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以下は、デフレをどのように認識し、それからの脱却はどのようにあるべきかを知るためにはどうしても必要な式のひとつ。
から引用。
岩田 規久男 / 東洋経済新報社(2001/12)
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期待実質金利は、名目金利から期待インフレ率を引いたものと定義される。すなわち、
(8-1) 期待実質金利=名目金利-期待インフレ率
(8-1)式を変形すると、次の式が得られる
(8・2) 名目金利=期待実質金利十期待インフレ率
(8-1)式と(8-2)式は、アメリカの経済学者アービング・フィッシャー(一八六七~一九四七年)にちなんで、フィッシャー方程式と呼ばれる。(8-2)式は定義式あるいは恒等式であることを強調する場合は、フィッシャー恒等式という。
日本のエコノミストのなかには、「(812)式のフィッシャー方程式から、期待インフレ率が上昇すると、名目金利は期待インフレ率の上昇分だけ上昇するため、期待実質金利は変化しない」と思い込んでいる人が少なくない。
たとえば、「貨幣供給量の増加率が大きくなつて、インフレ率が上昇し、それを反映して人々の期待インフレ率も高まると、フィッシャー方程式から、名目金利も期待インフレ率の上昇分だけ上昇するから、期待実質金利は変化しない。したがって、投資は増加しない」というように、フィッシャー方程式を引用するエコノミストは少なくない。これは、「貨幣は常に実質金利のような実質変数には影響せず、中立的である」 (貨幣の中立性、第三章九七ページ参照)といっているに等しい。いい換えれば、これを主張している本人が必ずしも自覚しているとは思われないが、「金融政策は常に無効である」と主張しているに等しいのである。そこで、この期待実質金利の上昇は、名目金利-期待インフレ率であるから、デフレという物価指数の低下の経済にあるとき、期待実質金利は物価下落分だけ上昇する。実質の金利が上昇すれば、借金してまでも事業を起こそうとするもの達は減るであろう。また、さらに借金してまで設備投資へと傾くことは避けられるであろう。デフレ下では、総需要を構成する「消費」、「投資」「政府支出」の投資の分野では、投資意欲がかなり減退するということになる。諸企業の投資は、雇用を生み出す出す原動力ともなるものであり、失業率が、諸企業の投資によって構造的な制度によって守られた失業率へと低下する。失業率の低下は、総需要を膨らませることに向かうことになる。総需要刺激策として公共投資、財政投資が、需要創出政策が必要になるゆえんである。また、金融政策の通貨供給量の増大は、インフレ率を通常はあげる。インフレもデフレも通貨の供給量とその回転率の金融的範疇の問題に過ぎない。それ故、財政政策は、重点的な需要創出型の財政を敷き、金融政策は、大幅な通貨供給を続行の継続は、デフレ脱却のためにも、どうしても必要な政策となろう。故に、財政の緊縮は、デフレ下では有効な景気対策となることはまったく無く、構造改革という規制緩和よって成長経済に持ち込めると考えるのは、「構造」と「循環」を履き違えた論理である。
古典派の世界ならば成り立つが・…
右の主張は、「期待実質金利は常に貨幣やインフレ期待から独立に決まる」ことを仮定して、はじめて成り立つ主張である。確かに、かりに、名目金利が常に期待インフレ率だけ上昇すれば、(8-1)式から、期待実質金利は変化しないことがわかる。またかりに、期待実質金利が一定であれば、(8-2)式から、名目金利は期待インフレ率が上昇すると、その上昇分だけ上昇することがわかる。この名目金利と期待インフレ率の一対一の関係は、フィッシャー効果と呼ばれる。
しかし、(8-1)式も(8ー12)式も定義式あるいは恒等式であるから、これらの式は期待実質金利と名目金利がどのように決定されるかについては何も語っていない。名目金利と期待インフレ率の一対一の関係というフィッシャー効果は、すべての価格が常に需要と供給に応じて完全に伸縮的に変化する場合(古典派のケース) には、常に成立する。これは 「貨幣は常に中立的である」という古典派の命題に他ならない。
それに対して、価格は長期的には伸縮的であるが、短期的には伸縮的ではないケース (ケインジアン、ニュー・ケインジアンおよび新古典派のケース) では、右の意味でのフィッシャー効果はすべての価格調整が終了する長期でのみ成立する効果である。これは、「貨幣は長期的には実質変数に対して中立的であるが、短期的には非中立的である」例の一つである。貨幣が期待実質金利に対して非中立的になる理由は、貯蓄が期待実質金利の増加関数だけでなく、実質所得の増加関数(実質所得が増えると貯蓄も増えるという関係) であり、短期的には貨幣供給量が増えると実質所得が増えて、貯蓄が増えるからである。
日本のエコノミストの間に、ここで指摘したようなフィッシャー効果についての誤解が広く見られるのは、マクロ経済学の教科書のなかに以上の点について曖昧なものが少なくないためであろう。以上の点について最も正確かつ明瞭に述べているマクロ経済学の教科書は、R・ドーンブッシュ、S・フィツシヤーの 『マクロ経済学』 である。
なお、アービング・フィッシャー自身は、名目金利はインフレ期待だけ上昇するというフィッシャー効果が常に成立するとは考えていなかった。彼は、その著the theory of interestで、アメリカとイギリスの名目金利と事後的な実質金利(名目金利から事後的に実現したインフレ率を引いたもの)を長期にわたって調べ、次のような結論を導いている。
なお、フイツシヤーが期待実質金利でなく、事後的な実質金利と名目金利との関係を調べたのは、期待実質金利は観察できないからである。
① 名目金利は一般的に、物価上昇率が高いときには高く、それが低いときには低い傾向がある。
② 名目金利の変化は物価の変化に遅れるため、名目金利の変化と物価変化率との関係はしばしば曖昧になる。
③ 名目金利は過去の物価変化の影響を長期(たとえば、イギリスでは二八年間) にわたって受ける。
②と③は、名目金利は常にインフレ率だけ上昇するわけではなく、事後的な実質金利はインフレ率から独立でないことを示している。
国家の財政が、税収不足とまた国債発行による国際の金利負担の増大によって「危険」な水域を保っていると考えるならば、日銀法の改正によってでも、日銀の国債引受によれば片がつくことである。政府の借財としての国債を中央銀行が購入するのである。借金をチャラにすることだって、家計や企業と違って、国家は出来るのである。この中央の銀行の宣言だけでも、現代経済学における「期待」---将来の見込みと現在の状態の認識ーーー経済から、デフレの脱却は、人々の「期待」に働きかけ、確実なデフレ脱却への高速的宣言にもなる。
現状の日銀のように、「物価上昇がゼロになるまで量的金融緩和を続ける」といっておきながら、資産の上昇が認められた時点で、「異常」な金利であるから、これを根拠なく解除してみたりする、目標のまったく無い、従って、投資家、企業家、泣かせの宣言では、益々、中央銀行の言辞に信頼をなくし、投資意欲、投資予測を狂わせ、経済萎縮を招くことになる。そのためにも、物価安定政策としての金融を、マクロ経済安定の戦略を鮮明に出来る政策当局のデフレ脱却に向けた力強い宣言が望まれるのである。
デフレ脱却の経路は、うまく筆者にはうまくつかみきれないのだが、上記の岩田の著作では、資産効果、つまりは、株と不動産の上昇があって、その後、銀行の貸出残高が増えることになるだろうとしている。
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