民主党が政権をとることを前提で、円安政策に踏み切るのなら、それはそれで、デフレ脱却への金融政策を取る可能性も生まれる。民主党の政策方針は、中央銀行の役割を全く視野に入れていない。このことがはなはだしく問題で、中央銀行のゼロ金利の基でも、実質に金利の低下をはかることができることを忘れている。ゼロ金利であっても、実質金利の低下への誘導が、経済回復の重要な要素であり、景気に敏感な設備投資と住宅投資の増加を促すことができる。
そのひとつが、円売り、ドル買いである。円売りドル買いのため。政府保証債を政府が発行するが、それを日銀が引き受ける。政府つまり財務省側は、それを元手に円売りドル買いの為替市場介入を行う。市中の米国債を買い付けることで、通貨が市中に流通することになる。そしてその保証債についての償還に関して、経済成長率がある程度の㌫に達するまでせずという約束を政府と中央銀行が結ぶのもひとつの方法である。そして、技術的なことだが円安ドル高は米国財務省のガイトナーなどの連中が反対するのを抑えるために、ガイトナーのドル高容認、オバマの強いドル発言にコミットしておく必要がある。
ともあれ、円安政策は、中央銀行を不胎化政策=金融収縮に向かわせない限り、マネーサプライの増加=金融緩和には大きく貢献する。景気の回復、成長路線は、政府の財政出動だけでは、需要が一時的に増えるだけで、一時的に景気の底打ちを回避するだけである。中央銀行の積極的な長期国債の購入、CPの購入、ローンの購入、株の購入、などおおよそ金利のついた金融商品の大量購入が市中への通貨の供給の増大をもたらし、経済の決済活動に向かい経済の成長に、貢献するのである。このリフレション策は、効果が出るまでは時間がかかるが、米国FRBの「信用緩和」英国イングランド銀行の量的金融緩和策がとられている。景気後退からの脱却は、この金融緩和、信用緩和策であるのは、明らかである。
[東京 20日 ロイター] 総選挙後に政権交代があった場合、民主党中心の新政権は5年ぶりの為替介入に踏み切る可能性があるのではないか──。そんな観測が外為市場でじわりと広がってきた。
基本は主要国間で合意されている「市場に任せる」スタンスを踏襲するとの見方が大勢だが、最近の党幹部発言や一部G10諸国の自国通貨売り介入などを通じて、100円を割り込み続けるドル/円に介入への「のりしろ」は大きくなく、1月に付けた14年ぶり高値の87.10円を勢いよく割り込むような円高局面となれば、介入の現実味が増すとの観測が浮上している。選挙の行方や財務相人事など不透明要因はまだ多いものの、新政権がどのようなスタンスで為替政策に臨むのか、次第に関心が高まってきている。
民主党が介入に積極的ではないか、との思惑が浮上したのは今年6月。「次の内閣」財務相・中川正春氏が6月10日のロイターとのインタビューで、ドルが100円を割る為替水準を「円高過ぎる」と発言、市場の耳目を集めた。英国なら政権交代後に入閣する財務相候補の発言に、「市場に任せる」スタンスに耳慣れた市場関係者の間では「あり得ない」、「米国が受け入れた上での発言なのか」と、驚きと困惑の声が上がった。
その後、市場には「次の内閣」の閣僚が新政権で入閣する可能性は必ずしも高くないという民主党内の事情が伝わり、「党の一致した見解ではないだろう」などと冷静な受け止めが国内勢の中で広がった。
だが、日本の事情に詳しくない海外勢の間では「停滞の続く日本が総選挙で変化する可能性という切り口」(在京外銀関係者)から、国内勢以上に関心が強かったという。
その後も民主党幹部から「異常でない限り、為替介入をしてはいけない」(藤井裕久最高顧問)など、市場にとって「事実上の火消し」(都銀の為替関係者)と映る発言が相次いだこともあり、民主党が介入に前向きとの観測はいったん沈静化した。
ただ、岡田克也幹事長が8月10日にロイターとのインタビューで「ファンダメンタルズを反映した動きなら、人為的に変えることは長い目でみて望ましいことではない」と発言しても、「ファンダメンタルズから逸脱するなら、少しは必要との趣旨ではないか」(都銀アナリスト)と裏読みされる素地は残ったままだ。
介入観測が市場の底流に残るのは、ドルが100円を割れているという水準感や、政権交代による変化が及ぼす影響のみではない。これまでは新興国のみで行われていた介入が今年に入り、G10と呼ばれる主要通貨にも広がりを見せていることも一因だ。
主に対ユーロで自国通貨売りを行っているスイスに加え、オーストラリアも外貨準備調整との名の下で、小規模ではあるものの、豪ドルの高値圏で自国通貨売りを実施した。ニュージーランドやカナダでも米ドルが全面安となった6月から7月にかけて、財務相らによる口先介入があったばかり。「スイスなど他国と比べ、日本は(経済の)規模が違いすぎて、介入の意味合いも与える影響も全然違う」(別の外銀関係者)が、経済危機に苦しむ各国当局に為替市場を温かく見守る余裕は、以前ほどない。
ワシントンで7月下旬に開催された米中戦略経済対話。オバマ米大統領は中国の思想家、孟子の故事成語を引用し、親中ムードを演出した。その様子を眺めていたある外銀ディーラーは「米国のアジアの関心はすっかり中国だ。介入1つとっても、日本の重要性が以前より薄まるなら、意外に(ドル/円での)介入のハードルは下がってくるのかもしれない」との可能性を頭の片隅に置き始めたという。
仮にドル/円で介入が行われるなら90円割れ、14年ぶり円高水準の87.10円を勢いよく突き抜けるような、急激なドル安や円高が進んだときではないか――。為替市場では、そんな声がちらほらと出始めている。
(ロイター日本語ニュース 編集:田巻一彦)