主に政治と経済について、思いついたことを語ります。リンクフリー、コピーもフリー
門倉 貴史
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B.エーレンライク
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簡略に気ままに述べる。門倉貴史の二冊は、マクロ経済学を知った上での著作。で、門倉は「光文社新書
統計数字を疑う―なぜ実感とズレるのか?」によると金融政策による景気回復を否定しているようだから、所謂マクロ経済学のリフーレション派ではない。自分の関心から統計を作ることの出来る著者であり、単純な社民主義者(マクロ経済より制度を何よりも優先させ同情からの思考方法、例えば 労働ダンピング―雇用の多様化の果てに (岩波新書))でもないように筆者の知る限り見受けられる。いわば国際投資家として経済を広く見ることが必須であること、そして経済の活況が投資の前提として必要であることなどから守備範囲を広くとる著者であるように見受ける。
まず一冊目、たまたま書店で見かけさらりと読んでみたら、それほど扇情的な書き方では無かったので買ってみた。本著は、重たい話題を扱っているが、その重さに比較して軽快に読み進めることができる。ワーキングプアーの「定義」を質問形式で明らかにして、まずは米国のワーキングプアーの推移を統計によって示す。米国は周知の通り、経済成長については上昇しているから「景気」は良いとされるが、それは、内実を見ていない。連邦政府による公的扶助の制度は無く、低所得者に対してはメディケイドと呼ばれる医療扶助制度がある程度であることが指摘される。翻って日本の実態を男性労働者の年齢別にワーキングプアーの実態を見ている。50才台以上のプアー指数と20才台のそれが上昇していることが示され、それは、非正規社員と正規社員の所得格差として述べられる。また、主婦層にもこの傾向が現れているが、パートタイマーとして働くものたちの増加する実数が統計として示される。派遣社員、教師の非常勤講師、製造業の季節工、の実態などが、当人のインタビューを通して具体的生活的な面が見えてくるように構成されている。門倉も指摘しているところだが、例えば製造業における労働現場では、「競争相手」がブラジルなどの低賃金外国人となる。それが実態である。そして、政策提言で結ぶことになるが、新自由主義的な改革では、ワーキングプアーを生み出す構造を作り上げる「力」が「社会性」までを獲得するようになっているのだろうというのが、本著を通して見えてくることになる。
市場は大づかみに言って、三つある。株などの売買による資本市場、財・サービスの売買による市場、そして労働市場である。が、労働市場は、他の市場に対してかなり異質である。労働に対する姿勢というものが、ワーキングプアーといった働いても働いても貧しいという精神的観念の有様は経済学的な所得の低さという数字では表さることが難しいところが、労働に対する姿勢が充足感のない活動として「劣化」していくことになる。すなわち、そこには社会に対する「信頼」、これは時として依頼心と裏腹な心理だろうが、というものが欠如していくことに傾きやすい。そうした社会性を持った社会は、「絶対」への渇望として良くも悪くも、強い指導者、独裁的な指導者、大きなものに巻かれて行くことによってのみ「安心感」が得られ、「社会」性が確保できる個人性が出来やすいことになると思える。
最後に最低賃金法の上限を門倉は提言要求をしているが、これには賛同しかねる。というのは、経済のパイが名目で縮小している経済状態のときに、国民所得の分配について法的に縛るとその政策目標と実際の所得分配がうまくいかない結果を招く政策的危険が存在する。名目の経済成長が無い、すなわち経済のパイが一定あるいは縮小から、成長への政策転換がなされるときこそ、最低賃金法の趣旨が生かされるからである。
ところで二冊目だが、門倉の守備範囲の広さはBRICsにまで及び、しかもその富裕層を取り上げ産業界だけでなく国の対処方法も述べる。そこで、BRICsについての話題だが、その諸国家について富裕層、中産階級がどれくらい育っているのかについて見ている。日本の産業界の方向が、富裕層を目標に置くように提言しているが、それには納得させられる。
当然のことなのだが、中国の政治的リスクばかりか、農民の争議、労働争議など社会的なリスクも紹介している。国際比較が「購買力平価」ではなく、現状の為替レートでされているので、その点は注意した方がいいのかもいいかもしれない。購買力平価で見たときは、中国の経済規模は、米国についですでに2位であるからである。門倉は、日本の企業の投資が中国への投資に偏重している、とする。それには昨今の冷凍餃子事件とも絡んで深く同意する。
インドの富裕層の実態、ロシアのそれ、ブラジルのそれが成長の統計によって語られるが、そして韓国のヒュンダイなどの企業と連合して対BRICs諸国での戦略などが語られ、日本は周回遅れ気味だと指摘する。BRICs諸国だけではなく、ASEAN、ベトナム、中東諸国、欧州中東諸国まで経済実態の分析にまで及ぶ。その手際は直截的で重要なところだけが語られるので、短時間で読了出来る読み易さである。また、世界の各国の状態が参照できるので、ある意味での手引き書にもなる。
BRICsなどの経済成長に伴い購買規模が大きくなることから食料危機が、やがてやってくるだろうという推測が、統計的な予測値のものとに述べられるので、ちょっとばかり考えさせられる。
最後の一冊は、米国のワーキングプアーの実態を著者のエーレンライクが実体験したもので、職場でのやり取り、即場での人間観察などの描写があり、かなり冗長だが、住居費の捻出が困難なところにワーキングプアーの実相を見ていて一度その世界に陥ると個人的にはどうにもなならなくなりワーキングプアーの状態から抜け出せなくなる蟻地獄のような実態がノンフィクションの生活のとして語られる。生活感のない読み物は苦手という読者には受け入れられやすいだろうか。
そうした側面から言うと門倉の前著は、様々な職業の人たちへのインタビューを含むのだが、住居をどうしているのかについての視点が欠けている。それを補う意味では、エーレンライクのフィクションは必要なのだろう。いずれにしても蟻地獄の世界は変わらないのだろうが・・・・。とはいえ、日本の労働現状が大づかみで統計的数字で説明されているので大きな欠点とはならない、ともいえる。
筆者なりの関心にひきつけて言えばデフレ圧力が労働環境にどの程度の影響を与えていたのかが見えないのが非常に残念だった。名目の経済成長率が実質の経済成長率を上回る経済状態、労働需要が増える雇用環境がよい経済、のときに労働環境の規制を解き、流動性を確保すれば人手不足になり、派遣や非正規社員の生き方としての多様性も確保する場もできたのではないかと思う。その意味でマクロ経済の安定政策は重要な意義を持つのである。
統計数字を疑う―なぜ実感とズレるのか?」によると金融政策による景気回復を否定しているようだから、所謂マクロ経済学のリフーレション派ではない。自分の関心から統計を作ることの出来る著者であり、単純な社民主義者(マクロ経済より制度を何よりも優先させ同情からの思考方法、例えば 労働ダンピング―雇用の多様化の果てに (岩波新書))でもないように筆者の知る限り見受けられる。いわば国際投資家として経済を広く見ることが必須であること、そして経済の活況が投資の前提として必要であることなどから守備範囲を広くとる著者であるように見受ける。
まず一冊目、たまたま書店で見かけさらりと読んでみたら、それほど扇情的な書き方では無かったので買ってみた。本著は、重たい話題を扱っているが、その重さに比較して軽快に読み進めることができる。ワーキングプアーの「定義」を質問形式で明らかにして、まずは米国のワーキングプアーの推移を統計によって示す。米国は周知の通り、経済成長については上昇しているから「景気」は良いとされるが、それは、内実を見ていない。連邦政府による公的扶助の制度は無く、低所得者に対してはメディケイドと呼ばれる医療扶助制度がある程度であることが指摘される。翻って日本の実態を男性労働者の年齢別にワーキングプアーの実態を見ている。50才台以上のプアー指数と20才台のそれが上昇していることが示され、それは、非正規社員と正規社員の所得格差として述べられる。また、主婦層にもこの傾向が現れているが、パートタイマーとして働くものたちの増加する実数が統計として示される。派遣社員、教師の非常勤講師、製造業の季節工、の実態などが、当人のインタビューを通して具体的生活的な面が見えてくるように構成されている。門倉も指摘しているところだが、例えば製造業における労働現場では、「競争相手」がブラジルなどの低賃金外国人となる。それが実態である。そして、政策提言で結ぶことになるが、新自由主義的な改革では、ワーキングプアーを生み出す構造を作り上げる「力」が「社会性」までを獲得するようになっているのだろうというのが、本著を通して見えてくることになる。
市場は大づかみに言って、三つある。株などの売買による資本市場、財・サービスの売買による市場、そして労働市場である。が、労働市場は、他の市場に対してかなり異質である。労働に対する姿勢というものが、ワーキングプアーといった働いても働いても貧しいという精神的観念の有様は経済学的な所得の低さという数字では表さることが難しいところが、労働に対する姿勢が充足感のない活動として「劣化」していくことになる。すなわち、そこには社会に対する「信頼」、これは時として依頼心と裏腹な心理だろうが、というものが欠如していくことに傾きやすい。そうした社会性を持った社会は、「絶対」への渇望として良くも悪くも、強い指導者、独裁的な指導者、大きなものに巻かれて行くことによってのみ「安心感」が得られ、「社会」性が確保できる個人性が出来やすいことになると思える。
最後に最低賃金法の上限を門倉は提言要求をしているが、これには賛同しかねる。というのは、経済のパイが名目で縮小している経済状態のときに、国民所得の分配について法的に縛るとその政策目標と実際の所得分配がうまくいかない結果を招く政策的危険が存在する。名目の経済成長が無い、すなわち経済のパイが一定あるいは縮小から、成長への政策転換がなされるときこそ、最低賃金法の趣旨が生かされるからである。
ところで二冊目だが、門倉の守備範囲の広さはBRICsにまで及び、しかもその富裕層を取り上げ産業界だけでなく国の対処方法も述べる。そこで、BRICsについての話題だが、その諸国家について富裕層、中産階級がどれくらい育っているのかについて見ている。日本の産業界の方向が、富裕層を目標に置くように提言しているが、それには納得させられる。
当然のことなのだが、中国の政治的リスクばかりか、農民の争議、労働争議など社会的なリスクも紹介している。国際比較が「購買力平価」ではなく、現状の為替レートでされているので、その点は注意した方がいいのかもいいかもしれない。購買力平価で見たときは、中国の経済規模は、米国についですでに2位であるからである。門倉は、日本の企業の投資が中国への投資に偏重している、とする。それには昨今の冷凍餃子事件とも絡んで深く同意する。
インドの富裕層の実態、ロシアのそれ、ブラジルのそれが成長の統計によって語られるが、そして韓国のヒュンダイなどの企業と連合して対BRICs諸国での戦略などが語られ、日本は周回遅れ気味だと指摘する。BRICs諸国だけではなく、ASEAN、ベトナム、中東諸国、欧州中東諸国まで経済実態の分析にまで及ぶ。その手際は直截的で重要なところだけが語られるので、短時間で読了出来る読み易さである。また、世界の各国の状態が参照できるので、ある意味での手引き書にもなる。
BRICsなどの経済成長に伴い購買規模が大きくなることから食料危機が、やがてやってくるだろうという推測が、統計的な予測値のものとに述べられるので、ちょっとばかり考えさせられる。
最後の一冊は、米国のワーキングプアーの実態を著者のエーレンライクが実体験したもので、職場でのやり取り、即場での人間観察などの描写があり、かなり冗長だが、住居費の捻出が困難なところにワーキングプアーの実相を見ていて一度その世界に陥ると個人的にはどうにもなならなくなりワーキングプアーの状態から抜け出せなくなる蟻地獄のような実態がノンフィクションの生活のとして語られる。生活感のない読み物は苦手という読者には受け入れられやすいだろうか。
そうした側面から言うと門倉の前著は、様々な職業の人たちへのインタビューを含むのだが、住居をどうしているのかについての視点が欠けている。それを補う意味では、エーレンライクのフィクションは必要なのだろう。いずれにしても蟻地獄の世界は変わらないのだろうが・・・・。とはいえ、日本の労働現状が大づかみで統計的数字で説明されているので大きな欠点とはならない、ともいえる。
筆者なりの関心にひきつけて言えばデフレ圧力が労働環境にどの程度の影響を与えていたのかが見えないのが非常に残念だった。名目の経済成長率が実質の経済成長率を上回る経済状態、労働需要が増える雇用環境がよい経済、のときに労働環境の規制を解き、流動性を確保すれば人手不足になり、派遣や非正規社員の生き方としての多様性も確保する場もできたのではないかと思う。その意味でマクロ経済の安定政策は重要な意義を持つのである。
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