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世界第二位の経済大国は日本に代わり中国になった。日本は42年ぶりに転落した。中国の名目GDPは20年前、日本の1割強だったが、ここ10年間で4倍強となるなど、その成長はたしかに凄い。しかし、情けないのは日本だ。ここ20年ほど先進国中の最低ランクでまったく成長していない。1991年度の名目GDPは474兆円であったが、2009年度は474兆円と同じ水準なのだ。G7の他の先進国では、名目GDPは年率4.5%程度の成長をしている(下図参照)。


 仮に1991年以降、G7の他の先進国と同じ経済成長率であったら、2009年度は1028兆円となっていたはずだ。つまり、失われた20年がなければ、今の給料は2倍以上になっていたのである。この20年間で失われた付加価値総額は5000兆円以上にもなる。国民一人あたりの逸失所得は4000万円以上だ。これだけ長期停滞が続けば、日本経済の世界に占める地位が低下するのはやむをえない。

 この長期停滞については、日本の構造問題を強調する立場と金融政策の失敗を強調する立場がある。90年代になって急に日本の構造問題が出てきたというのは不自然だ。90年代以降変動相場制が定着し、金利自由が終了したのでマンデル=フレミング効果により財政政策より金融政策の効果があった。にも関わらず、バブル崩壊後に羮に懲りて膾を吹くようにデフレギャップが発生しても金融政策を緩和せず引き締め気味に運営してきたことが原因だとする、金融政策失敗説のほうが説得的だろう。



 1990年代はマクロ経済には効かない財政政策をやり続けた。小泉政権になってこの失敗に気がついたが、金融政策では未だにデフレターゲットをとり続けている( このコラム参照 )。

 菅政権の改造内閣では、与謝野馨経済財政担当大臣や藤井裕久副官房長官が入り、マクロ経済運営は財政再建至上主義に大きく舵を切った。

 もちろん与謝野氏は、口では財政再建は経済成長とムダ削減と同時にやらなければいけないという。しかし、これまでの同氏の実績は、経済成長とムダ削減はやってこなかった。それを以下に示そう。

 まず、経済成長。日本の失われた20年の特徴はデフレによる名目経済成長がなかったことだ。この間の実質経済成長は他の先進国と大差ないが、物価上昇率は著しく日本だけが先進国でデフレだった。経済学では、中央銀行がベースマネーを増やせば物価上昇率が上がるのは常識である。

 ちなみに、2008年のセンター入試試験にもこんな問題が出ている。

 中央銀行が行うと考えられる政策として最も適当なものを以下から選べ
1.デフレが進んでいる時に通貨供給量を減少させる
2.インフレが進んでいる時に預金準備率を引き下げる
3.不況期に市中銀行から国債を買い入れる
4.好況期に市中銀行に資金を貸す際の金利を引き下げる

 もちろん正解は3。ところが、2000年代の現実の日銀は1をやった。この問題は普通の高校生はできるが、日銀総裁や日銀の御用学者やマスコミには難しいらしい。実際に日銀のやったことは、センター試験も落第のデタラメだったので、日本のデータを一見しただけでは、ベースマネーと物価上昇率の関係がよく見えない。


 この話は、与謝野氏の「インフレは悪魔」という発言に関係する。

 2006年3月、日銀が量的緩和を解除したとき、与謝野氏は小泉政権で経済財政担当大臣だった。私は竹中総務大臣補佐官として総務省にいた。量的緩和の解除は消費者物価が安定的にゼロ以上になることだった。その当時、0.5%程度の統計数字がでていた。ところが、消費者統計には上方バイアスという高めに数字がでるクセがある。総務省は物価統計を所管しており、そのクセを知っていたので、竹中大臣は安定的にゼロ以上になっていないと主張し、量的緩和解除に反対だった。ところが、与謝野氏は、それを無視して、量的緩和解除に賛成した。

 要するに、デフレのままでいいと言ったわけだ。それは名目成長はいらないと同じで、与謝野氏の経済成長は失われた20年の継続である。

 増税の根拠とされる内閣府の中長期的試算の前提は名目1.5%成長だ。それで増税を主張する。なお、デフレを脱却すれば名目4%になるが、それだと増税は必要ない(このコラム参照 )。だから、与謝野氏の経済成長とはせいぜい名目1.5%成長までだ。



 次にムダの削減。これは霞ヶ関埋蔵金で有名だ。与謝野氏には埋蔵金はない。というのは会計上の埋蔵金はあるが、それは官僚が使うといえば「存在しない」になる。国民のためにつかう埋蔵金はない、という意味だ。

 自民党政権では与謝野氏の意見は通らなかった。もしその意見の通りになっていたら、50兆円くらいの増税が行われていたかもしれない。

 これでわかるだろうが、与謝野氏の言い方は官僚の詭弁と同じだ。経済成長はするといいながら、デフレ継続で名目成長せいぜい1.5%まで。ムダは省くといいながら、官僚がムダでないといえば、それはムダでない。マスコミでの与謝野氏の露出が高まる中で、こうした言葉遊びさえ指摘できないメディアは情けない。


*** デフレ下でも価格が下がらない新聞 ***
 そもそも大手新聞は消費税増税に賛成なので、あえて指摘しないのだろう。なぜ消費税増税に賛成なのか。それは、昨年11月22日付けの本コラム(丹呉元財務次官の人事、菅・与謝野会談の裏側でくすぶる「増税大連立」もはや「末期症状」の政権は禁じ手に踏み込むのか  )で指摘した財務事務次官の天下りに大いに関係している。

 最近しばしば英国の消費税の話をマスコミ関係者はよくする。実は英国の消費税では新聞は税率ゼロだ。これは欧州でも特殊な存在である。ほかの国はEU指令でゼロ税率を否定しているので、せいぜい軽減税率だ。

 なぜマスコミで英国の話が多いかというと、日本で消費税増税しても、新聞は食料品などともに生活必需品ということで、ゼロ税率(悪くても軽減税率)の適用を受けたいからだ。

 軽減税率は、依怙贔屓の租税特別措置と同じで利権の固まりになる。消費税増税騒ぎの裏側で、こうした利権獲得がはじまっていると考えた方がいい。こうした利権の裏には、必ずといってよいほど天下りがある。前財務事務次官の大手新聞への天下りはその兆候ではないか。

 また、新聞業界では消費税増税の中で軽減税率を勝ち取るかために、欧州に調査団を送っていてるという噂もある。軽減税率になると、相対価格において有利になるので、個別企業としては当然の選択ともいえる。

 もっとも、新聞業界の特殊性はこの際知っておいた方がいい。まず、再販制度という独禁法適用除外のカルテルによってデフレ下でも価格下落が免れている業種だ(下図参照)。こうした再販制度は先進国でまずない。欧州並みに軽減税率を主張するのであれば、再販制度の価格カルテルはやめるべきだろう。




 さらに、新聞の新規参入については、「日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社の株式の譲渡の制限等に関する法律」という商法の特例が障壁となっており、これで新聞社の株式を取得することはできず事実上新規参入はできない。こうした規制もあまり世界にはない。このように新聞業界は競争政策から見ると既得権の保護業種である。競争政策の教えによれば、こうした非競争的な規制業種は長期的には競争力がなくなり衰退していく。私はかつて公正取引委員会に勤務していたことがあるので、そうした事例を数多く見てきた。

 いずれにしても、財務省は、こうした業界特性や個別企業の戦略までも知った上で、マスコミを使って消費税増税ムードさえ高まれば、後は軽減税率に群がって増税反対はなくなると思っている。

 はたしてそうだろうか。かつては新聞を中心とするメディアがほぼ情報独占し、霞ヶ関も記者クラブを通じた情報操作が機能していた。ところが、ネット経由の情報の役割が徐々に大きくなってきた。今回のコラムの従来のメディアでは取り上げられないだろう。しかし、今ではこうしてネットの上で書ける時代になっている。

 菅政権の消費税増税路線が功を奏するかどうかは、国民生活に直結する大問題であるが、メディア論から見ても、既存メディアとネットメディアの攻防とみることもできる。

 なお宣伝であるが、私らの「政策工房」でマスコミの報じないニュースを有料で発信している。ご興味にある方は、こちらにアクセスしていただきたい。
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