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 日本経済新聞のネットPLUSには、興味深い記事が掲載されるので、時折読んでいるのだが、冷泉彰彦が、今回の米国金融安定化法案の否決を冷静に眺めている。流石に「作家」だなと思わせる。各社の社説などより、堀の深い内容で、米国の歴史的な成立過程を示し、米国共和党の「草の根」保守のあり方、つまりは「政府の干渉」を拒否する草の根保守のあり方が金融安定化法案に反対したのである。
 日本の保守のあり方とかけ離れていることに注意を向けさせることにもなる、非常に良い記事だと思う。例えば日本では「社民的な主張」を持つものたちが金融安定化法案に反対する。但し、共産党は存立すべき政党である。というのも資料を収集し調査・追及する能力はマスメディアよりあるように思うからだ。

「金融安定化法案否決」の根深い理由
(2008/09/30)
 ◇冷泉彰彦(作家・米国在住)
 米国の金融危機は政治の危機に発展した。

 9月29日午後、米下院は金融危機に対する7000億ドル(約75兆円)の公的資金注入案を否決した。この法案はブッシュ政権が提案し、議会民主党が一部修正を条件に賛成したいわば超党派の案であり、抵抗していた下院共和党幹部も賛成に回ったはずだった。だが、大量の造反者の出る中、228対205という表決で法案は葬り去られた。これを受けて29日のニューヨーク株式市場は777ドルという記録的な大幅安となった。

 共和党のブッシュ政権の重要な政策、しかも議会幹部が折衝を重ねた結果の超党派案がこうした形で否決される背景には何があるのだろうか。


 ■法案を葬った草の根保守の「情念」
 まず下院共和党の動きだが、ベイナー院内総務が表決直前に「諸君、米国全体の利益を考えれば答えは1つしかない。それはイエスだ」と述べて賛同を迫ったにもかかわらず、67%が反対に回った。過半数の造反というショッキングな結果には理由がある。共和党の支持層の中核を占める「草の根保守」の中に公的資金注入への根深い反対論があるのだ。

 例えばラッシュ・リンボー氏の番組に代表される保守系ラジオのトークショーでは「ウォール街を税金で助けるのなら俺たちの衰退産業も助けてくれ」「金持ちのマネーゲームを税金で救うな」というメッセージの大合唱となっている。さらに米国の議会には党議拘束という習慣がない。従って、最終的な票決は各議員が自分の選挙区の民意を受けたものから大きく外れられず、いくら院内総務が説得してもダメだった。

 草の根保守の「情念」は今に始まったことではない。例えば「グローバリズム」というと、米国外では米国の経済覇権と同一視して語られることが多い。だが、米国内、特に草の根保守の間では「エリートが外国と結託してカネもうけをしている」というイメージでとらえられている。その象徴が「金ピカのウォール街とハリウッド」だ。さらには国際協調や平和主義というのは、彼らだけが利益を得るための「偽善」だというとらえ方もされている。保守層からは今回の公的資金注入は「金持ちの偽善者を救う行為」というとらえ方になってしまうのだ。

■公的資金注入への反発、米国独立にルーツ
 公的資金のイメージも、米国には独自のものがある。そもそも米国が独立したのは、旧宗主国であるイギリスの徴税権から離脱するためだったといってもよい。従って米国では国民の納税者意識が非常に高い。

 公的資金というのは「自分たちのカネ」であり、それを一部の金持ちを救済するためにウォール街へ「注入」するのは絶対に許せないという思考回路がある。これは情念だけでなく、イデオロギーとしても確立していて、例えば今回の法案について「米国を社会主義国にするのは反対」という言い方もされている。

 選挙が近いという要素も無視できない。11月4日は大統領選の投票日だが、同時に米国にとっての「総選挙」の日であって、任期2年の小選挙区制の下院議員は全員改選となる。投票日まで40日を切る中で、どうしても議席を失いたくないという議員心理は大きい。

 共和党候補が恐れているのは、草の根保守の票が民主党に流れることではなく、投票所に来ない、つまり棄権されることだ。「民主党候補は反戦だから嫌いだが、共和党候補もオレの税金を金持ち救済に使うのに賛成なら、今回は投票をやめておこう」という動きが出るのでは---。そうした恐怖心だ。

■注目される「10月2日」
 タイミングも悪かった。法案が否決された29日の後、米議会はユダヤ教の新年(ロシュ・ハシャナ)のため休暇に入るし、ウォール街もスローダウンする。従って法案修正などを巡る危機対応の本格的な動きは現地10月2日の木曜日以降になる。この数日間の海外市場の動向も心配だし、信用収縮が一段と進むことも考えられる。2日には新しい妥協案を成立させなくてはならない。

 一方で、2日には、大統領選を通じて1回だけ行われる「副大統領候補テレビ討論会」が予定されており、民主党のジョー・バイデン候補と、共和党のサラ・ペイリン候補が直接対決する。ここでペイリン氏が「副大統領として非常事態にはとても耐えられそうもない」という印象を与えてしまうと、共和党陣営は総崩れになる危険がある。だが、老獪(ろうかい)なバイデン氏はペイリン氏をそこまでは追い詰めないのではないかという観測もある。そうした姿勢が、改めて粘り強く超党派合意を模索しようという政治的な動きに重なってくるかもしれない。

 ただ、今回の調停失敗を受けて、民主党のペロシ下院議長と共和党のベイナー院内総務の権威は大きく傷ついた。ポールソン財務長官にも焦燥が見える。今度という今度は、ブッシュ大統領自身の指導力に期待するしかないのが実情だ。任期満了を目前にしてもはや何も失うもののない大統領にとって、最後の大仕事が待っているといえるだろう。
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