新聞の社説ががたがたとあいも変わらない珍説を述べているが・・・・。その中でも読売は、まだまともなほうである。
GDPプラス 本格回復へ詰めを誤るな(8月18日付・読売社説)
景気の下げ止まりが数字で確認されたが、腰折れの危険が完全に去ったわけではない。
4~6月期の実質国内総生産(GDP)は、前期比0・9%増、年率換算で3・7%増と、5四半期ぶりにプラス成長となった。
海外景気の持ち直しで輸出が増加に転じたほか、国内需要でも、景気対策の恩恵を受けた消費や公共投資が伸びた。
戦後最悪のペースだった景気の急落は止まったが、年換算の実質GDPは526兆円と、1年前より約40兆円少なく、回復の実感は乏しい。本格回復の実現へ、政策の詰めを誤ってはならない。
今回のプラス成長は、外需主導だった。4~6月期は、中国などアジアの多くの国が高い成長率となったほか、欧米もマイナス幅が縮小し、電子部品や自動車など、主力品目の輸出が回復した。
とはいえ、海外経済の先行きは不透明感が強い。日本経済が安定した回復軌道に乗るかどうかは、内需の力強さにかかっている。
GDPの6割を占める消費がプラスに転じたのは明るい材料だ。特に家電や自動車など耐久消費財の消費が大幅に増えた。エコカー購入時の減税や補助、省エネ家電のエコポイント制度など対策の効果が大きかった。
補正予算で追加された公共投資も、約10年ぶりの高い伸びとなり、GDPを押し上げた。
昨夏から政府・与党が相次いで打ち出した景気対策は、財政悪化の副作用を伴ったが、景気の底割れを防いだ点で、妥当な政策判断だったと評価できよう。だが、対策の効果が出尽くせば、消費や公共投資の息切れが心配になる。
政策で下支えしているうちに、雇用・所得の改善による消費拡大など、内需の自律回復への移行が望まれるが、見通しは厳しい。
失業の増加が続き、ボーナスや残業のカットで労働者の収入も減っている。失業対策や生活支援を粘り強く続け、状況に応じて追加策もためらうべきでない。
消費と並ぶ内需の柱の設備投資も長期低迷が続いている。投資減税の追加など、企業を元気づける政策がさらに必要となろう。
足元の回復に安心して、公共事業削減など緊縮政策に転換することは、厳に慎まねばならない。
政局の都合で来年度予算の編成が遅れ、政策遂行に支障が出る事態も避けるべきだ。総選挙の結果、どの党が政権を担うことになっても、「景気最優先」の経済政策を続けねばならない。
(2009年8月18日01時22分 読売新聞)
財政の出動によって、財政の悪化が引き起こされるのは痛い仕方ないことである が、財政の悪化が税収不足による「国債」の発行にある。国債の発行を当てにした財源作りは、一般に閉鎖経済であれば、当初は景気の回復には資する。
が、日本は、資本の移動を認めている経済をなしている。そのことが懸念懸念として一点ある。その点は今はおくとして。
国債の、長期国債の発行によって、購入された資金分が民間から資金を吸収していしまうことになる。非金融機関である民間の企業と家計に通貨供給を増やす、このことが経済を財政の出動によるよりも長期的には経済に活況を与えるのである。この重要なことが読売の社説には抜けている。
需要の不足を補うため政府の支出=財政出動は短期では必須である。マクロの不況期、つまり経済の活況が無いときに緊縮財政などするとさらに経済活動が鈍る。消費傾向も縮小に傾き、縮小に傾いた消費をあてにする諸企業は投資を削減、控える行動に出る。さらに企業の方では過剰な雇用、過剰な賃金がさらに業績を悪化させることになる。果ては解雇へいたることもある。そのような時期に、緊縮の財政はまったく逆効果であることは容易に理解できることである。
そこで、経済活動は「取引」によって成立している。消費という「取引」、投資という「取引」、給料の支払いなどなどである。この取引を媒介するのは通貨である。通貨の流通の豊富な社会では、デフレでなければ通貨の移動とその全体の額の移動が激しく行われ、その流通量と速度によって経済の規模が長期には決定されることになる。
つまりは、通貨の供給が不足すれば、通貨と交換されるモノ・サービスは、通貨に対して価値が減少することになる。すなわちデフレである。財政の出動は、このような取引l量を増やすといういう意味では、景気後退期では政府のしなければならない必須の政策となる。
よって、減税策も意義はあるのだろうが、それよりも「取引」量の増大という有効需要の創出が先行し、二次策に単位あたりの取引額の増加へ誘導するという需要政策が意義があることになる。
そこで、取引量の増大と額の増大は、金融安定策とさらには通貨供給の拡大が必須のデフレ対策という政策になる。通貨供給の量を増やすには、政府発行の国債を、日銀が引き受けることが必ず必要になるのである。なぜなら、日銀から引き受けによって通貨が政府に移動する。それを政府が有効需要の創出のために使うから、金融機関に通貨が退蔵されること無く、非金融機関の企業、家計に循環することになるのである。
政府と地方政府の借金が1000兆円ほどもあるといわれている。それに対して、政府が持つ資産はかなり多いといわれている。純債務は一般言われているほど多くは無い。
であるから、日銀の償還なしの大量の長期国債の引き受けは、財源不足の政府を救うことになるのである。財源の不足を贖うことが優先されるのか、それともマクロの国民経済の建て直し、成長を優先するのかはどう考えたところで、結論は決まっているだろう。こうした議論が、民間の一般紙などで選択肢の一つとして取り上げず、「社会」規範として拒否するのは民間経済、すなわち国民経済を活性化を拒否するということに等しい。