておらず、最近は景気減速の兆しが出ている。

 生産が潜在力を下回る状況が長期化すれば、雇用や所得ばかりか、未来も犠牲になる。今月、かつては想像できなかった規模の新卒生が、仕事や生活手段がなく、親元に帰った。全米の学校で予算が不足し、数学や科学の高等課程が減り、週4日しか授業が行われないケースも出ている。現在と将来の所得・税収減は、現在と将来の容認しがたい財政赤字の大きな原因となる。 

 処方箋を書くには、正確な診断と病因の理解が必要だ。景気後退とは、企業の生産物に対する需要が少な過ぎ、求職者全員を雇用できない状態だ。現在のような高失業期には、明らかに企業の採用需要が不足しており、労働者の勤労意欲が不足しているわけではない。

 現状をみると(1)離職率や求人数は過去最低に近い水準にある、(2)技能や学歴にかかわらず、ほぼすべてのグループで失業率が上昇している、(3)利益率の上昇と賃上げ率の低下を考えると、労働者ではなく雇用主がほぼすべての市場で力を持っている──ことがわかる。 

 私は、生産が潜在力を下回る根本原因は需要の不足だと常々訴えてきた。需要の大切さを見落とすと、大変なことになるからだ。

 フランクリン・ルーズベルト大統領は、ヒトラーの台頭とそれに伴う軍需の拡大がなければ、1941年初めに失政者として退陣していただろう。国内失業率は15%を超え、ニューディール政策で道筋をつけた景気回復も、1937年には財政赤字削減とインフレ抑制という従来的な価値観を主張する声が早々に上がり、経済に希望が持てなくなっていた。 

 私が1993年にクリントン政権に入った頃、日本の潜在成長率は4%で、現在までに国内総生産が2倍になるとの見方が一般的だった。実際には、バブル崩壊の後遺症で日本経済はほとんど成長していない。 

 需要に制約された病んだ経済は、通常の経済とは全く違う動きをする。通常であれば成長と雇用創出につながるはずの政策が、ほとんど効果を発揮しない、もしくは逆効果になる場合がある。需要に制約された経済では、潜在的な供給を増やしても、効果は期待できない。 

 景気が後退し、消費者が借り入れの縮小と貯蓄の拡大に動けば、需要が減り、その結果雇用も減る。所得の高低を問わず、職業訓練や啓発プログラムは個々人の就職には役立つかもしれないが、需要の制約が続く限り、全体の求人数には影響しない。非常に逆説的なことに、生産性や効率性の改善につながる対策は、需要も同時に喚起しない限り、就業者の減少につながる恐れがある。全体の生産水準は、引き続き需要に制約されるためだ。 

 米国ではこれまで、景気後退に陥っても、需要の急増で景気が力強く回復するケースが多かった。第2次大戦後に起きた深刻な景気後退は2回のみ(1974─75年と1980-82年)で、どちらの場合も2年以内に経済成長率が6%以上に達した。これは今では想像もつかないような高成長だ。何故だろうか。 

 従来、戦後の米国ではインフレが景気循環を決めてきた。景気は、連邦準備理事会(FRB)がインフレ抑制に動くまで回復を続け、ときには成長ペースが加速した。FRBがインフレを懸念し始めたときには、すでに手遅れの場合が多く、金利を引き上げ、与信を制限し、住宅市場、設備投資、消費者の耐久財購入を阻害することで、景気後退を発生させた。インフレが落ち着けば、大幅な利下げと、それまで手控えられきた投資の再開で、景気が急回復することは、目に見えていたといえる。

 現在は事情が大きく異なっている。金融政策は以前に比べ慎重になっており、インフレ率の上昇やFRBの利上げで景気の拡大が突然遮られることはなくなった。ポール・ボルカー元FRB議長がインフレを鎮圧して以降、3度にわたる米国の景気拡大期は、すべて長期間継続している。景気拡大に終止符が打たれたのは、自信の過剰で資本資産価格が過度に上昇し、保有資産の評価額が上がり、借り入れ・貸し出し・支出が過度に膨らんでからのことだ。 

 バブルの崩壊後は、うっ積された投資の需要がない。過度の自信が残した余剰資本があるだけだ。空き家、テナントの入らないショッピングモール、納品先のない工場。同時に、消費者は期待していたほど自己資産がないことに気づく。借金の担保が不足し、返済が予想以上に厳しくなったと感じる。これでは、民間消費が激減しても不思議ではない。バブル崩壊後の景気下降は10年以上続くことがあり、軍備増強など外的な要因で初めて脱却できるケースがあるのもうなずける。   

 民間消費は、構造変化にも圧迫されている。非常に分かりやすい例が出版業界だ。商店街の本屋が大型書店との競争に敗れ、大型書店がオンライン書店との競争に敗れ、オンライン書店が電子書籍との競争に敗れた際に、2つのことが起きた。経済の生産力が増す一方で、生産能力を満たす需要を生み出す力が損なわれた。経済資源が、小売り・卸売り業界で働く支出性向と成長余力の高い中間層から、支出性向が大幅に低い層に移ってしまったためだ。流通網への設備投資の必要性も低下している。

 ではどうすればいいのだろうか。運命だとあきらめたり、二大政党が平時に推し進めてきた政治的な課題について論じている場合ではない。金融危機の最大の皮肉は、自信・借り入れ・貸し出し・支出の過剰で発生した危機は、自信・借り入れ・貸し出し・支出の回復がない限り、解決できないということだ。 

 したがって、持続的な回復が定着するまで、経済政策では、自信・借り入れ・貸し出し・支出の拡大を優先目標とする必要がある。この目標を達成するまで、他の政策は効果が期待できない。平時にどれだけ魅力的、効果的にみえてもだ。 

 インフラの整備や更新を先延ばしにする経済は誤った経済だと認識すべきだ。10年物の金利が3%を割り込み、建設業の失業率が20%に迫っている今こそ、インフラ投資を拡大すべきだ。

 金融政策の軸足を適切な需要確保から、将来のバブル・インフレ予防に移すのは、あまりにも早すぎる。基調インフレ率は依然低下傾向にあり、自信過剰よりも、借り入れ・投資の不足が大きな問題となっている。金融規制改革法は、金融危機の再発を防ぐという極めて重要な課題に概ね適切に対処した。精力的な実行が必要だ。ただ、今の問題は、自信過剰ではなく自信過少であり、政策でもこの点を重視すべきだ。 

 最も重要なのは、米国の信用力に対する最大の脅威は、低成長期が長引くことだという現実を財政議論で受け入れる必要があるということだ。低成長期が続けば、南欧のように財政赤字の対GDP比が急上昇する。歳出抑制と歳入拡大に向けた中期的な対策をめぐる議論は必要不可欠だが、同時に短期的な経済成長も重視する必要がある。大統領と議会が昨年秋に合意した給与税減税・失業給付延長がなければ、米経済は今日、二番底のリスクに直面していた可能性が十分にある。財政面からの需要喚起を2011年末で大幅に縮小するのは早すぎる。財政面の支援は継続すべきであり、実際には、給与税の従業員負担分だけでなく会社負担分も減税して、支援を強化すべきだ。従業員負担分の減税幅を2%から3%に引き上げることも望ましい。短期的なコストは2000億ドル強で、そうした対策により、経済が今後2─3年で大きく改善し、税基盤の大幅な拡大と政府の必要支出の減少につながることが期待できる。 

 他の次元の政策でも、米国経済を特徴づけている需要不足という問題を考慮することが適切だ。例えば、オバマ政権は、輸出管理の近代化、米国製品の海外での売り込み、貿易協定の締結・発効を通じて、輸出を促進するという重要な仕事をしている。査証(ビザ)政策を変更すれば、観光・教育・医療サービスの輸出促進など、この点でさらに多くのことが達成できる可能性がある。同様に、不必要な規制負担の軽減を命じた大統領令を厳格に実行し、自信を取り戻すべきだ。

 おそらく、米経済の底にある一番の強みは回復力だろう。米国は2008─09年に思い切った対策を講じることで、大恐慌を回避した。今度は、経済の現実を見据えることで、失われた10年を回避することができるはずだ。

(ローレンス・H・サマーズ氏はハーバード大学教授。元財務長官)

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産経新聞 5月12日(木)16時33分配信
内閣府が12日発表した4月の景気ウォッチャー調査によると、街角の景気実感を3カ月前と比べた現状判断指数は前月比0・6ポイント上昇の28・3となり、2か月ぶりに改善した。家計関連で自粛ムードが弱まり購買意欲が上向きになったことを反映した。2~3カ月先の見通しを示す先行き判断指数も11・8ポイント改善の38・4となり、東日本大震災による落ち込みから明るい兆しも見え始めている。

 現状判断を項目別で見ると、家庭関連は1・8ポイント改善の27・1。このうち飲食関連は20・7となり、3月から4・8ポイント改善した。小売関連、サービス関連も改善しており、調査員からは「4月に入り、3月の落ち込み分を回避することができている」(北関東のレストラン)などの声が寄せられた。

 一方、企業関連は1・3ポイント悪化の29・3、雇用関連も3・5ポイント悪化の33・8だった。調査員からは「自粛ムードの中でファッションに対する消費マインドは完全に冷え込んでいる」(南関東の繊維工業)などの声があった。


 自粛ムードが弱まってもね、もともと名目の成長率が低いマクロでの経済社会で、その総額は、国民所得、一人頭の国民所得に依存する消費総額が減少するのは当然。
 
 で、あるから大震災による総需要の不足、総供給側の震災被害による供給不足によって、名目経済成長は縮小することは目に見えている。その額の試算は、20兆から30兆であるとも言われている。この不足分を埋める財政出動と需要不足を補えるだけの長期国債の買い取り、もしくは引き受けによる通貨供給による「実質金利」の緩和がされることを希望したいが、マクロ経済音痴が支配する財政赤字を言い募る「有識者」の述べる増税による被災地区支援の「説」が、為政者には支配的だと見えるから、早期の復興は困難。多くの被災者が、減収、解雇されるだろうから、総所得を構成する就業者数も減ることが予想される。となれば、東北地区の所得はかなり縮小され、それに伴い長期的な消費、長期を見込んだ投資も減少することが予測できる。
 
 長期国債の日銀引き受けに反対するいわゆる「専門家」が多いだろうが、非常時には薄く、広く、そして長く、負担感が直接的でない「国民」負担をお願いするのが政策担当者としてまずはすべきのふるまいではないだろうか?! あるいは、直接の引き受けするのは、危険が多いというのならば、金融機関から長期国債、東北の地方債を買い上げる手段を講じてもいい。地方銀行に資金供給するのだから、震災による融資焦げ付きを政府ではなく、中央銀行が吸収するのである。

 
 かなり以前から財政難で苦しんでいた東北の地方債、市債、を地方金融機関を通してでも買いつけることも「非常時」政策手段として用いられてはどうか?おそらく反対者の意見は、まだ起こってもいない「インフレ」懸念を持ちだして反対するだろうが、震災被害が20兆円ほどもあるのなら、需要の不足、設備被害による供給量の不足があるのだから、インフレが起きる懸念などほとんど無いと考えるのが妥当だ思うが、どうか?!財政ファイナンスのメッセージを「市場」に送ることになり、国債の信認を得にくくなるから長期国債の購入は控えるべきだとの専門家、エコノミストたちの見当はずれな反対意見を散見するが、であれば、中央銀行が異常にバランスシートの拡大を図っている米国の長期国債の金利は異常に上昇しているのだろうか?長期国債の金利が、日本においてそれほど高くなっているのだろうか?財政破綻懸念が強ければ、今のギリシャなどのように金利が異常に上昇するはずである。国債の金利が財政破綻懸念で上昇するのは、その国債の買い手が国債償還について非常に懸念する、信用を置かないから購入しないから国債の価格下落を通じて流通利回りが大きくなるから起きるのである。
 日本の国債の金利は高いだろうか、また米国の長期金利は異常に高くなっているだろうか?そうではない、投資家たちは米国債に信認を置いているから買っている、だから、ギリシャの国債のように金利が高くはなっていない。財政赤字は、ただちに国債信用を棄損するものではない。市場は、日本の国債に対しても、米国債に対しても信認しているのである。但し、日本の長期金利の低さは、デフレによる実質金利の高止まりから、投資活動によって得られる「利益率」は非常に低いものになっているからが主たる原因だと思う。企業の投資利益率が非常に低いから、金融機関は企業に融資を控え、融資によるリスクテイクをするより、長期国債を購入した方が金利分が確実に稼げるから、長期国債を購入することになっている。つまりは、企業競争を通じてデフレーションの圧力が強ければ、企業、供給側は、収益率が低くなるのから、金融機関としては当然の国債購入動機がはたらいているのである。これが、市中に資金が回らない、金融機関の金余りの現象の主因である。

 「経済的」復興支援の方法は、幾らでもあるし、幾らでも政策手段がある。そしてそれは他の制度変更、希望を持ってもらう雰囲気作り、原発の事故による人的被害、それに対する人的対処、風教被害などに対する人的対処にひきくらべて、それほどの労力は必要ないではないか。

 
 もうそろそろ気がついてもいいんじゃないのかと思う。失われた20年の名目経済成長率の低さが、雇用者の賃金の低下は、ほぼ
雇用者全員の賃金が低下している
ことに表れているということ、その主因はデフレであってそれ以外に原因は考えられないということ。これじゃ消費、総需要の一つも逓減していくのは納得できる。
 
 
日銀:審議委員候補に白井慶大教授 政府提示


白井早由里・慶応大総合政策学部教授
 政府は、日銀政策委員会の審議委員候補として白井早由里・慶応大総合政策学部教授(48)を国会に提示した。白井氏は国際経済が専門で、1993~98年には国際通貨基金(IMF)でエコノミストを務めた経験を持つ。財政不安を抱える欧州経済や中国・人民元の問題に精通しており、市場では「世界経済の不均衡是正などについて議論が深まる」と期待の声がある。

 白井氏は、3月末に2期10年の任期を終える須田美矢子審議委員(62)の後任。国会で人事案が承認されれば、審議委員6人のうち1人が女性という体制が続くことになる。

 【略歴】白井早由里(しらい・さゆり)1989年慶応大大学院修士課程修了、93年コロンビア大大学院博士課程修了。IMFエコノミストなどを経て、06年から現職。07~08年にパリ政治学院客員教授。
毎日新聞 白井早由里・慶応大総合政策学部教授の見解こりゃあひでえというマクロ経済の見方する人だとお見受けする。
 
 東北大震災の被災者の方には深く哀悼の意を表する。これからの復興に期待したい。
自民党中川秀直が、「東北の希望の復興」として復興支援の日銀を使った資金作りと支援策を大胆かつ繊細に提言している。秀直に対する好悪は別に、こういった災害時に現実的な再建策を述べることができることは「政治家」「政治家」たるの条件だと思う。
世界第二位の経済大国は日本に代わり中国になった。日本は42年ぶりに転落した。中国の名目GDPは20年前、日本の1割強だったが、ここ10年間で4倍強となるなど、その成長はたしかに凄い。しかし、情けないのは日本だ。ここ20年ほど先進国中の最低ランクでまったく成長していない。1991年度の名目GDPは474兆円であったが、2009年度は474兆円と同じ水準なのだ。G7の他の先進国では、名目GDPは年率4.5%程度の成長をしている(下図参照)。


 仮に1991年以降、G7の他の先進国と同じ経済成長率であったら、2009年度は1028兆円となっていたはずだ。つまり、失われた20年がなければ、今の給料は2倍以上になっていたのである。この20年間で失われた付加価値総額は5000兆円以上にもなる。国民一人あたりの逸失所得は4000万円以上だ。これだけ長期停滞が続けば、日本経済の世界に占める地位が低下するのはやむをえない。

 この長期停滞については、日本の構造問題を強調する立場と金融政策の失敗を強調する立場がある。90年代になって急に日本の構造問題が出てきたというのは不自然だ。90年代以降変動相場制が定着し、金利自由が終了したのでマンデル=フレミング効果により財政政策より金融政策の効果があった。にも関わらず、バブル崩壊後に羮に懲りて膾を吹くようにデフレギャップが発生しても金融政策を緩和せず引き締め気味に運営してきたことが原因だとする、金融政策失敗説のほうが説得的だろう。



 1990年代はマクロ経済には効かない財政政策をやり続けた。小泉政権になってこの失敗に気がついたが、金融政策では未だにデフレターゲットをとり続けている( このコラム参照 )。

 菅政権の改造内閣では、与謝野馨経済財政担当大臣や藤井裕久副官房長官が入り、マクロ経済運営は財政再建至上主義に大きく舵を切った。

 もちろん与謝野氏は、口では財政再建は経済成長とムダ削減と同時にやらなければいけないという。しかし、これまでの同氏の実績は、経済成長とムダ削減はやってこなかった。それを以下に示そう。

 まず、経済成長。日本の失われた20年の特徴はデフレによる名目経済成長がなかったことだ。この間の実質経済成長は他の先進国と大差ないが、物価上昇率は著しく日本だけが先進国でデフレだった。経済学では、中央銀行がベースマネーを増やせば物価上昇率が上がるのは常識である。

 ちなみに、2008年のセンター入試試験にもこんな問題が出ている。

 中央銀行が行うと考えられる政策として最も適当なものを以下から選べ
1.デフレが進んでいる時に通貨供給量を減少させる
2.インフレが進んでいる時に預金準備率を引き下げる
3.不況期に市中銀行から国債を買い入れる
4.好況期に市中銀行に資金を貸す際の金利を引き下げる

 もちろん正解は3。ところが、2000年代の現実の日銀は1をやった。この問題は普通の高校生はできるが、日銀総裁や日銀の御用学者やマスコミには難しいらしい。実際に日銀のやったことは、センター試験も落第のデタラメだったので、日本のデータを一見しただけでは、ベースマネーと物価上昇率の関係がよく見えない。


 この話は、与謝野氏の「インフレは悪魔」という発言に関係する。

 2006年3月、日銀が量的緩和を解除したとき、与謝野氏は小泉政権で経済財政担当大臣だった。私は竹中総務大臣補佐官として総務省にいた。量的緩和の解除は消費者物価が安定的にゼロ以上になることだった。その当時、0.5%程度の統計数字がでていた。ところが、消費者統計には上方バイアスという高めに数字がでるクセがある。総務省は物価統計を所管しており、そのクセを知っていたので、竹中大臣は安定的にゼロ以上になっていないと主張し、量的緩和解除に反対だった。ところが、与謝野氏は、それを無視して、量的緩和解除に賛成した。

 要するに、デフレのままでいいと言ったわけだ。それは名目成長はいらないと同じで、与謝野氏の経済成長は失われた20年の継続である。

 増税の根拠とされる内閣府の中長期的試算の前提は名目1.5%成長だ。それで増税を主張する。なお、デフレを脱却すれば名目4%になるが、それだと増税は必要ない(このコラム参照 )。だから、与謝野氏の経済成長とはせいぜい名目1.5%成長までだ。



 次にムダの削減。これは霞ヶ関埋蔵金で有名だ。与謝野氏には埋蔵金はない。というのは会計上の埋蔵金はあるが、それは官僚が使うといえば「存在しない」になる。国民のためにつかう埋蔵金はない、という意味だ。

 自民党政権では与謝野氏の意見は通らなかった。もしその意見の通りになっていたら、50兆円くらいの増税が行われていたかもしれない。

 これでわかるだろうが、与謝野氏の言い方は官僚の詭弁と同じだ。経済成長はするといいながら、デフレ継続で名目成長せいぜい1.5%まで。ムダは省くといいながら、官僚がムダでないといえば、それはムダでない。マスコミでの与謝野氏の露出が高まる中で、こうした言葉遊びさえ指摘できないメディアは情けない。


*** デフレ下でも価格が下がらない新聞 ***
 そもそも大手新聞は消費税増税に賛成なので、あえて指摘しないのだろう。なぜ消費税増税に賛成なのか。それは、昨年11月22日付けの本コラム(丹呉元財務次官の人事、菅・与謝野会談の裏側でくすぶる「増税大連立」もはや「末期症状」の政権は禁じ手に踏み込むのか  )で指摘した財務事務次官の天下りに大いに関係している。

 最近しばしば英国の消費税の話をマスコミ関係者はよくする。実は英国の消費税では新聞は税率ゼロだ。これは欧州でも特殊な存在である。ほかの国はEU指令でゼロ税率を否定しているので、せいぜい軽減税率だ。

 なぜマスコミで英国の話が多いかというと、日本で消費税増税しても、新聞は食料品などともに生活必需品ということで、ゼロ税率(悪くても軽減税率)の適用を受けたいからだ。

 軽減税率は、依怙贔屓の租税特別措置と同じで利権の固まりになる。消費税増税騒ぎの裏側で、こうした利権獲得がはじまっていると考えた方がいい。こうした利権の裏には、必ずといってよいほど天下りがある。前財務事務次官の大手新聞への天下りはその兆候ではないか。

 また、新聞業界では消費税増税の中で軽減税率を勝ち取るかために、欧州に調査団を送っていてるという噂もある。軽減税率になると、相対価格において有利になるので、個別企業としては当然の選択ともいえる。

 もっとも、新聞業界の特殊性はこの際知っておいた方がいい。まず、再販制度という独禁法適用除外のカルテルによってデフレ下でも価格下落が免れている業種だ(下図参照)。こうした再販制度は先進国でまずない。欧州並みに軽減税率を主張するのであれば、再販制度の価格カルテルはやめるべきだろう。




 さらに、新聞の新規参入については、「日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社の株式の譲渡の制限等に関する法律」という商法の特例が障壁となっており、これで新聞社の株式を取得することはできず事実上新規参入はできない。こうした規制もあまり世界にはない。このように新聞業界は競争政策から見ると既得権の保護業種である。競争政策の教えによれば、こうした非競争的な規制業種は長期的には競争力がなくなり衰退していく。私はかつて公正取引委員会に勤務していたことがあるので、そうした事例を数多く見てきた。

 いずれにしても、財務省は、こうした業界特性や個別企業の戦略までも知った上で、マスコミを使って消費税増税ムードさえ高まれば、後は軽減税率に群がって増税反対はなくなると思っている。

 はたしてそうだろうか。かつては新聞を中心とするメディアがほぼ情報独占し、霞ヶ関も記者クラブを通じた情報操作が機能していた。ところが、ネット経由の情報の役割が徐々に大きくなってきた。今回のコラムの従来のメディアでは取り上げられないだろう。しかし、今ではこうしてネットの上で書ける時代になっている。

 菅政権の消費税増税路線が功を奏するかどうかは、国民生活に直結する大問題であるが、メディア論から見ても、既存メディアとネットメディアの攻防とみることもできる。

 なお宣伝であるが、私らの「政策工房」でマスコミの報じないニュースを有料で発信している。ご興味にある方は、こちらにアクセスしていただきたい。
Voice 1月11日(火)17時34分配信
◇政策手段はいくらでも残されている◇

 去る12月3日に臨時国会が閉幕し、同時に、みんなの党が提出していた日本銀行法改正案は廃案となった。同党結党時以来の重要提案であるため、年始の通常国会でも再提出するとのことである。また、民主党においても脱デフレ議連(デフレから脱却し景気回復をめざす議員連盟、松原仁会長)を中心に、さらなる金融緩和と金融政策のルール化への動きが加速しはじめている。

 その一方で慎重論も根強い。しかし、日銀法改正によるインフレ目標・雇用目標の導入や、さらなる金融緩和への批判の多くは、当初提案への誤解に基づいているように感じられる。そこで、あらためて金融政策改革の必要性について整理してみたい。

 第一の批判は、これら政治の金融政策への言及が「日本銀行の独立性を侵犯している」との主張である。これは中央銀行の独立性に関する、完全な誤解である。中央銀行はいかなる意味においても、政府の一部局であることを忘れてはならない。

 金融政策は(じつは金融政策に限らず多くの政策は)、その継続性が市場に信用されることで最大の効果を発揮する。政府が「インフレ抑制のために金融引き締めを一定期間継続する」といっても、それによって景気が悪化し、支持率が低下していったら、政府はその政策を撤回する誘惑に駆られるであろう。方針転換の可能性があるとき、一時的な金融引き締めのインフレ抑制効果は小さくなる。デフレへの対応についても話は同じだ。政策が朝令暮改となってしまわないよう、「ひとたび方針を立てたら、その達成まで政府はタッチしない」ために、中央銀行を独立させるのである。

 その意味で、中央銀行の独立性はコミットメントのための方便にすぎない。経済政策の方針を立てるのは政府でなければならないし、明確な目標設定なしに中央銀行を独立させる意味はない。各党が主張するインフレ目標等を制度化し、中央銀行の独立性をその手段に限定するのは、王道的な議論なのである。

 第二の批判は、これ以上、金融緩和を続けてもデフレ脱却は困難であり、目標設定をしたとして達成はできないというものである。

 しかし、これは信憑性が薄い。経済にはつねに、さまざまなショックが加わっている。インフレショックが生じたときにそれを抑制しないという信認が得られれば、現時点においても大きな脱デフレ圧力となる。永久にデフレが継続するという経済モデルもなくはないが、けっして一般的なものではない。わが国においても2000年代前半には、消費者物価指数ベースでプラスマイナスゼロ寸前にまで到達したことを忘れてはならない。

 インフレ率が1%を超えるまでは長期国債の買い入れ額の増額を続け、2%を超えるまでゼロ金利を継続するとの信用できる宣言を行なう。場合によってはREIT(不動産投資信託)や社債、株式等のリスク資産を買い入れる。政策の手段はいくらでも残されている状態で、極端な懐疑論に陥る必要はない。

◇痛みの緩和のために麻酔が必要◇

 第三の批判は、金融政策だけでは日本経済の問題は解決できないとの指摘である。この点に筆者は全面的に同意である。むしろ、これがどのような意味で「さらなる金融緩和が必要だ」との議論への批判なのか理解できない。

 経済政策は成長政策、安定化政策、再分配政策に大別される。金融政策はこのうちの安定化政策のツールにすぎない。

 成長のための規制緩和は一部への痛みを伴う。その痛みを緩和するためには好景気という麻酔が必要である。そして、貧困問題への対応には予算が必要である。厳しい財政状況をインフレによる自然増収によって少しでも好転させないと、その実現は難しい。必要な、そして根本的な経済政策への準備として、脱デフレが必要とされているのである。

 与党民主党、そしてみんなの党のみならず、前回の参院選では自民党、公明党も類似の提言をマニフェストに掲げてきた。その意味で、金融政策改革は論争の段階から実行・実現のフェーズに移ったといってよい。しかし、日本経済がデフレに突入したのは1997年。はや13年もの月日が流れた。あまりの対応の遅さにはあきれ返るばかりだ。金融政策は、他の多くの国が安定化政策の主要ツールとしていることからもわかるように、政治的な摩擦関連が少なく、比較的実現が容易な政策手法である。

 適切な金融政策だけではなく、日本には財政再建や規制改革など、はるかに政治的実現のハードルが高い政策が要されている。金融政策についてさえ機動的な意思決定ができない状態で、本当に日本経済再生のための一連の政策を実現していけるのだろうか。不安であるというよりも、恐ろしくてならない。
現代ビジネス 2010年12月27日(月)7時5分配信
民主党がどこに向かっているのか、さっぱりわからなくなった。社民党に復縁を迫り、公明党にも秋波を送り、自民党にまで大連立の色気を見せてきた。さらに、今度はたちあがれ日本にも連立参加を持ちかけている。

いまの菅政権とたちあがれ日本とは財政健全化の考えが共通である。この論点は、2010年4月5日付けの本コラム(「大きな政府」で一致する 与謝野・平沼新党と民主党  )ですでに指摘しているが、なんとも民主党の節操がないことがわかる。

ただし、この連立話はたち消えになる可能性が高い。与謝野氏だけが閣僚参加する布石かもしれないが、先の総選挙では小選挙区敗退・比例復活だから合点がいかない。しかし、民主党の財務省主導による財政再建至上主義が明らかになったといえよう。

その伏線は、菅直人総理による消費税増税発言などでこれまでもあったが、2011年度予算の政府案作成過程でついにはっきりとでてきた。それは、2010年12月22日に交わされた野田佳彦・財務相と細川律夫・厚生労働相、玄葉光一郎・国家戦略担当相(民主党政調会長兼務)の三大臣合意文書だ。そこには、基礎年金の国庫負担割合を二分の一について、

(1)11年度は鉄建機構の剰余金(1.2兆円)、財政投融資特別会計の積立金と剰余金(1.1兆円)、外国為替資金特別会計の剰余金(0.2兆円)で賄う、

(2)12年度以降は税制の抜本改革によって財源を確保する、
と書かれている。

この意味は、野田財務相も記者会見で言っているように、もう埋蔵金発掘はやめて、消費税増税でいくという意味だ。そのための法案は、遅くとも2012年の通常国会までに提出されるはずだ。ということは2011年中には、総選挙を行って、増税法案への国民への信を問わなければならない。そうなると政界再編の年になるだろう。

財政健全化を増税で行うという路線は民主党も自民党も大差ない。しかし、財政健全化の手段は増税だけではない。経済成長による税増収もある。実は、このほうが財政再建の歴史からみればオーソドックスな方法なのだ。しかし、なぜか日本ではほとんど忘れ去れている。

現在のようなデフレでは、いくら増税しても財政再建はうまくいかない。これまでの海外における財政再建の事例研究では、名目成長率が高くなったほうが成功している(下図参照)。だから、増税の前に、デフレから脱却して名目成長率を高くすることが重要になってくる。

しかし、26日のテレビ朝日で、仙谷由人官房長官は、このままで財政はたちいかなくなるので、増税が必要と発言した。多くのマスコミも増税といっている。財務省にうまく洗脳されたようだ。







増税の前にやるべきことはデフレ脱却のほかにもまだある。埋蔵金の発掘である。それは歳入確保のためだけではない。埋蔵金を放置しておくと、官僚がそれを官僚組織を維持することに使うからである。そうして官僚主導構図は強固になる。

予算編成でのどさくさ紛れで官僚が既得権を確保したのは、三大臣合意文書だ。三大臣合意の前日の21日、国交省から出された文書「独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備機構の特例業務勘定における利益剰余金等の取扱いについて」の中に、

(1)鉄建機構の剰余金1.2兆円は国庫納付

(2)JR各社に対して0.8兆円の助成金・無利子貸付け

と書かれている。

基礎年金の国庫負担の二分の一については、12月6日付けの本コラム(「基礎年金」財源問題で大騒ぎするメディアはまたまた財務省に騙されている)ですでに書いているが、1.2兆円というのは甘めの数字だ。それ以外にさらに1兆円近くある。ところが、財務省と国交省はそれらを仲良く分けた格好になっている。


*** 官僚のために埋蔵金を流用 ***
 本来であれば、JR共済は厚生年金に統合されているので、全額年金に充てるのが筋であるが、国交省もJRを使って自らの権益を確保したのだ。その結果が、埋蔵金の一部を使ったJR支援になっている。こうして埋蔵金は国民の目が届かない形で官僚機構に使われるのだ。このJR支援スキームが実際に稼働するころ、官僚が天下りやそれに準ずる形で面倒を見てもらうだろう。

こうした埋蔵金を官僚のために流用することは、これまでもしばしば行われてきた。露骨な形では、都市再生機構がかつてニュータウン事業の失敗で1兆円近くの穴を開けたときには埋蔵金が使われて、ひそかに処理が行われたこともある。

それにしても、今回もまた埋蔵金だった。これで2006年予算以来連続5年である。累計で40兆円程度になる。いつも1月~12月までは財務省は「埋蔵金などない」と言い続け、それに乗らざるをえない政治家、マスコミ、学者もみんな「ない」という。ところが、12月の最後の政府案の段階で、財務省は「やはりある」ということになって、再び1月からは「もうない」となる。私は2006年から仕掛け人なので、もう年中行事のようだ。




ところが、来年は、あるないという議論はやらずに「探さない」という方針を決めてしまった。そして増税である。デフレのまま増税するとどうなるのか。デフレ脱却すれば、円高や高失業率も直り、しかも自然増収で増税は必要となってもかなり少なくなる。

そのうえ埋蔵金探しをせずに増税である。これは、「増税・デフレ」vs.「増収・デフレ脱却」という対立軸で国民的に政策論議し、政界再編、総選挙で国民の信を問うべきだ。
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