【オスロ=本間圭一】ノルウェーのノーベル賞委員会は13日、2006年のノーベル平和賞を、貧困撲滅に尽くしたバングラデシュのムハマド・ユヌス氏(66)と、同氏が総裁を務めるグラミン銀行に授与すると発表した。同委員会は授賞理由について「貧困からの脱却なくして恒久的な平和は実現しない」と述べ、貧困撲滅に務めた功績を評価した。
ユヌス氏は1983年、バングラデシュで貧困に苦しむ農村の女性らを対象に、無担保で少額の信用貸し付けを行う「マイクロ・クレジット(小口融資)」を行うグラミン銀行を創設、貧困層の経済的自立を促してきた。「無担保はリスクが大き過ぎる」との指摘もあったが、資金はほぼ完全に回収され、貧困層の生活改善に力を発揮、同銀行の手法は世界に広がった。
ユヌス氏は、バングラデシュの中流家庭に生まれ、米国に留学した経済学者。74年に全国を襲った飢餓に遭遇し、貧しい家庭を歩いて回った際、竹細工の製作で生計を立てていた女性グループに無担保、無利子で融資したことが喜ばれた。この経験をきっかけに83年、同銀行を創設してマイクロ・クレジットをスタートさせた。(2006年10月13日21時31分 読売新聞)
山形浩生が、グラミンについて詳細な説明をしていて、納得がいった。皮肉として言うのではなく、資本主義下での慈善事業とはこういったもであり、また、それによって、貧困から、「労働」へ、事業へと展開されていくことの方が、はるかに現状維持のままの選択肢の無き社会であるよりは、いいということである。
大まかに纏めると、グラミン銀行は、慈善事業などではないということ、農村の女性に限定して連帯責任を負わせて無理やり貸し込むこと、利率は20パーセント以上であること、かろうじて現状のバングラディッシュでは独占状態にあるということ、職業指導までグラミンはやる。いま、グラミングループができている。グラミン・シャクティは、太陽光発電を提供することまで事業としてやっているのである。こんなアイデアがあったのだなという有意義な啓発がある。
第21回 マイクロファイナンスと、高利貸しのポジティブな役割 ――バングラデシュのグラミン銀行の場合 山形浩生 |