主に政治と経済について、思いついたことを語ります。リンクフリー、コピーもフリー
月刊現代2月号を買ってみた。「パール判事」論争 「小林よしのりへの挑戦状」として中島岳志が論文を掲載していたのを、新聞の広告欄で見たからだが・・・。政治学者、中島岳志の「国家論」ないしは、国家観への興味があったので買ってみたわけだが、東京裁判判事パールを巡っての小林よしのりとの論争の申し出であり、パールの東京裁判後の言辞からパールが、「平和主義者」であることを「右派」が失念していることの指摘と「保守」の思想の定義、存在様式の記述には納得させられた。が、しかし、国家についての論及は無く、当初の国家観をみるという目的は果たせなかった。
しかしながら、中島以外の別稿で、優れた論考がひとつだけ掲載されいたので、満足した。残りの「救国提言」の論者(宮台真司のがほんのり面白い)作家高村薫の「TVを消して・・・・」は、読むに耐えない駄文(失礼)。高橋洋一内閣参事官の件の自民党の旧幹事長中川秀直の「埋蔵金」問題についての論述が掲載されていたのだが、これが、予想以上にマクロ経済としての見方が出来ていて、得心ものであった。高橋については、TVでほんのちょっと見かけたことはあり、「埋蔵金」論者だけで財政再建する所謂「官僚」の省益に終始する人物かと思い込んでいたので、掲載文を読んで正直驚いた次第である。TVマスメディアコメンテイター連中で、これだけのマクロ経済の「イロハ」を踏まえたことが言えるものは筆者が知る限り森永卓郎(森卓、米国陰謀論以外はそれなりのマクロ経済のこと述べるのよ)以外皆無である。それだけに引用しておく意義は十二分にある。これこそが「救国提言」にふさわしい、と思うのだが如何せん表紙にそのキャッチもない。ぐすん・・・・。
追記:成長戦略の中身は、大きく分けて、供給側の「競争」を通じた効率化=「構造改革」を通じて引き上げるという方法と需要側(企業投資、と家計消費)に政策的に働きかけて成長させる方法がある。自民党旧幹事長、中川秀直の成長戦略は、前者である。後者の需要を重視する成長戦略を主張しているものは政治家ではいないように認識する。自民党参議員、山本幸三は、後者かもしれないが・・・・・・。何故、このよう割れるかといえば、マクロ経済学が、古典派とニューケイジアン派とに割れているのがもとにあるのかもしれない。が、概ねニューケイジアン派は「短期」の政策であり、古典派は「長期」の政策であるという点では、ほぼ経済学者の間では一致しているようである。マクロ経済では、短期、長期という概念は、10年、20年という期間について直接言うのではなく、期待された経済状態が齎される「とき」の「区分」として使われるので、その点、注意。
以下、掲載文の後半部である。
日銀のメンツ、財務省の権力
名目成長率を上げれば賃金も増え、税収も増える。これをしないまま大増税などしたら、日本経済は潰れ、家計は破綻してしまう。しかるに2000年代に入ってからの日本の名目成長率は平均0・3%。OECD(経済協力開発機構)30カ国(平均5・1%)の中で最下位だ。名目成長率が低すぎるのは、適切なマイルドインフレになっていないからで、OECD各国は近年、2~4%のイソフレ率が続いているが、日本だけはゼロないしマイナスである。
デフレを脱却するのは簡単で、日本銀行が資金量を少し増やせばいい。ところが、いまの日銀がやっているのはその反対で、福井俊彦総裁になってから日銀が供給するお金(ハイパワード・マネー)は、年率4%減なのだ。これでは、デフレ脱却などできるははずがない。
もし日銀がお金を増やせば、08年度見通しの名目成長率2%がすぐに4%くらいにはなる。そんなことはわかりきっているのに、日銀は依然として資金供給を絞ったままだ。最近、一部の物価があがっているが、日銀がハイパワード・マネーを増やさないとマネーサプライが減少して景気が停滞し、経済全体として所得が伸びないなどもっとまずいことになってしまう。
なぜ日銀はお金を増やさないのか。突き詰めれば、それは日銀に染みついたDNAに起因する。ハイパワード・マネーを増やすには日銀が国債を買わなくてはならないが、日銀にとって国債を買うことは財務省に属したことを意味し、日銀の強烈なエリートの矜持がそれを許さないのである。つまり、日銀にとって、国債を買うことは敗北を意味するのだ。いわば日銀のつまらないメソツのせいで日本はいつまでもデフレから抜け出せないのだが、自分たちの組織の論理にとらわれているのは財務省も同じである。
財務省は基本的に増税路線だが、これはなぜか。理由は簡単で、そのほうが財務省にとって楽だからだ。財務省は「財政原理主義」であり、国の金庫番として、まず財政収支の均衡こそ第一と考えている。その財政収支を均衡させるには、歳出カットか増税かどちらかしかない。となると、歳出カットは反発する各省庁への説得その他で大変な労力を伴う。一方、増税は永田町が行う事項であり、国民の反発もそちらへ向けられ、官僚が頭を下げる必要はなくなる。財務省としては非常に楽なのである。
さらに言えば、金庫番として財源を押さえておくことは権力の保持にも繋がる。霞が閲の論理にしたがえば、自分たちが差配するお金はおおいほうがいいに決まっている。官僚の天下り先である独法にも同じ理屈が働く。こうして歳出カットよりも増税に傾くことになる。
名目成長率アップが先決と、ここまではだれしも容易に理解できるシナリオだが、私が理解に苦しむのは、財務省が「経済成長率が上がると財政再建できなくなる」と本気で考えていることだ。このにわかに信じがたい論理を、私は財務省の何人かの幹部や他省庁の財政担当幹部から直接聞いている。実際、06年2月17日政府税調、2月28日財政審に政府が提出した資料にも、経済成長すると財政再建できなくなるという試算が提出されて
いる。政府審議会の中でも税調と財政審は最高権威なのだから、財務省が本気でそう思っている証拠である。
成長率が上がれば税収も増えるが、彼らはそうは考えない。彼らの頭のなかにある理屈は、成長率が上がると、それに伴って金利も上がるから利払いがかさんで財政再建が遠のく、というものだ。なぜ、こんな奇妙な論理がまかり通っているかといえば、彼らがせいぜい向こう数年くらいしか見通せない、悲しいほど近視眼的な思考に陥っているからである。
たしかに2~3年くらいのスパンであれば、税収の伸びが遅れ、金利のほうが先に上がって一時的に苦労する状況もあるかもしれない。しかし金利上昇はいずれ頭打ちになり、成長率が上がったほうが税収増によって財政再建への近道となるのは言うまでもない。
ちなみに、税調と財政審の試算では、資料の下に小さな字で、「公債等残高GDP比が同じ(143%)と仮定」と書かれているが、これが「怪しい」。そのほかの前提である経済成長や財政支出で計算すれば、公債等残高GDP比は下がるので、この「怪しい」注記は、資料で書かれていない財政支出をバンバン増やすということと同じである。経済成長しても財政再建できないというためには、手段を選ばないのである。もちろん、税調でも財政審でも、委員は役所側の説明をただ聞くだけで、誰もこの問題点を指摘していない。
そんな経済のイロハもわからなくなるほど彼らが近視眼になってしまったのは、財務省にはびこる「財政原理主義」のせいだろう。とにかく目先の財政収支の均衡にしか思考が及ばない。
世の中の経済の動きをまったく無視して自分たちの組織の論理だけで考えるという点で、日銀も財務省も見事に一致しているのである。
繰り返すが、財政再建には名目成長率を上げることが先決だ。これをまず柱に据えて、いくつかの手立てを講じていかなければならない。霞ヶ関の埋蔵金も、名目成長率の上昇とセットにして初めて国民のために生きるものになるはずである。
おそらく、福田政権も本格的な成長戦略に乗り出さざるを得ないだろう。格差問題も含めて経済問題では成長が最高の良薬であるからだ。
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