もう正社員も守れない 大京、レナウン…瀬戸際の決断
産経新聞2008/12/3
世界的な景気後退で、リストラの波が派遣社員や期間従業員ら非正規労働者に続き、正社員にも広がり始めた。雇用調整は来春就職予定の大学生や高校生にもおよび、企業から内定を取り消された人数は年度途中ながら331人と2001年度以来の高水準に達する。日を追って厳しさを増す雇用環境は消費低迷を深刻化させ、景気後退を加速させかねない。
◆「売るものはない」
市況悪化に苦しむ不動産業界では、分譲マンションの日本綜合地所が09年4月入社予定だった学生53人全員の内定を取り消した。10月1日に内定式を開いたばかりだが、担当者は「業績下方修正で財務体質が悪化。固定費削減のため、やむを得ない」と苦しい状況を語る。10年度の採用計画は「白紙状態」とし、今後は「人員も含めたコスト削減を検討する」と正社員のリストラも視野に入れる。
分譲マンション大手の大京は事業縮小に伴い、今月から希望退職者の募集を始める。40歳以上を対象に全社員の1割に当たる450人を募り、退職金の割り増しなどで約25億円の特別損失を計上する見込みだ。同社は「マンション市況の低迷は続く。全体の人員配置を見直す」と説明。09年4月入社予定者148人(グループ全体)は採用する見通しだが、10年4月入社の採用は「慎重にみている」と減少は避けられそうもない。
アパレル大手では、09年3月期で3年連続で最終赤字に陥る見通しのレナウンが1月末までに希望退職者400人を募集する。不採算の16ブランドの廃止や本社ビル売却も決めており、「もうほかに売るものはない」(中村実社長)。09年4月入社の内定者数は08年4月入社の半分程度の44人に抑えた。
電機業界では、OKI(沖電気工業)が来年1月5日から2月6日まで、満50歳以上または勤続25年以上のグループ管理職を対象に、早期退職者を募る。半導体子会社をロームに売却し間接部門の管理職に余剰感が生じたためだ。募集は1993年以来。300人程度の応募を予想しており、特別退職金を含め約40億円の費用発生を見込む。
◆米シティから飛び火
米国の親会社のリストラが日本に波及したのが証券大手の日興コーディアル証券。経営が悪化した米金融大手シティグループが全世界で5万人の従業員削減を打ち出したのを受け、11月下旬から幹部も含めた40歳以上の社員を対象に希望退職の募集を始めた。応募者に割増退職金を支払うという。さらに取締役や執行役員の削減を軸にした役員体制の見直しも発表。現在、18人の取締役を2人、16人の執行役員を3人、12月末までにそれぞれ減らす。日興コーディアルは「経営資源の戦略的配置と意思決定の迅速化を可能にするため」と説明。09年4月入社予定の内定者は306人と前年実績より約100人少ない。10年度採用計画については「現段階では未定」という。
流通業界では、約20の不採算店舗の閉鎖を進めている西友が350人以上の希望退職を募集し11月中に実施した。詳細は明らかにしていないが、主に店舗の従業員が対象だったという。
景気悪化のスピードが速く、人員削減は非正規労働者にとどまらず正社員や来春採用予定者の内定取り消しにまで広がっている。10月の完全失業率は不況で職探しをあきらめた人が増えたこともあり3.7%と前月比0.3ポイント低下した。
しかし、企業のリストラは今後、本格化する見通しで「失業率は09年度前半に4%台後半に上昇する」(エコノミスト)などと雇用情勢の悪化を予想する声が大勢だ。
製造業で働く外国人雇用者の労働現場は、更に厳しい対応がとられている模様。週刊ダイアモンドによると・・・・。
自動車、電機の崩落で深刻化 外国人労働者の解雇が急増中!
ダイヤモンド・オンライン12月 3日(水) 8時30分配信 / 経済 - 経済総合
「せっかく、仕事にも慣れてきたのに……」と寂しげに語るのは、愛知県内のトヨタ系部品メーカーの工場に勤務していたある日系ブラジル人男性。10月に入り、突然、3年間勤めていた工場を解雇されたのだ。
米国金融危機を発端とし、自動車関連や電機などの製造業の現場で、外国人労働者の解雇や契約の終了が目立つ。
たとえば、外国人労働者の構成比が13.2%と、東京都に次いで多い愛知県の場合は顕著。名古屋外国人雇用サービスセンターは、10月以降、さながら風邪のシーズンの病院の待合室のような混雑ぶりだ。
来所者数が昨年に比べ、2倍以上に増え、11月もさらに増加傾向にある。担当者は「10月は1日平均28.8件だった相談件数が11月は42.2件に、新規求職者数も10月の15.8人から26.3人に増えた」と説明する。
愛知県下のハローワークでも、「4~10月の外国人の新規登録者の数は、316人と、前年同期の137人に比べ、急増している」(ハローワーク岡崎)。
同じく、自動車関連産業が集積する静岡県では「10月の相談件数は635件と昨年の2.3倍」(ハローワーク浜松)。ハローワーク太田(群馬県)などでも「感覚として2倍に増えた」という。
バブル崩壊後、国内製造業各社は非正規雇用者への依存度を高め、なかでも外国人労働者(合法就労者数)は工場労働の担い手として1996年の35人から 2006年の75.5万人と、その数を増やしてきた。岐阜県美濃加茂市のように、自治体の人口の約1割が外国人という事例もある。
生活弱者としての非正規雇用者の存在が社会問題として取り沙汰されるようになって久しいが、とりわけ外国人労働者は、本国から呼び寄せた家族の処遇などを含め、失業対策は容易ではない。
また、治安悪化との関連も深い。彼らを安易に景気の調整弁とすることによって生まれる社会的な悪影響は計り知れない。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 山本猛嗣)