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インフレの大波、アジア襲う…消費者物価が全域で高騰

 中国国家統計局が12日に発表した4月の消費者物価指数(CPI)上昇率は、前年同月比8・5%と、再び加速した。

 インドやベトナムなど他のアジア諸国でも物価上昇は深刻化しており、各国政府の対策には手詰まり感も出ている。欧米に続きアジアでも景気の減速が鮮明になれば、アジア市場に重点を移す戦略の見直しを迫られる日本企業も出そうだ。

 ◆再加速

 中国のCPI上昇率は、1月中旬以降に中南部を襲った50年ぶりの大雪の影響などで2月に11年9か月ぶりの水準となる8・7%を記録した。その後、3月は8・3%と鈍化したが、4月は再び加速。これにより、1~4月の上昇率は前年同期比8・2%となり、政府の年間目標(4・8%前後)を大きく上回っている。

 4月は食品が22・1%上昇し、物価全体を押し上げた。特に、豚肉の上昇率は68・3%と高く、穀物や水産品も値上がり幅が拡大した。

 4月の工業品出荷価格指数(卸売物価指数)の上昇率も8・1%に達しており、物価上昇圧力は食品以外にも広がっている。

 中国人民銀行(中央銀行)が2月に実施した調査では、「物価高が受け入れがたい水準」と答えた人が49・2%に達し、過去最高を記録した。

 ◆失政

 中国と並び世界経済の成長点となっているインドも、3月のCPI上昇率は7・9%と高水準だ。

 ベトナムでは成長重視の政策に傾斜するあまりインフレ対応が後手に回り、CPI上昇率が4月に21・4%に達した。中でも食品価格は34・1%と家計を直撃し、グエン・タン・ズン首相が6日の国会で「我々は政府の経済運営に欠点があることを認識している」と失政を認める異例の報告を行ったほどだ。

 このほか、韓国(4.1%)やタイ、インドネシア(7.7%)、フィリピン(8.3%)などの各国でもインフレ圧力が深刻化している。

 各国で物価上昇が加速しているのは、国際市場でエネルギーや食料価格が上昇しているためだ。内需拡大策への転換時期と重なり、食糧などの需給バランスが崩れた可能性もある。

 ◆利上げ

 経済成長を超える物価上昇を抑えるため、各国政府は様々な経済政策を行っている。

 中国人民銀行は12日、金融機関の預金準備率(預金総額のうち中央銀行に預け入れる額の比率)を現行の16・0%から16・5%に引き上げると発表した。20日から実施する。引き上げは4月に続き今年4回目だ。

 インドネシアも6日、2年半ぶりに利上げを実施した。このほか、台湾やベトナム、インド、シンガポールなども金融引き締め政策を取っている。

 ただ、消費拡大政策をとっている中国などでは、過度の金融引き締めで消費が冷え込めば、経済全体が失速しかねないため、思い切った対策が打てない状況だ。(北京 寺村暁人、シンガポール 実森出)
(2008年5月13日03時04分 読売新聞)

読売の記事なんだが、なんとなく違和感がある。というか、物価の上昇率が読売が述べることの条件だけで決まるのだろうかということである。そしてその点を非力ながら見てみると、エネルギーや食料価格の上昇は、国際為替が絡む。この点をほとんど眺めていないのは気にかかるところである。
 そこで、各国の為替制度をネット上で調べたが、インドはドルペッグ制であった。他の国はというと・・・。


カレンシーボード制 香港
バスケット制 マレーシア,中国
管理フロート制 インドネシア,タイ,シンガポール,ベトナム etc.
完全フロート制 日本,韓国,フィリピン
(資料)IMF(2004)
 カレンシーボード制とは事実上の固定相場制で、それに加えて国内通貨流通量に見合うだけの外貨準備を保有させるものである。管理フロート制は通貨当局が事前にアナウンスやコミットメントなく為替市場に介入して為替レートを管理することである。完全フロート制では基本的に市場の需給で為替レートが決まるが、通貨当局の裁量的な介入は認められている。(参照)
と、こんな具合である。読売の記事にあるような原油高、穀物系の高さだけでなく、通貨制度も各国のCPIに影響がかなりあるように思う。読売は中国とインドは財政出動と原油高、穀物系の高価格によって、物価が上がっていると述べているのだが、その要因もあるにしろ、条件はそれだけではない、と思う。
 ドルペッグ制などの固定相場制の一種をとっている国では、ドル安に連動して、外国から輸入するには多くの自国通貨が必要になる。よって物価高にもなるということが指摘できるだろう。自国通貨の「安」さは、インフレ要因である。
 フィリッピンの物価高はちょっと意外(他の要素があるのだろうが、勉強不足で思いつかない)、韓国は、物価高が他国と比較しても低いことが言えるのも変動相場制が効いているのだろう。それと、中央銀行がインフレターゲット(物価安定目標)を採っていることも他国と大きな違いだろう。韓国は、「物価」には強い条件がそろっているといえるわけだ。金融引き締め策を採用すれば、資本移動に対して制限をつけていなければ、金利差によって資本は流入する。引き締めの当該国家の通貨が、流入の過程で、買われることになる。韓国の場合、ウオン高に振れることになる。調整機能が変動相場制にはある、といえるわけだ。
 そこで、日本はというと物価は、それほど上がっているわけではない。それほど耐久消費財のうちの「上級財」の変動に見られるようにデフレ圧力が強力だということである。その理由を、アジア諸国との構造性の差だけに求めるのは危険だと思う。なぜなら、欧州、米国のインフレ率(2から3%)と日本のインフレ率(ほとんどゼロに近い)は、大きく違うからである。スタグフレーション(平均賃金は上昇せずに一般物価が上がる状態)といえるほどの状態にはいたっていない。
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