一方西武球団側は、ポスティングシステムで得た60億の使い道を語った。
西武に入る金額は法人税など約4割が引かれた約36億円。補強に加え、08年開幕に合わせた球場改修に充てる。選手から要望の高い人工芝の張り替え、フェンスの改修は確定。フィールドシート、ロッカーの新設に加え、本拠地ベンチの三塁側移転も候補に挙がっている。nikkan sports
ポスティングシステムについては、様々な制度的欠陥が指摘されているが、この制度によって得た資金の使い道、使い方が、それほど公的な議論になっていないのは残念に思う。 国家が二十四億を得ているのは、注目しておく必要があるだろう。
結論を言えば、得た資金で、球界全体の向上に使ってもらいたいのである。それが、公共財としての野球に対する捉え方である。かの巨人軍のナベツネは、野球は公共財であるとの賜った。野球は対戦相手があってのスポーツであり、またそれ故にファンがそれぞれの球団に出来る。そういった、ビジネスモデルの上に成立している。つまり球界全体を見渡せる権威が必要なモデルである。とするなら、コミショナーの権威、権力を高める必要があろうし、また、審判がセリーグ、パリーグと分かれて所属しているのはおかしい。
審判団は、球界に所属しているべきことである。つまりコミショナーの下部組織に当たる審判団としてあるべきであり、また、給料報酬も、そこから配給されるべきである。審判団はリーグから相対的に独立した存在であるべきだろう。そこで、審判団にポスティングで得た資金の幾分かを投入分配すべきなのである。
ありきたりの議論では面白くないので、国家観によって、二つの方法を考えて見る。一つは中央集権的国家での使い方、もうひとつは、自由主義的国家での使い方である。
中央集権的国家では、国家が得た24億を、球界全体を浮上させるために、使う、いや、これではスポーツ界の了解があまねくえらるわけではないから、野球のみならずスポーツ界の振興のために使われる社会的資金とする方法が考えられる。その中の一部が球界向けに使われるとになる。公共性という視点から、その資金は使われることになるのだから、地方への配分の増大が期待できることになる。
後ひとつは、自由主義的な国家観からすると税負担はいパン的な租税だということであり、それを特定の団体に使うことは厳しく禁じられる。当然その背景には、国家による特定団体に対しての便宜の供与は、諸団体の「自由」のために排除されなければならない。そうでなければ権力行使を認めたことになるからである。
球界のためにポスティングシステムで得た資金の一定割合を、基金として積み上げる方法である。この方法のほうが、中央集権的国家の理念的使用方法より妥当性があるかもしれない。
基金として積み上げた資金は、プロ野球機構預かりとし、コミショナーがこの資金の運営を球界全体を俯瞰して、公平性を持って基金運営すべきことになる。先ほど述べた、審判の団体にも一定割の資金が行き渡り、審判の技量も向上することに資するだろう。そうして各球団が、独自の球団活動で、相互に活性化を目指すことになるように、プロ野球機構としてのコミショナーの権威とリーグから独立した権力が認められることになろう。
近鉄球団売却話に堀江が乗ったとき、「プロ野球が公共文化財」だというどこかの球団オーナー御仁が発言したが、それが本音なら、上記の程度の発言が、その発言主体の界隈から生まれるのが、本来の形であると思う。そうした球界としての公への、「共同幻想」へ向けた発言が聞かれないのは、球界が、私財の連合と化しているプロ野球機構であるということを、端無くも物語っている、ように見える。