中国の預金準備利率引上げに続き、29日にはインドが現金準備率引き上げを発表し、新興国で金融を引き締め方向に変更する動きが表面化してきた。
29日のインド株式市場が下落しただけでなく、日経平均も大引け間際に前日比200円を超す下落となって1万0200円を割り込んだ。
どうして新興国が引き締めに動いているのか。このことを白川方明・日銀総裁が29日の都内の講演で明確に指摘している。
先進国内で十分な投資機会を見出せないリスクテークの資金が、新興国・資源国に大量に流入し、それらの国々で銀行貸し出し増加や不動産価格の上昇をもたらしている──。白川総裁は、こうした現象が経済過熱や金融の混乱をもたらす可能性があり、金融面の対応を始めた国もあると述べた。
実は、このような新興国のマクロ政策対応を予見し、米欧金融機関や機関投資家の中には、新興国の株を売却してこれまでの値上がり益を確定し、その一部を日本株に振り向けていたと語る市場関係者もいる。
そうした関係者の話を総合すると、流動性が縮小する方向で最も影響が出にくい資産の1つが日本株。新興国株売り/日本株買いという裁定取引が、足元の市場で出ていたのも、日本株で流動性縮小をヘッジするためという。
確かに流動性相場の恩恵を受けてこなかった日本株は、逆回転相場の下では、ヘッジ機能を果たすかもしれない。ただ、中国などの新興国経済が引き締めで急減速すれば「日本経済もダメージを受けて、結局、日本株も下がるのではないか」(邦銀関係者)という声が、国内市場関係者からは漏れてくる。
「経済が失速寸前まで金融を引き締めるのか、スピード調整程度の資金吸収なのか。そこを見極めることが最も重要だろう」と国内証券のある関係者は述べる。
外資系証券の関係者の1人も「日本株に注目しだした米欧勢の姿勢は、しばらくは継続するだろう」と話している。
果たして、日本株は新興国株からシフトしたマネーの受け皿となりうるのだろうか。なるわけないだろうとの声が多く聞こえてきそうだが、そう言っていた人たちは、はたして米欧勢の日本株買いを予見できていたのだろか。
(写真/ロイター)
中国とインドは、予想以上に成長率が高く、株価、住宅などの資産価格が上昇しているから、預金準備率の引き上げに入った。預金準備率の引き上げは、通貨供給量の引き締めであるあるから、中央銀行としては金利の引き上げという直接的な策よりこちらを選んだろうと思う。いったんはバブル的な資産価格の上昇率の低下、もしくは、物価の上昇の率を眺めるつもりなのだろう。
これは中国以外の経済にも大きく影響を与える。特に日本は、政府と日銀の政策の劇的な転換がなされるという正の転換期待はほとんどないために、新興国の成長性に支えられた外需に依存するするしかなく、ソニー、東芝、タムラ製作所など、金融関係の決算も多くが「黒字化」しており多くの上場企業の外需産業は至って好決算だと仄聞するが、新興国成長の外需依存を減速させることになるだろう。こうなるとデフレ解消期待も、縮みがちになる可能性が大きい。
そこに輪をかけたように、オバマ政権の時期の悪い国民皆健康保険への志向と金融機関への規制案、FRBのモゲージ証券買い取り策の3月での打ち切りが実施され米国の総需要を減速させようとしている。これでは、北米に拠点をおくトヨタ、ホンダ、シャープのコピー機などの上場外需諸企業はたまったものではなのではないのだろうか。外需の不足は、立ち直りかけた日本経済の諸企業の黒字幅の縮小、赤字企業は来四半期の赤字を積みまし、政府と日銀の政策の劇的な転換がなされるという正の転換期待はほとんどないために諸企業の従業員の給料の上昇圧力を減速させ、消費と住宅投資を落ち込せたまま推移し、日本内需を大きく足を引っ張ることになる可能性が大きい。