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社説1 財政改革の道筋がかすむ福田予算(12/21)
福田政権が初めて組んだ2008年度予算の財務省原案が決まった。新たな国債の発行額は840億円減の約25兆3000億円と辛うじて4年連続で減らしたが、与党の歳出拡大圧力に配慮して随所で帳尻合わせをした。規律の緩みは今年度の補正予算にも表れており、財政健全化の停滞を印象づけた予算といえる。
予算案の一般会計規模は83兆円強、国の政策経費である一般歳出は約47兆2800億円で、それぞれ0.2%、0.7%の増額となった。公共事業関係費を3.1%減、政府開発援助を4%減など、06年に小泉政権が決めた5年間の歳出削減方針に一応は沿っている。
税収が53兆5000億円強と微増にとどまり、国の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字幅は7500億円広がった。11年度に国・地方で基礎的収支を黒字に転換する目標の達成には厳しさが増す。
予算の中身を見ると、随所に理屈の通らないトリックが目立つ。典型が一般歳出の46%を占める社会保障関係費である。2200億円の抑制目標を果たすため、政府管掌健康保険に対する国庫負担を一部削り、ツケを民間の健康保険組合などに回した。政治力の強い日本医師会などが増額を求めた診療報酬本体は一方で0.38%引き上げる。
つじつま合わせは文教予算も同じだ。族議員が「教育再生」を旗印に求めた小中学校教員の大量増員は、行革方針と矛盾しないよう非正規教員を増やすことなどで落ち着いた。いずれも医療や教育の「質」を巡る議論は置き去りのままだ。
自治体に配分する地方交付税交付金は4.6%増える。財政力格差の是正を名目に設けた4000億円の地方再生対策費などが影響した。衆院選対策費と言い換えてもいいだろう。
今年度の補正予算で削減を尻抜けにする例も目立つ。農林水産関係予算は08年度予算で700億円減らすが、補正で「水田農業等緊急活性化」と称して800億円を計上した。高齢者医療の負担上げを凍結する財源の1700億円も補正頼みだ。
財務省は「改革予算」を印象付けようと国債発行の抑制に腐心した。外国為替資金特別会計の剰余金や日銀納付金を確保し、低金利を反映して元利払いにあてる国債費を抑えた。小幅の国債減額は、景気や金利次第ですぐ帳消しになってしまう。
財政融資資金特別会計の積立金を10兆円近く借金減らしにあてても、国債残高は553兆円に増える。「希望と安心」の福田康夫首相だが、財政の安心にはほど遠い。日経新聞
08年度予算 やり繰りはもう限界に来た(12月21日付・読売社説)
乏しい財源をいくらやり繰りしても、財政再建の道筋は見えてこないということだろう。
2008年度予算の財務省原案が内示された。一般会計の総額は、今年度をわずかに上回る83・1兆円となった。
歳出、歳入それぞれの項目に計上された金額は、今年度予算とほとんど変わらない数字が並んだ。頼みの税収が53・6兆円と伸び悩み、メリハリの利いた予算編成が出来なかったことの表れだ。
歳入不足を補う国債の発行額も25・3兆円と横ばいで、ここ数年続いたような大幅削減はかなわなかった。この結果、財政の健全度を示す基礎的財政収支の赤字幅は5・2兆円と、今年度の4・4兆円から悪化してしまう。
政府は、国と地方を合わせた基礎的財政収支を、11年度に黒字化することを目標にしている。一方で、社会保障や教育、科学技術など、むしろ予算を充実させなければならない分野もある。
矛盾の解決には、歳入を増やすしかない。消費税率の引き上げで財源を作り、財政を立て直しながら社会保障などに重点配分する。それが、国民生活の安定と、日本経済への国際的な信任の維持に欠かせないことを銘記すべきだ。
歳入不足の中、なんとか財源をひねり出そうと、その場しのぎの策に終始したのが今回の予算編成の特徴といえる。
例えば社会保障費だ。政府管掌健康保険に対する補助金を1000億円削るため、その分を大企業の健保組合などに負担させることにした。健保組合側が強く反発し、暫定的な措置とすることでようやく決着したが、いずれ抜本的な解決策を迫られるのは必至だ。
地方財政では、地方交付税を確保するため、交付税特別会計が抱える債務の返済を中断し、財源を工面した。借金の返済先送りとは、安易過ぎないか。
予算編成の過程では「霞が関埋蔵金」が話題になった。国の特別会計に含まれている剰余金のことを埋蔵金に例えた問題である。
自民党の“反増税派”は、剰余金を活用すれば、消費税率の引き上げを回避できると主張した。これに対し“財政再建派”は、剰余金には限界があり、これに頼っていては道を誤る、と批判した。
結局、来年度予算では、外国為替特会から1・8兆円が税外収入に繰り入れられ、新規国債の発行額を減らすのに役立った。財政投融資特会から、9・8兆円を国債の償還に使うことも決まった。
剰余金の使い方としては、これが妥当な線だ。「埋蔵金」に目がくらめば規律が緩み、財政再建など不可能になる。
(2007年12月21日1時41分 読売新聞)
「中央紙」はこんなところ。日経新聞には問いたいことがあるが、財政の健全化によって何をしようというのだろうか?財政の健全化は、政府機関の健全化を目的とするものではない。国民生活が窮乏ししないようにするための健全化である。財政健全化と騒がしいが、国家財政が破綻する「危機」があるとでもいうのだろうか?
財政が持続可能ではないときに破綻がやってくる。が、長期金利が名目経済成長率を下回る限り、破綻は無い。なぜなら、国債による国家の借財をロールオーバーしながら返還していくときの金利が、名目の経済成長率より低いということは、借金の金利分以上の国民所得が増えているということであり、金利分の金額以上に国民が国民所得として稼いでいることになるからである。
さらに、財政の国債発行額が高く、個人や企業であれば破綻しているという比喩が喧伝されるが、国家と個人や企業とは借金の「質」が違うのである。国、地方の借財である債券は、中央銀行が引き受け、借財にけりをつけるという究極の手段を中央政府は、持っている。日銀のバランスシートがどうのという無知からの反論があるが、中央銀行が「倒産」という話は聴いたことが無い。1万円札が原価25円で出来る中央権力箇所にそんなことが起きるはずも無いだろう。但し、注意すべきは「現代マクロ経済学」が述べるように、大量の通貨供給によるハイパーインフレシーションの招聘だけだが、インフレには賃金「生活者」には非常に敏感である。中央政府、日銀が断固たる処置をとるという「宣言」とその適切な実行があれば、「現代経済学」述べるところの「生活者」の「予想」インフレ率が終息し、通常のインフレにすぐさま戻る。
極端な例を挙げたほうが、「理解」しやすい状況というものが「世の中」にはあるものだ。仮に、ハイパーインフレになったとすれば、国家の借財は無に帰するのである。仮に100倍のインフレになったとすれば、借金は、100分の1になるからである。財政が「国民生活」に重要だという「公」論者なら、これぐらいのことは思考実験してみて、述べるべきことである。
そして、財政難といっても、中川秀直の述べるように「埋蔵金」が特別会計にはたぷりとある。また、国家の資産も200兆ほどもあるといわれている。国家の借財は正味で見れば、800兆も無いのである。
微妙に論点が異なるが、地方紙も似たり寄ったりの「社説」内容である。
福田康夫政権にとって初の編成となった2008年度政府予算の財務省原案がまとまった。
歳入不足を補う国債の新規発行額は4年連続で減額され、前年度当初比で840億円少ない25兆3000億円に抑制された。これだけを見れば、財政再建路線は堅持されたと評価できるだろう。しかし、目を凝らして予算書をめくると、からくりがあることに気付く。
その最たるものが社会保障費だ。参院選の惨敗を受けて政府・与党は来年4月から始める予定だった高齢者医療費自己負担増の見送りを決めている。それに伴う国の負担は約1700億円である。本来なら、その分だけ08年度の歳出を増やさなければならないのに、政府は本年度補正予算で処理する方針だ。
かつて証券業界で問題になった顧客損失の「飛ばし」や利益の「付け替え」といった手口を連想させる。財務省は「年度内に処理するのは地方議会などの承認を確実にするため」と説明するが、財政法が会計年度独立の原則をうたっていることを考えれば、禁じ手ではないか。
中小企業の従業員が加入する政府管掌保険への国庫補助1000億円削減のやり方も疑問が残る。大企業の健保組合などに支援させることで、診療報酬引き上げ分を含めて収支は合う計算だが、国の予算の帳尻を合わせるために、民間の金を取り上げるやり方は納得できない。
しゃにむに見栄えを整えた結果、社会保障費全体では前年度当初予算比で増加幅を2200億円圧縮した。政府が目標とする11年度での国と地方の基礎的財政収支黒字化を実現するための既定方針通りだ。
だが、補正予算を含めて見れば、財政構造改革は後退したと言わざるを得ない。当初予算で2200億円圧縮することが目的化し、真の目的である財政再建は置き去りにされたのではないか。
高齢者医療や政府管掌保険については08年度限りの暫定措置である。その場しのぎのつじつま合わせは、09年度以降に問題を先送りしたにすぎない。
新たに巨額の予算が必要なら、歳出を抜本的に見直し、限られた歳入の範囲内でやりくりすべきだ。
それなのに歳出面を見ると、一般会計総額は83兆600億円となり前年度当初比で1500億円増加し、税収の53兆5500億円をはるかに上回った。政策に使う一般歳出が47兆2800億円で3000億円増えたためだ。
中身は米価下落対策、原油高対策など与党の支持基盤をにらんだ急ごしらえが目立つ。地方交付税も6800億円増額された。一方で、道路特定財源の一般財源化は1900億円にとどまっている。
これが、国民が望む改革だろうか。政府案は復活折衝を経て24日に決定される。残された時間は少ないが、福田首相が懸命に汗をかく姿を見たい。
=2007/12/21付 西日本新聞朝刊=
2007年12月21日00時03分
予算案内示 「帳尻合わせ」が過ぎるま、こんな具合で、物足りなさしか残らないんだわね。各紙の論旨の中心を占めるのが、財政難であり、税収難であること。それが中心であることなど、「社説」を読もうとするような生真面目な読者には当然の前提であり、分りきったことである。財政難を突き破る方法(日銀の国債引受)があるにもかかわらず、その財政難解消方法について、まったく述べていない。その方法について見当をする時期であると提言することが、本来の「読者」に対する「知」的サービスである。その観点から見ていけば、新聞紙の「大連合」と揶揄されても致し方ない。
2007年12月21日
二〇〇八年度政府予算の財務省原案が決まった。新規国債発行の増加は抑えたが、〇七年度補正予算案にばらまきを思わせる支出を計上し、つじつま合わせの感がある。これでは財政再建が遠のく。
ねじれ国会の状況下で、歳出削減が貫けるか。ことしの予算編成は与野党双方から高まる歳出増圧力を受けながら、どこまで財政再建路線を徹底できるか、が焦点だった。
たしかに、歳出削減に努力した跡はうかがえる。新規国債発行額は〇七年度に比べて0・3%減額した。景気回復が息切れしつつあり、従来のような大幅な税収増を望めない中で、国債発行を圧縮したのは評価できなくもない。
だが、政府が財政再建の目安にしている基礎的財政収支(税収などから国債費を除く歳出を引いた差)は〇七年度よりも悪化した。自民党だけでなく、民主党も掲げる「一一年度に国と地方を合わせた基礎的財政収支の黒字化」の目標を達成するには、ここで手を抜くことなく、もうひと踏ん張りすべきだった。
首をかしげるのは、〇八年度予算と同時に編成した〇七年度補正予算だ。福田康夫政権が打ち出した高齢者医療費の一部凍結費用を賄うために必要な約千七百億円を補正に計上した。これは本来、〇八年度当初予算に計上すべき予算だ。また、水田農業等緊急活性化と銘打って農家への補助金約八百億円も計上した。
夏の参院選大敗を受けて、民主党が打ち出した総額一兆円の農家所得補償政策を与党が意識したためだろう。「民主党に負けじ」と政府・与党がばらまき合戦に走るようでは、財政支出の増大に歯止めがきかなくなってしまう。いくら当初予算を格好良く仕上げても、補正でばらまいていては赤字は減らない。
「埋蔵金」と話題になった特別会計の積立金からは、九兆八千億円を国債残高減らしに使う。巨額債務に比べればわずかでも、国庫の余り金を遊ばせておく手はない。
社会保障費は概算要求基準に沿って、二千二百億円の削減を決めた。だが、中小企業の従業員が加入する政府管掌健康保険の国庫負担分の約一千億円をカットするために、反対論を振り切って、大企業の健保組合と公務員の共済組合に肩代わり負担させた。これも無理やり、つじつま合わせに走った手法だ。
公共事業費は3・1%減額した。随意契約の見直しで約三百八十億円を節約したが、なくならない談合事件をみれば、まだまだ無駄や非効率な部分が残っているはずだ。これで満足している段階ではない。中日新聞
「生真面目」な読者が読むのが、社説であるとすると、その生真面目さに受け入れられ易い、ないしは、媚びる悪しきポピュリズムを思うのは、筆者だけではないだろう。積極財政が取れないという政治的認知を、財政難という擬制を当然の前提としその限られた枠組みの中で政策的発想をする限りでは、いささか大業に言えば、社会構造の解体のみならず世の中の人々の相互扶助的社会という「社民」社会で涵養された「善良」性さえも解体していくことになる。荒んだ世の中を招聘していくほどの長期「危機」の状態へ静かに入り込んでいく、そういった危機観さえも持てないのだろうか。ほとほと、理解に苦しむ財政についての社説群である。
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